1990年代、原宿を中心にブームになったファッションスタイル「デコラ」。デコラティブという由来の通り、派手な色使いと幼さ、装飾過剰なアクセサリーを身につけるのが特徴だ。デコラは1990年代の原宿を代表するスタイルではあるが、全盛期と比較すると現在その数は減っている。そんな中、原宿の街で再びデコラを盛り上げようとしているのが、2006年生まれの“デコラちゃん” NICOだ。彼女は月に一度、SNSを通じて集った約40〜50人のデコラーと、原宿の街を練り歩く「NEOデコラ会」を運営しており、そこには、彼女なりの「原宿愛」があった。派手な見た目からは考えられないほどに、理知的で情熱的なNICOの野望に迫る。
【スナップ】NICOの私服チェック!
Name:NICO
Age:17
Occupation:High School Student
Outer:ACDC RAG
Parker:mezzo piano
Hoodie:Vivienne Westwood(130センチのキッズサイズ)
Skirt:ACDC RAG
Shoes:ACDC RAG
Instagram:@twinkle.pink_
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ー今日のスタイリングのテーマやこだわりについて教えてください。
ブルーとピンクをメインカラーにコーデを組んでいます。デコラのイメージとして、派手で盛りまくっていて、ごちゃごちゃしている印象があるかもしれないんですが、そんなことはなくて。統一感はとっても意識しているんですよ。それこそ、下半身にボリュームが集まったら、上半身はタイトにするし、全身オーバーサイズでも手首、足首、首元の3首は出すようにしています。
ーやはり、アクセサリーの量が目を引きますね。
ネックレスのようにぶら下げている、バービー人形が中でもお気に入り。人形はママの昔のコレクションで、それをH&Mのアクリルボックスに入れてネックレスにしました。
ーヘアピンや、指輪はどこで購入しているんですか?
クリエイターさんから買ったり、今は無き「クレアーズ(claire's)」の後見とも言われている「ミナキュート(minacute)」で集めたりしています。ミナキュートは現代のデコラちゃんたち御用達だと思う。あとはやっぱり、ダイソーやセリアで買うことが多くて、100均で買ったものを土台に、自分の好きなパーツを付け足したりしている人もいます。個人的には「ロクパーセントドキドキ(6%DOKIDOKI)」を付けていればかっこいいだろう!と思っていて。ロクパーに関しては見栄でつけているところがあるかも(笑)。
ーメイクも特徴的ですよね。
シールやバンドエイドまでがメイクです!私は必ず、鼻にバンドエイドを貼ります。デコラって「コンプレックスを隠せるなあ」と。例えば、体型がどうであれ重ね着しちゃえばわからないし、私だったら、肌が荒れがちなのが悩みだけど、シールを貼れば問題ないし、鼻も低いけど「絆創膏を貼ればいいか〜」みたいな。短所を長所にするわけではないから、抜本的な解決にはならないかもしれないけど、気に食わないところがあればデコればなんとかなる。
ー着替えとメイクなどの身支度にはどれくらいの時間をかけていますか?
1時間半くらいかな。
ーそもそも、どうしてデコラファッションにハマったんですか?
お姉ちゃんに「多分好きだよ」と、紅林大空ちゃんのメイク動画をおすすめされたのがきっかけです。それから、ずっとスマホで昔の原宿の動画をYouTubeで見ていて。小学校5年生の時に駄々をこねて原宿に連れてきてもらって、デコラファッションっぽい服を一式買ってもらったんです。もうそこからは、ズブズブですよね(笑)。
ー小学校5年生で、マイスマホを持っていたんですね。
親が「学校にちゃんと行って、勉強で結果を出して、やることをやってさえいれば何も文句はないよ」と言ってくれる親で。結構早めにスマホを持たせてもらったんです。その携帯でずっと、原宿という街を見ていました。おかげで早めに、自分の好きなものを見つけられたので感謝をしています。
ーデコラの何に惹かれたのか、言語化することはできますか?
まず、小学生の私にとって「デコラ」は真似がしやすかったんです。というのも、ヘアピンは100均で手に入りますよね。「なにか派手な格好がしたい」と思ったら、とりあえず100均に行けばなんとかなったんです。
ー手軽に始められることが魅力的だった?
最初は手軽さだったんですけど、追求していけばいくほど奥が深かった。「あれ?これもっといけるんじゃね?」みたいな。もっと盛れるし、もっと個性を出せるかもしれないって気がついたんです。最初はヘアピンを5個付けていただけだけど、「バッテンにしてつけてみよう」、その次は「前髪を全部ヘアピンでとめてしまおう」と、どんどん自分の中でアップデートされるのが楽しかった。
ー原宿近郊に住んでいるんですか?
生まれは群馬県で、現在は埼玉県に住んでいます。群馬に住んでいた時は、遠いので今ほど頻繁に原宿に遊びに行くこともできなかったんですけど、埼玉に引っ越してからは少しだけ近くなったので通いやすくなったんです。
ー自宅から原宿までどれくらいの時間がかかるんですか?
1時間半くらい。メイクと着替えをいれたら、全部で3時間かかる。でも、時間がかかって簡単に原宿に行けないからこそ、原宿にかける想いが強いんです。「原宿が好き」「原宿にできる限り長くいたい」という気持ちは、誰にも負けないと思う。
ーなぜ、原宿の街が好きなのかを考えたことはありますか?
やっぱり、どんな人でも受け入れてくれると思っていて。この格好は、隣の渋谷では受け入れてもらえないかもしれない。でも原宿だったらこの姿でいても「原宿ファッションってまだいるんだ!」「写真を一緒に撮ってください!」という反応をもらえる。というか逆に、原宿に来る観光客の人たちは私みたいな「THE 原宿ファッション」を求めていたりするんですよね。原宿じゃないとダメというわけではないけど、原宿であるメリットが多いから、原宿にいたいのかもしれない。
ーファッションアイコンはいますか?
原宿ファッションにハマるきっかけを作ってくれた紅林大空ちゃんはずっと憧れの存在ではあるけど、デコラをしていると「憧れ」がイコール「パクリ」になってしまう可能性もあるなと考えるようになって。みんな「自分の好きな自分」を追求しているわけだから、お互いに申し訳ないな、と。だから最近は、私も「自分の好きなことを体現しよう」というマインドなんです。
話は少し変わるんですが、よく「デコラとシノラーの違いがよくわからない」と言われるけど、アムラーとギャルが違うみたいに、デコラとシノラーも違う。アムラーもギャルだけど、安室ちゃんを好きなギャル。シノラーも、篠原さんが好きなデコラティブな人たち。本質的には変わらないけど、マインドは違うんだよというのは、声を大にして言いたいかな。
ーNICOさんは、埼玉県の某公立服飾学校に通っていたと聞きました。
冬休みが来る前に辞めてしまったんですけどね。
ー何かあったんですか?
学校が求めるものと、私がやりたいことが全然違ったんです。
ーデザイナーになろうと思ったことはなかった?
考えたこともなかったですね。というのも、私の将来の夢が、原宿に「原宿ファッションを体験できるお店」を作ることなんです。舞浜や、新大久保に「なんちゃって制服を貸し出します」というお店があるけど、それの原宿ファッション全種類網羅バージョンを作りたくて。ロリータやパンク、デコラの衣装を貸し出して「はい、これで竹下通り歩いて、プリクラでも撮っておいで〜!」みたいな(笑)。その夢を叶えるために、スタイリングや服のことを知っておけば役に立つかなと思って進学したんですけど、思っていたようなことが学べなかったんですよね。
ー「原宿ファッションを体験できるお店を作りたい」と考えるようになったきっかけは?
「デコラが常にいる原宿になって欲しい」と思ったのがきっかけです。「常に」ということを考えると、「だったら自分たちで常に原宿の街にデコラを輩出し続ける拠点があった方が早いね」と。なので、お店はあくまで手段。目標は、デコラが常にいる原宿。
ーやっぱり最近の原宿は元気がないな、と思う?
めちゃくちゃ思う。地元の友達に「原宿の何が楽しいの?」と聞かれたことがあるんですけど、考え込んじゃって。「クレープ食べて、プリクラ撮れば?」と答えようと思ったんですけど、冷静になると「それって地元でもできるじゃん」と(笑)。だから、私はもっと“原宿の良いところを紹介できるマン”になりたい。
ーNICOさんは、昨年10月から原宿で月に1回「NEOデコラ会」というイベントを主催しています。改めてNEOデコラ会について教えてください。
超単純に言うと、毎月15日に一番近い日曜日にデコラ好きが集まる会です。竹下通りを歩いて、最後は神宮橋で記念写真を撮ります。目指しているのは、昔のラフォーレ原宿前みたいな感じ。私が原宿に通い始めた頃はスナップ文化が活発で、スナップを撮られたい同じような服の子たちが集まっていました。そこで、私もたくさん友だちができたので、そういうことができたらいいな。例えば、NEOデコラ会を通じて仲良くなった2人組がいたとして「今度はNEOデコラ会関係なく、2人で一緒に原宿で遊ぼう!」となったら、そしてそれがネズミ算式に増えていったら、それこそ原宿という街にデコラちゃんが常に居続けることができるじゃないですか。
ーデコラが常にいる原宿を目指すために、NEOデコラ会を主催した?
そういう側面も少なからずあります。昔の原宿は同志というか、仲良しも見つけやすかったし、そもそも派手な格好をしている子が多かったから、デコラファッションで竹下通りを歩くのが初めてでも浮くことはなかったんですけど、今は少し好奇の目に晒されると思うんですよね。もし私が今、勇気を振り絞って初めてデコラファッションを着て竹下通りにいたら、やっぱり落ち込むと思うんです。
ー今の原宿には、昔ほどデコラちゃんや、原宿KAWAII系の服を着ている人がいないですもんね。
そうなんですよ。同じような人がいると思ったのに全然いない原宿の街で、張り切ってオシャレをしたのに変な目で見られたら、二度とデコラファッションで外に出たくなくなると思う。そんなの悲しすぎるし、しんどすぎる。だから、1人でもそんな思いをしなくて済むように、同じ格好の人をたくさん集めることにしたんです。ひとりぼっちで自信がなくても、複数人の中の1人だったら、デコラファッションを楽しんでいる人の中の一部になれるじゃないですか。そしたら、私も多少無責任であったとしても「人の目なんて気にしないで、好きにやっちゃおう!」と声をかけてあげられるし「見守るからもっと挑戦してみて!」と言える。それに、デコラも1人だとただの派手な人かもしれないけど、集まれば文化になるはずだから。
ーNEOデコラ会に参加条件はあるんですか?
まったくありません!初心者とか上級者とか関係なく「誰でもマインドがデコラだったら良いよ」と伝えているつもりです。よく「私はデコラが好きなんですけど、それらしいアイテムを一つも持っていなくて、参加できそうにないです」というDMを貰うんですけど「それは全然来ていいよ!」と。冒険する気持ちで参加してもらって「違うな」と思ったら次から来なくても問題ないです。
ー参加者の中にはNICOさんよりも年上の人も大勢いますよね。よく組織を束ねているなと思います。
全然そんなことはないけど、1人で何かを始めるということは絶対に知らないことや、上手くいかないことがあって心細い。だったら「楽しいパーティー」という立て付けにしちゃって「ここなら何をやってもいい」と切り替えた方が絶対にいいと思ったんです。たまに「デコラファッションに興味はあるけど、やったことがなくて。でもいつか絶対に行くのでずっと続けていて下さい」というコメントをもらうんです。嬉しいですよね、喜んで続けます。
ー「#NEOデコラ会」というハッシュタグには、海外からの投稿もありますよね。
今はそんなにオフラインで出会う時代じゃないと思うので、ハッシュタグを使ってインターネット上でも盛り上げようかな、と。NEOデコラ会に参加しないと、このハッシュタグは使えないと思われがちなんですけど全然そんなことなくて。「今日、原宿で遊んだよ」という内容と共に、#NEOデコラ会のハッシュタグを使って欲しいんです。私は常に#NEOデコラ会のハッシュタグを調べているんですけど、新しいデコラちゃんを見つけるきっかけにもなるし、海外のデコラちゃんの流行り方と日本の流行り方は全然違うんだな、と勉強にもなります。ハッシュタグをつけてくれるだけで、まだ会ったことのない友だちの存在を知ることができるような気持ちになるんですよね。
ー最後に、NICOさんにとってファッションとは?
人によって異なりすぎて、よくわからないのが「ファッション」だと思っています。例えば、ファッションリーダーという言葉もあるけど、人によってリーダーが違いすぎるし、そのファッションリーダーが実在する人とも限らないですよね。どちらかと言えば「自分の中にある“目指すべき何か”」を目標としている気がしていて。それぞれ違うものを求めていて、それが共通認識ではないのであれば、そもそもファッションを語ることは難しくない?と。だから、あえて「ファッションとは?」という問いに答えるとしたら「自分の好きなものを段階的に、楽しく探していく手段」ということになるのかな。
聞き手:古堅明日香
撮影:小澤広征
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