インスタントカメラの写真から人気美容師の日常に迫る連載・第24回。今回撮影をお願いしたのは、NORA 渋谷の木原芽衣さん。コロナ禍にオープンしたNORA渋谷店とともに歩んだ道のりを振り返り、これからの展望も伺いました。ストリート感たっぷりの店内写真や、大好きな旅行中に撮ったスナップも必見。
#24 木原芽衣 きはらめい
インスタグラム
神奈川県出身。山野美容専門学校を卒業後、NORAに入社。2020年にオープンしたNORA 渋谷店のオープニングメンバー。現在はトップスタイリストとしてサロンワークを中心に活動中。ハイトーンカラーのデザインを得意とし、10代から30代の女性を中心に熱い支持を集めている。
【店舗プロフィール】
NORA ノラ
行けばトレンド感たっぷりのヘアスタイルになれる実力派サロン。南青山の本店を中心に、表参道や鎌倉など多数店舗を展開。アイラッシュやネイルの専門店舗などもあり、2017年にはフィリピン・マニラにも海外進出。顧客一人ひとりに似合わせる技術力を持つ一流のヘアスタイリストが多数在籍している。
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知らない景色と人に出会う、旅行の魅力が仕事にも影響
⎯⎯ 今回、旅行の写真がたくさんありました。旅行が好きなんですね。
そうなんです。この写真はNORAの社員旅行です。毎年10月に全スタッフ100人弱で、沖縄旅行に行っているんですが、今年は台風が近づいていたので離島には行けず、沖縄本島で過ごしました。
⎯⎯ 100人弱での社員旅行とは、かなり大所帯ですね。
今年で7年目なのですが、私が入社したタイミングから店舗が一気に増えて。鎌倉や吉祥寺、渋谷など新店舗が次々とオープンして、仲間も増えた感じです。
⎯⎯ 社員旅行の沖縄に続いて、夏休みのグアム旅行の写真もありますね。木原さんにとって旅行の魅力とは?
2泊3日で沖縄に行って、3日働いて、そのあとすぐに4泊5日でグアムに行ってきました(笑)。旅をすることで、知らない土地の、見たことのない景色を見るのも好きですし、その土地にいる人と関わってお話しするのも好きです。自分の知らないものを知れるというのが旅行の魅力なんじゃないでしょうか。
⎯⎯ 旅行が仕事に与える影響はありますか?
旅行に行くこと自体が仕事のモチベーションになっていますね。また、お客さまにおすすめの場所を伝えられて施術中の話題にできるのもうれしいポイントです。旅行先でのおもてなしや地元の人の温かさに触れることで、接客の仕方や相手に対する気遣いなどを初心に返って感じています。
NORA入社の陰に人との縁
⎯⎯ 旅行も仕事も人との関係性が大きそうです。学校卒業からNORA一筋だと思いますが、NORAへの入社のきっかけはなんだったのでしょうか?
NORAは第一志望でした。「カラー技術の高い美容室」、「都内で働けること」、「着付けやヘアメイクの外部の仕事ができる環境であること」など自分の中でポイントを決めて就活をしていて、いちばん働いているイメージができたのがNORAだったんですよね。
⎯⎯ 自分が働いているイメージ?
実際に店舗へ見学に行ってみて、お話ししたときの雰囲気や施術のクオリティ、何よりも「私ここで働いてそうだな」という勝手なフィーリングがありました。
あと、学生のときにサロンに行って指名したakane(NORA本店/副店長)が、学校の担任の先生の教え子で。作品を見てこの人に切ってもらいたいと指名したのですが、「同じ先生に教えてもらっていたんだ!」ってすごく盛り上がって。
⎯⎯すごい偶然ですね!
これはあとから聞いた話なのですが、最終面接でとある成績優秀な子と私の2人が残ったらしいんです。「どっちを採る?」という話になったとき、普通に考えれば成績優秀な子を採用する場面なのにakaneが「絶対に芽衣ちゃんがいい!」とプッシュしてくれたらしくて。そのおかげで入社できたので、ものすごく恩とご縁を感じています。
コロナ禍にオープンしたNORA 渋谷 ともに歩んだ4年間
⎯⎯ この写真は現在の勤務地である渋谷店ですよね。スタッフのみなさんの笑顔が素敵ですね。
お客さまに飲み物を缶でお出ししているのですが、その缶を保存しているボックスにスタッフのチェキが貼られているんです。それを見るのが好きですね。仲のいい友達と撮った写真、誰かの誕生日パーティーやバーベキューのときなどの写真がたくさん貼られていて、最初は数枚だったのに今ではこんなにたくさん。渋谷店ができてもう4年経つのですが、「こんなに思い出が増えたんだな」と見るたびに感慨深いです。
⎯⎯ 4年前というと、新型コロナウイルスが蔓延し社会が混乱の渦に巻き込まれた時期ですね。
オープン時はコロナが猛威を震い出した時期で、飲食店も閉まっていて街は真っ暗でした。スクランブル交差点も節電の影響で電気が消されていて、「渋谷で星見えるんじゃない?」くらい渋谷全体が暗くて…。
⎯⎯これは今の渋谷ですよね?活気が戻りましたね。
毎日の通勤ではスクランブル交差点を渡る
「渋谷に愛着があるかと言われれば、実はあんまりなくて(笑)。でも日々街の進化を間近で見られるのは面白いです」
今はすごく活気がありますよね。「これが渋谷本来の姿だったんだ!」って。最近の渋谷は再開発で工事が多くで、日々進化を見守っているような感覚です。4年でこんなに変わるんだなと思います。
⎯⎯ 渋谷店にはいつから勤務されているのですか?
オープニングスタッフなので、丸4年在籍しています。入社して3年ほどは南青山の本店でアシスタントをしていました。デビューする時期に渋谷店のオープンの話をいただき、「ぜひ!」と答えました。
⎯⎯ デビュー時を振り返っていかがですか?
しんどかったですね…。お客さまを呼ぶのは本当に難しいことだと感じていました。SNSやらなきゃ、作品撮りしなきゃとか、やることと数字にいつも追われていました。アシスタントのときは体力的にきつかったけれど、デビューしてからは、精神的にしんどい部分が多いんだなと実感しましたね。
そういえば、デビュー日になぜか店にペンキを塗っていたんですよ(笑)。
⎯⎯ ペンキですか!?もしかしてこの写真の?
渋谷店はストリートをコンセプトにみんなでお店づくりをしているのですが、その一環でこのスプレーアートのある白壁も自分たちで塗ったんです。オープン日の営業後もペンキを一生懸命塗って。デビュー初日なのに、私なんでペンキ塗ってんだろって(笑)。
⎯⎯ 渋谷店、そして仲間を愛しているのがわかる写真がたくさんあります。
ネオンの看板はストリートコンセプトに沿ったもので、この雰囲気も気に入っています。アート作品の手前に写っている青の背景の写真は、今「ギリhappy」のフレーズで人気のアーティスト KOMOREBIさんのもので。実は、何年も前からNORAの撮影やコレクションにモデルとして出てくれているOTAくんがKOMOREBIのメンバー。「昔からモデルとして関わっている人が楽曲デビューするなんて、すごいね!」とみんなで話しているんですよ。これも縁ですよね。
カラーバーは、カラー剤を見せるようにディスプレイしているんです。NORA全店がカラーに力を入れているので、ほかの店舗も見せるカラー剤ブースがポイントとなっていると思います。普通カラー剤づくりはバックヤードですることなのであまり見る部分ではないですよね。お客さまからも「カラー剤っていっぱいあるんですね」と言われることもあるし、その場で「リアルにカラー剤をつくっています!」という証明にもなるところもいいなと思っています。
3人で写っている写真は9月末に退社した先輩の送別会で、渋谷店でパーティーをしていたときのものです。いろんな店舗からたくさんの人が見送りに来てくれたんですよ。白い服を着ているのは、NORA JourneyとNORA CYNDYを兼務している増井歩夢。真ん中は、NORA吉祥寺店の佐藤リョウです。増井と佐藤は、NORAにとってのキャラクター的存在で、自然と人に好かれるようなムードーメーカーですね。奥にいるのは、NORA本店にいる石川元です。とても尊敬する先輩のひとりですね。
2人で写っているの写真は今一緒に働いている渋谷店のスタッフです。左が渋谷店のアシスタント3年目のIKEDA MAYAちゃん。すごく明るい性格でラブ&ピースという言葉がよく似合うタイプです。右が今年入社した中村龍志くんで、10月から渋谷店の本配属になりました。彼、夏休みにやることがないからって休みなのにお店に来て、毛束を使ってカラー剤の実験をしていたんです(笑)。マニアックというか、“変態”というか、これからが楽しみな後輩です。
⎯⎯ 写真を見ると、人と話すこと、接することが好きなんだろうなあと思いましたが、接客で努力していることはありますか?
実は私、真顔だと怖い印象があるらしくて、だからお客さまが見ている見ていないに関わらず、常に笑顔でいるように心がけているんです。特に施術中やカラーを塗っているときも、遠くにいても別の作業をしていても、ずっと笑顔でいることを意識しているかもしれませんね。それでか勝手に顔の口角が上がるようになりました(笑)。笑顔でいたほうが、お客さまも気持ちよく施術を受けられるだろうなって。
着心地がいちばん ファッションはストレスレス重視派
⎯⎯ここからは自宅の写真が続きますね。玄関のシューズですが、お好きなんですか?
好きですね。いろいろ持っていますが、サロンワーク中は動きやすさを重視したいので、スニーカーがいちばん好きです。下段の右側に写っている黒いスニーカーと左下のベージュのスニーカーは、「メレル(MERRELL)」という登山ブランドです。すごく履きやすくて、お気に入り。この登山靴で山に登ったこともあります。
⎯⎯ こちらの写真はアクセサリーですね。
「普段身につけているリング」
「祖母にプレゼントしてもらったピアス。とても大事なアクセサリーのひとつです」
アクセサリーも好きなのですが、金属アレルギーで肌荒れしてしまうので、身につけるものはアレルギー対応のものを選ぶようにしています。左の写真に写っているのは、「トムウッド(Tom Wood)」のものと、母からもらったリングです。トムウッド、好きなんです。とても肌になじみやすいというか、ストレスがまったくなく、つけているのを忘れてしまうくらい快適で。あと、ストーン一つひとつに意味があったり、つける場所でも意味が変わってきたり、そういうのもおしゃれだなと思って楽しんでいます。
⎯⎯ この写真の日のファッションポイントはありますか?
スウェットが好きなので、この日も着ていますね。サロンワーク中もすごく楽なんです。写真では見えにくいのですが、リュックも青で、スウェットのロゴも青色。こういった色をポイントとして取り入れるファッションが好きです。
⎯⎯歩きやすさ、つけ心地、サロンワーク中の快適さ、などファッションアイテムの機能性を重視されているように感じます。
そうかもしれません。基本的に、身につけているときにストレスがあるかどうかで考えてファッションを選ぶことが多いかも。例えば、ミニスカートを履いたらスカートの中が見えないように気を遣わなければいけないというのも、私にとってはストレスのひとつなんですよね…。だから必然的に、パンツやロングスカートを選ぶことが多かったりします。
仕事中は基本的にカラー剤で汚れてしまうし、よく動くので、やっぱりパンツスタイルかロングスカートが多いです。本当はシルエットにデザインのある服も好きなのですが、袖が邪魔で汚れたりするので、仕事中はシンプルなものを選ぶようにしています。スウェットやシャツなどのカジュアルなスタイルに、アイウェアや帽子、靴などの小物で色を加えたりするのが好きです。
今年の人気は根元と毛先で違うカラーを入れる「ルーツカラー」
⎯⎯ 素敵なヘアデザインも撮ってきてくださりありがとうございます。スタイルのポイントを教えてください。
根元がベージュ系で毛先がオレンジのルーツカラーのヘアデザインです。顔まわりを中心に、前髪の先端などにも濃いオレンジ色を入れています。今年は特に(髪の根元と毛先で違うカラーを入れる)ルーツカラーが好評でしたね。
⎯⎯ 木原さんといえば、ハイトーンカラーのヘアデザインが得意な印象があります。ハイトーンを自身の強みにしていった経緯はあるのでしょうか?
渋谷店をオープンするときに「打ち出しを決めよう」と言われ、そのときに「私、ハイトーンをやります!」と宣言しました。ハイトーンヘアが好きだったこと、美容学生の頃から自分自身もずっとハイトーンヘアだったこと、当時アシスタントをしていた本店ではハイトーンをやっていた人が少なかったというのが理由です。そこから勉強をしながら実績を積み重ねていきました。ありがたいことに、今ではハイトーンをオーダーしてくださるお客さまがほとんどになりました。
フランクに選んだ美容師の道も7年目に突入
⎯⎯ 美容師の道も7年目ですか?今の心境はいかがですか?
そもそもですが、母子家庭だったこともあり、大学に行くか専門学校に行くかの進路選択で悩んだとき、「できるだけ早く働いきたい」という気持ちが強くて、「髪の毛を触るのも好きだし、メイクも好きだし、美容の専門学校に行ってみるか」というすごくフランクな感覚で美容の専門を選んだんです。だから昔から美容師になりたいわけではなかったんですが、でも、気づけばもう7年も美容師を続けているんですよね。
お客さまの人生に寄り添うことができる職業って、すごく珍しいと思うんです。一期一会ではなく、一度会ったお客さまが大人になるまで、結婚するまでと伴走しながら、その後もずっと一緒に過ごせるわけじゃないですか。成長や大きなライフイベントを見守ることができる美容師という職業はすごくいいなと感じています。
結婚式のヘアを任せていただけると特にうれしいですね。挙式に向けて段階的にカラーを決めて一緒にヘアをつくりあげる感覚が楽しい。「私でいいんですか!?」って嬉しくなっちゃいます。
⎯⎯ 最後に、今後の目標と、10年後はどんな美容師になっていると思いますか?
これからもサロンワークを基本としていきたいのですが、スタイリング剤やシャンプーなど、自分のアイデアを形にする商品開発に興味があります。自分が本当にいいと思うものを作ってお客さまに提案できたら素敵だなと思っていて。やっぱりサロンワークがいちばん好きなので、普段のサロンワークに還元できるようなことをやってみたいです。
10年後は、自分が年齢を重ねるとともにお客さまの年齢も上がっていくので、ハイトーンカラーを楽しみながらも髪がきれいになる”ケア”を提案できる美容師になっていたいと思いますね。年を重ねるにつれて当然やってみたいデザインや髪の悩みは変わってくると思います。例えば、学生時代にハイトーンヘアだったけれど、社会人になって暗髪を新たに楽しまれている方もいて、そういった変遷につきあえるのは美容師としてすごく嬉しいんです。お客さまと長くお付き合いしていくためにも、その時々のご要望に寄り添える提案ができたらいいなと思います。
(写真:木原芽衣、編集:福崎明子、上玉利茉佑)
編集者、ライター
出版社2社を経て独立。書籍の企画・編集、ブックライティング、記事等のインタビューなど活動中。ペンギンが好き。「now&then」の聞き手、文を担当する。
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