フレッシュなファッションに触れていたい一心で立ち上げられた連載「ネクストブランド発掘」。とはいえ世にある幾千万ものブランドを独自調査して発信するのもなんだか一方的な気が……(単に骨の折れる作業を避けただけ)。そんなこんなでこの連載ではセレクトショップディレクター/バイヤーなどに協力を仰いで注目ブランドをピックしてもらうことに。面白い価値観との遭遇はなんらか自分の糧に変わるもの。新宿の予約制セレクトショップ「ジャックポット(jackpot)」で聞くラスト章。知っておいて損はナシ、目利きによる推しブランドの話。(文:本田圭佑)
■【ネクストブランド発掘】jackpotで聞く
・第1章:「jackpot」が選ぶ面白いブランド
・第2章:売り買いだけじゃない、セレクトショップとブランドの新たな関係性
・第3章:次世代スウェーデンブランドの魅力
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■jackpot
1994年よりスタートしたインポートアイテム中心のセレクトショップ。繁華街である歌舞伎町を目の前にした雑居ビルの7階に構える実店舗は新宿の隠れスポット的存在。1990年代NY HIPHOPカルチャーのMIX感を根底に持ちつつ柔軟な感性でスケートブランドからハイエンドなメゾンまでを共存させた現代スタイルを提案する。
東京都新宿区新宿3丁目22-11 サンパーク7階
公式サイト
インスタグラムアカウント:@jkptstore
第3章ースウェーデンブランドの魅力ー
ジャックポットで聞くネクストブランド発掘最終章は、スウェーデンをテーマに掘り下げる。2000年以降「アクネ ストゥディオズ(Acne Studios)」を筆頭に上質かつクリーンな世界観を発信してきたスウェーデン発のファッションブランドたち。その流れは今、個性や背景を表出させる新勢力たちの台頭によって面白い変化を見せているとバイヤー奥山達也は言う。
■北欧で切り取るサーフカルチャー|STOCKHOLM SURFBOARD CLUB
ジャケット/STOCKHOLM SURFBOARD CLUB
Image by: FASHIONSNAP
ジャックポットで取り扱われている多くのスウェーデンブランドは、どれもが北欧独自のミニマリズムを踏襲しながら個々に特長や魅力を表している。その中から最初に紹介するのは、アクネ ストゥディオズの創設者でありクリエイティブディレクターのジョニー・ヨハンソン(Jonny Johansson)と、デザイナー/サーフボードシェイパーのマンネ・グラッド(Manne Glad)によって2019年に設立された「ストックホルムサーフボードクラブ(STOCKHOLM SURFBOARD CLUB)」。
2022年春夏コレクション
Image by: STOCKHOLM SURFBOARD CLUB
「ストックホルムサーフボードクラブは『北欧』と『サーフボード』という多くの人にとってイメージのない、相反したもの同士をテーマにしたブランドです。『サーフボード』とあってウェアはカジュアルですが、いわゆるヴィンテージ加工を施したようなアメカジ然としたテイストのサーフブランドとも違って、モードな雰囲気を持ち合わせています。また、上質な生地をあえて採用したタイダイ柄のアイテムや、グラフィックをはじめとした随所に見受けられるアート的なエッセンスなど、品の良さそのものはもちろん、北欧とアメリカのヒッピーカルチャーの解釈の違いを楽しむことができます」(ジャックポット バイヤー奥山達也)
2022年春夏コレクション
Image by: STOCKHOLM SURFBOARD CLUB
■STOCKHOLM SURFBOARD CLUB:公式インスタグラム
jackpot:公式オンラインストア
■MTV世代独自のノイズ感 | EYTYS
ジャケット/EYTYS
Image by: FASHIONSNAP
続いては、アクネ ストゥディオズや「ファビアン・バロン(Fabien Baron)」でキャリアを積んだマックスと、金融業界でのキャリアを持つジョナサンの2人によって2013年に設立されたユニセックススニーカーブランド「エイティーズ(EYTYS)」。ブランドを国内外に広く認知させたシューズの存在のみならず、近年では彼らの手がけるレディトゥウェアにも強い関心が寄せられている。
2022年春夏コレクション
Image by: EYTYS
「エイティーズの背景には1980~1990年代を過ごした人間特有の感性があります。それがブランドらしさであり、それこそプロダクトにはMTVカルチャーで育った世代の特徴が映し出されています。クリーンな世界観に混じり合う、ちょっとしたノイズ感が良いんですよね。個人的に懐かしさを覚える感覚というか……。スウェーデンの人にもこの感覚が共通して存在していることはなんだか嬉しくもあります(笑)。国内でもシューズの認知がかなり広まってきている印象はありますが、アパレルを展開しているところはそこまで多くありません。最近ではシューズ以上にアパレルの人気が目を引くことから、希少性という面でも注目されているように感じます」(奥山達也)
2022年春夏コレクション
Image by: EYTYS
■EYTYS:公式インスタグラム
jackpot:公式オンラインストア
■リサイクルシルバーによるユニークな着眼点| ALL BLUES
Image by: ALL BLUES
最後の紹介は2010年設立のユニセックスジュエリーブランド「オールブルース(ALL BLUES)」。日常で触れる事象をインスピレーション源に蛇、タイヤ、目玉焼きなど、ユニークな発想をデザインに落とし込んでいる。またプロダクトにはリサイクルされたスターリングシルバー(925)や18Kゴールドを採用、職人たちが手作業で制作している。
Image by: ALL BLUES
「ジャックポットでは長い間アクセサリーの取り扱いがなく、いざ始めようと思ったときも、お店のテンションに合うものがなかなか見つけられませんでした。しかしパリでの買い付け中、アワーレガシー(OUR LEGACY)のショールームで似たようなデザインのアクセサリーを付けている人が多いことに目が止まって。彼らのスタイルにとても自然に馴染んでいました。あれは何だろうと思いながら、今度はエイティーズのショールームでもスタッフたちが先程と同じアクセサリーを付けていて……。さすがに気になって聞いてみたところ、オールブルースだと教えてくれたんです。それから彼らを通じてブランドを紹介してもらい、取り扱わせてもらう流れになりました」(奥山達也)
Image by: ALL BLUES
「洗練された世界観のオールブルースは一見敷居が高い、真面目なブランドのようにも感じます。ですがそれだけではなく、テーマやストーリー性などユーモアに富んだアプローチが見受けられます。インスパイア元がとてもユニークで、感覚的な面では距離感の近いブランドだなと思わせてくれました」(奥山達也)
Image by: ALL BLUES
■ALL BLUES:公式インスタグラム
jackpot:公式オンラインストア
ベスト/OUR LEGACY
Image by: FASHIONSNAP
「北欧ブランドへの反応はここ2~3年でまた大きく変わりました。アワーレガシーにしても取り扱い始めた頃は若い世代からの反応は薄く、30~40代でカルチャーをひと通り通過してきた一部の人たちが反応するいわゆる通好みなブランドでした。今では性別、世代を問わず問い合わせが増えています。ブランドとしての打ち出し方もメンズにウィメンズを着せたり、その逆だったり、ニュートラルな感覚で上手だなと思います」(奥山達也)
2022年春コレクション
Image by: OUR LEGACY
「今回紹介しているブランドの多くは、マルジェラを筆頭とする1990年代のヨーロッパデザイナーたちに影響を受けて育った世代によるそれぞれのクリエイションと捉えることができます。またスウェーデンという国はモノを売ることに長けているように感じます。例えばIKEAやH&Mのように、外貨を上手に稼ぐための教育やノウハウは北欧ファッションブランドにも組み込まれているのかもしれません。その国特有の環境や価値観にクリエイティブがバランス良く作用する魅力、と言いますか。個人的ですがスウェーデンのブランドにはそういった共通点があるのではないかと思います」(奥山達也)
■【ネクストブランド発掘】jackpotで聞く
・第1章:「jackpot」が選ぶ面白いブランド
・第2章:売り買いだけじゃない、セレクトショップとブランドの新たな関係性
・第3章:次世代スウェーデンブランドの魅力
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