(左から)ディオール、シャネル、ヴァレンティノ、フェンディ
Image by: DIOR、CHANEL、VALENTINO、FENDI
2022年1月末、パリで開催された2022年春夏オートクチュールコレクション。フランスでも新型コロナウイルスの感染が再拡大しているため一部デジタルで発表されたが、多くのブランドが現地でランウェイショーやプレゼンテーションを行った。本質的な美やヘリテージへの探究、パンデミック後の世界に向けた新たな価値観を反映し、各メゾンが技巧を凝らしたクリエイションを披露。オートクチュール・ファッションウィークのハイライトとして、「ディオール(DIOR)」、「シャネル(CHANEL)」、「ヴァレンティノ(VALENTINO)」、「フェンディ(FENDI)」の新作発表を振り返る。
DAY1:ディオール
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アートとクチュールが交差する空間
オートクチュール初日の目玉となったのは、マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)が手掛けるディオール。ショー会場の壁一面を埋め尽くすカラフルな刺繍の舞台装飾は、インド人アーティストのマドヴィ・パレク(Madhvi Parekh)とメヌ・パレク(Manu Parekh)の作品をベースにしたもの。メゾンが支援するインドのチャーナキヤ工房およびチャーナキヤ工芸学校の職人たちの手によって生み出された。
刺繍の作品で飾られたDIORのショー会場
Image by: DIOR
エネルギッシュな空間とは対照的に、ドレスはエクリュやアイボリーで彩られたクリーンなシルエットが中心。同系色であしらわれた繊細な刺繍が立体感をもたらし、洗練されたルックを完成させる。ビーズ刺繍のフリンジをあしらったタイツは、今シーズンを象徴するアイテム。また、下まぶたにシャープな白のアイライナーを効かせたメイクも、春夏らしいフレッシュな表情を引き出していた。
Image by: DIOR
DAY2:シャネル
一頭の馬がオープニングを飾る
グレース・ケリー(Grace Kelly)の孫娘であるシャルロット・カシラギ(Charlotte Casiraghi)が馬に乗って登場したことで話題を集めたシャネル。万国博覧会が開かれた1920〜30年代のアヴァンギャルドから着想を得たというショーの演出は、パリの現代アーティスト、グザヴィエ・ヴェイヤン(Xavier Veilhan)によるもの。幾何学的なセットの中、幻想的な音楽を奏でたのはフレンチ・エレクトロ界の鬼才であるセバスチャン・テリエ(Sebastien Tellier)だ。
ブラック、ホワイト、コーラルのカラーパレットで彩られたコレクションは、軽快でフレッシュなムード。また、カメリアの刺繍が全面に施されたドレスは、今回のキーアイテムの一つ。アーティスティック ディレクターのヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)が「ガブリエル・シャネル(Gabrielle Chanel)との時を超えた対話」と呼んだ、リトル ブラック ジャケットもモダンな解釈が光る。片目だけスモーキーに仕上げたアイメイクも印象的だ。
Image by: CHANEL
DAY3:ヴァレンティノ
美の既成概念を破るキャスティング
クリエイティブ ディレクター、ピエールパオロ・ピッチヨーリ(Pierpaolo Piccioli)が手がけるヴァレンティノは、「アナトミー オブ クチュール(クチュールの解剖)」をテーマにした新作を発表。あらゆる体型・年齢のモデルを起用し、「美は絶対的なものではない」というメッセージを発信した。マリアカルラ・ボスコーノ(Mariacarla Boscono)やクリステン・マクメナミー(Kristen McMenamy)といったベテランモデルの貫禄も特筆もの。多様性に富んだキャスティングにより、モデルの個性とシルエットをメゾンの巧みな技術によって際立たせ、これまでのクチュールの慣習やプロセスに一石を投じた。
Image by: VALENTINO
また、ベネチアンガラスビーズのドレスなど、ゴージャスな素材とボリューム、鮮やかな色使いはヴァレンティノならでは。さらにサステイナビリティの取り組みとして、ショー会場で使用されたホワイトカーペットのリユースも発表。終了後に回収され、熱分解によって高熱量の代替燃料に変えられるという。
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VALENTINO 2022年春夏オートクチュールコレクション「アナトミー オブ クチュール」
DAY4:フェンディ
古代ローマから未来まで、時代を横断するSF世界
キム・ジョーンズ(Kim Jones)が手掛けるフェンディは、かつてのパリ証券取引所内に宇宙的なセットを作り上げた。天井から吊り下げられた黒い地球儀や光るアーチ、スモークといった演出はドラマチックでSF映画さながら。
コレクションのテーマは、メゾンのルーツであるローマ。古代から想像上の未来まで、ローマのさまざまな時代をクチュールで表現した。古代ギリシアの女性が着用していた長衣(ペプロス)をアレンジしたドレスをまとったモデルたちは、まるで女神のよう。
Image by: FENDI
また、フェンディが本社を構える「イタリア文明宮」にある彫像を描いたドレスや、ローマの噴水の彫刻を表現したドレスなども重厚で崇高さを感じさせる。天然のクリスタルジオードやアメジストで作られたイヤーカフも、古代文明の考古学的遺物が発掘されたローマへのオマージュとなっており、「女性のパワーを称賛する」というジョーンズのヴィジョンを反映した。
Fuyuko Tsuji
セントラル・セント・マーティンズ出身。モード誌の編集者、通信社のニュース記者を経て、フリーランスのファッションエディター/ライターとして独立。ファッション以外では、現代アートやフィギュアスケートについての記事執筆もこなす。
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