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上海で出会った日本の漫画とアニメ|コラム連載 - ニイハオ、ザイチェン vol.7

ニイハオ、ザイチェン メインヴィジュアル
ニイハオ、ザイチェン メインヴィジュアル

上海で出会った日本の漫画とアニメ|コラム連載 - ニイハオ、ザイチェン vol.7

ニイハオ、ザイチェン メインヴィジュアル

上海滞在生活の日々を綴るコラム連載「ニイハオ、ザイチェン」。東コレデザイナー、海外での企画生産を経てアパレルメーカーのアジア展開を担当する佐藤秀昭氏の視点から中国でいま起こっていることをお届けする。第7回は中国における日本のポップカルチャーを特集。本稿では誰もが見たことがあるであろうキャラクターが続々と登場。巨大立像からファッションとのコラボレーションまで、現地で注目された取り組みを紹介する。

(文・佐藤秀昭)

 オッス!おら、さとう!

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 この冒頭からご理解いただけるように、僕は子どもの頃から漫画がずっと大好きだった。誕生日には手塚治虫のデビュー作である「新宝島」を買ってもらい、毎週並んで買った「週刊少年ジャンプ」はインクで手が真っ黒になるほど読み返した。

 ここ上海でも、日本の漫画・アニメを様々なシーンで見かけることがある。そのカルチャーとマーケットを牽引するのは「90後(ジョウリンホウ:90年代以降生まれ世代)」が中心だ。彼らは幼少期、「ドラえもん」「名探偵コナン」や、宮崎駿監督のアニメなどを見て育ち、リアルタイムでは「ドラゴンボール」「スラムダンク」「NARUTO」「ワンピース」などに熱中したそうだ。最近では「鬼滅の刃」もとても人気があり、上海の本屋でも日本の漫画が集められたコーナーで見かける。

上海の本屋
上海の本屋
上海の本屋

 ただし、中国における日本の漫画・アニメの浸透は単にサブカルチャーの限られた世界の話ではなく、ビジネスやファッションの文脈でも非常に興味深いと感じた。そのため、情報を聞きつけてはいろいろな場所へ足を運んだ。

◇ ◇ ◇

 まずは、上海のみならず中国全土から多くのインフルエンサーや観光客が訪れる等身大の立像がある2つの日本のアニメから紹介したい。

機動戦士ガンダム

 2021年4月にオープンした三井ショッピングパークららぽーと上海金橋には、海外初となる高さ18メートルの「フリーダムガンダム立像」が悠然とその姿を構える。かっこいいアングルの写真を撮るために寝そべっていたところ、そんな僕の写真を撮っている中国の方が大勢いた。気分は坊やなのだから仕方ない。何よりもジャパニーズアニメの代名詞である「ガンダム」を上海に建てたそのチャレンジスピリッツに純粋に感動したのだ。

フリーダムガンダム立像

 また、同施設内の「ガンダムベース上海」店では、そこでしか手に入らない限定アイテムの販売や、店内で見た商品のオンライン購入など、日本でも品薄になっているガンプラを中心とし、「ガンダム」の世界観に触れられる。「フリーダムガンダム立像」の落成式、ショップ開店時の熱狂からも上海でのその人気が伝わると思う。

ガンプラのショーケース
ショーケースに入ったガンプラ
たくさんの人だかりができた「フリーダムガンダム立像」の落成式
たくさんの人だかりができた「フリーダムガンダム立像」の落成式

新世紀エヴァンゲリオン

 上海ではエヴァンゲリオン初号機の立像も見ることもできた。こちらは世界最大級のエヴァンゲリオン立像としてギネスにも認定されたそうだ。なお、この初号機には街中で自転車のペダルを踏んでいるときに突如遭遇した。事前の情報は全くなかったが、せっかくの機会なので逃げちゃだめだと思い、片言の中国語で守衛さんに声を掛け、園内に入ってまじまじと見るとそのシンクロ率はとても高く感じた。

世界最大級のエヴァンゲリオン立像
世界最大級のエヴァンゲリオン立像
世界最大級のエヴァンゲリオン立像

 そして、僕が少年時代から見ていた教科書のような漫画やアニメたちも、上海でも同じようにしっかりと受け入れられているようだった。

スタジオジブリと少年ジャンプ

 上海の中心部にあるショッピングセンター「メトロシティ(美羅城)」には、「スタジオジブリ」のキャラクターグッズ専門店「どんぐり共和国」があり、その国境線ではトトロと上海行きのネコバスが出迎えてくれた。トトロの曲が流れる店内ではスタジオジブリ作品のグッズが所狭しと並び、親子連れで賑わっていた。グッズのラインナップを見ると、多くの作品の中でもその人気はやはり「となりのトトロ」が群を抜いていた。

ネコバス
どんぐり共和国
どんぐり共和国
どんぐり共和国
どんぐり共和国

 また、同施設内には2021年12月頭にこちらも海外初進出となる「少年ジャンプ・ショップ」がオープンした。開店当初は期間限定でカフェも展開され、人気キャラクターをモチーフにしたフードやドリンクがSNS上で溢れていた。

 店内では「ワンピース」や「鬼滅の刃」など、中国でも人気の作品のグッズやフィギュアが多く取り揃えられ、好きな画像を選んでオリジナルキーホルダーを作る機械やガチャガチャも設置されていた。

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少年ジャンプ・ショップ
少年ジャンプ・ショップ
少年ジャンプ・ショップ
少年ジャンプ・ショップ
少年ジャンプ・ショップ
少年ジャンプ・ショップ
少年ジャンプ・ショップ
少年ジャンプ・ショップ
少年ジャンプ・ショップ
少年ジャンプ・ショップ
少年ジャンプ・ショップ
少年ジャンプ・ショップ

 ただ、「ドラゴンボール」「スラムダンク」以外は、2000年以降の作品を基にしたグッズが中心で、僕が最も好きな「魁‼男塾」は一切見当たらなかった。江田島平八塾長はさすがにZ世代には刺激が強すぎるかもしれない。やむを得ない気もした。

◇ ◇ ◇

 最後は、直近での日本の漫画とファッションとのコラボレーションの例を2つ挙げたいと思う。

NANA×イニシャル(INITIAL)

 2000年に設立された香港発のユニセックスブランドである「イニシャル(INITIAL)」は2022年春夏ウィメンズの新作として、矢沢あいの「NANA」とのコラボレーションを発表した。

NANA×イニシャル
NANA×イニシャル
NANA×イニシャル
NANA×イニシャル
NANA×イニシャル

 以前、ドラえもんと「ボーシー(Bosie)」とのコラボレーションにも触れたが、中華系のブランドと日本の漫画とのコラボレーションは決して珍しいケースではない。ショーウインドウは主人公の「大崎ナナ」に彩られ、店内には漫画の単行本が置かれていた。そして店内には漫画のワンカットを切り取ったプリントTシャツや登場人物のファッションを連想される赤いチェックのビスチェや黒のフェイクレザーのボトムスなどパンクテイストのアイテムが並んでいた。

NANA×イニシャル店舗
NANA×イニシャル店舗
NANA×イニシャル店舗
NANA×イニシャル店舗
NANA×イニシャル店舗
NANA×イニシャル店舗

 ブランドのターゲットと漫画のイメージが合致している、とてもよいコラボレーションだと感じた。Z世代の女子に聞いたところ、「NANA」はアニメで観ていたとのこと。また他には「ちびまる子ちゃん」や「美少女戦士セーラームーン」がクラスで人気があったとのことだった。

ジョジョの奇妙な冒険×ニコアンド(niko and...)

 2021年12月末、上海の南京西路にあるニコアンドの旗艦店で、「ジョジョの奇妙な冒険」とのコラボレーションのポップアップストアが開催された。このプロジェクトは上海でもとても大きな話題を集めた。入場には予約が必要となり、限定商品は連日完売した。

Image by: ニコアンド、CATS

ニコアンド×ジョジョ店舗
ニコアンド×ジョジョ店舗
ニコアンド×ジョジョ店舗

 今回のこのプロジェクトに関わったという、中国で代理販売やPR・ブランディングを務める「ショールームキャッツ」の兒玉キミトさんに話を聞くことができた。この背景としては2021年12月からNetflixで全世界配信が開始された「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」が中国のビリビリ動画でも配信開始され、人気を博していたことなどもあったそうだが、「ジョジョ」自体の人気はもともと高く、中国国内でのアニメイベントなどでは登場人物のコスプレをする熱烈なファンも以前から多く見られたそうだ。 

 なお、このプロジェクトではアパレル商品のコラボレーションのみではなく、店外、店内も人気キャラクターやファンが唸るアイコンなどで大胆に彩られ、多くの“映える”フォトスポットが設置されていた。おかげで、僕は承太郎の娘である、空条徐倫(ジョリーン)とほぼ身長が同じことがわかった。

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ジョジョコラボの店内の様子
ジョジョコラボの店内の様子
ジョジョコラボの店内の様子
ジョジョコラボの店内の様子
ジョジョコラボの店内の様子
ジョジョコラボの店内の様子
ジョジョコラボの店内の様子
ジョジョコラボの店内の様子
ジョジョコラボの店内の様子
ジョジョコラボの店内の様子
ジョジョコラボの店内の様子
ジョジョコラボの店内の様子
ジョジョコラボの店内の様子
ジョジョコラボの店内の様子
ジョジョコラボの店内の様子
ジョジョコラボの店内の様子
ジョジョコラボの店内の様子

 また、店内のカフェでもコーヒーやサンドウィッチなどのオリジナル商品が販売され、このポップアップストアにまつわる投稿でSNSも埋め尽くされていた。企業の垣根は関係なく、日本人として少し誇らしく思った。 

ジョジョカフェのメニュー
ジョジョカフェのメニュー
ジョジョカフェのメニュー

◇ ◇ ◇

 現在、2兆5000億円とされる日本のアニメ市場規模に対し、中国は3兆円超とすでに日本を凌駕しているそうだが、日本の漫画とアニメを熱烈に受け入れている層が中国にもいることを改めて知った。またファッションとの相性も良く、そのコラボレーションにはビジネスチャンスがあることを肌で感じた。そして「少年ジャンプ+」で連載を配信していた第年秒氏のように、中国出身の漫画家やアニメーターも増加している。この背景には、中国が国を挙げてアニメを重要な産業として位置付けていることも少なからず関連しているそうだ。僕が知らないだけで、手塚治虫の「新宝島」のような作品は、すでに中国から生まれているのかもしれない。

 最後に、みなさんが中国にビジネスで訪れた際のアドバイスをしたいと思う。

  • データを提出したときは「真実はいつも一つ!」
  • 中国で最も多い苗字の李さんに会ったときは、「へー、あんたもリーって言うんだ。」
  • 提案をお断りするときは全て聞いた上で、「だが断る。」

 これで間違いなく円滑なコミュニケーション、そしてビジネスの発展に繋がると思う。是非試してもらいたい。
※くれぐれもご相手・ご用法・ご用量にはお気をつけください。

サカナクション「新宝島」

佐藤 秀昭

Hideaki Sato

群馬県桐生市出身。早稲田大学第一文学部卒業。在学中に、友人とブランド「トウキョウリッパー(TOKYO RIPPER)」を設立し、卒業と同年に東京コレクションにデビュー。ブランド休止後、下町のOEMメーカー、雇われ社長、繊維商社のM&A部門を経て、現在はレディースアパレルメーカーの海外事業本部に勤務。主に中国、アジアでの自社ブランド展開に従事。家族と猫を日本に残し、2021年9月からしばらくの間、上海長期出張中。

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