「何でもできる。やってもいいんだ、ということが伝われば」——「N.HOOLYWOOD(N.ハリウッド)」のデザイナー尾花大輔は、コロナ禍であらゆることが制限される中、新しいことへの挑戦を肯定する。2021年フォールコレクションは、クリエイティブディレクションを外部のクリエイターに任せるという初めての試みで制作したフィルム形式で発表。ドレスライン「エヌハリウッド コンパイル(N.HOOLYWOOD COMPILE)」では、ジャンルを超えた感性が混ざる自由な表現を、約26分の映像に収めた。
■自由に組み合わせるレイヤード
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エヌハリウッド コンパイルは、「フォーマル、ドレスウエアの在り方をコンテンポラリーに編集する」というコンセプトを基に、服のディテールや素材、着心地を追求してきた。一着一着、物と向き合って作り上げていくのが近年のスタイルで、今シーズンも特定のテーマは設けられていない。ゆえに、時代の空気を取り入れながらシーンを問わないボーダーレスなデザインや、振り幅の広い提案が可能になっている。
2021年フォールコレクションの特徴はレイヤード。軽量素材やレイヤード機能を取り入れたアイテムを展開し、インナーとシェル(アウター)を自由に組み合わせることができる。フレアシルエットのパンツなど、新鮮なデザインも取り入れた。
N.HOOLYWOOD COMPILE 2021年フォールコレクション
カモフラージュ柄のアウターは、N.ハリウッド20周年の特別企画として「アンダーカバー(UNDERCOVER)」のアーカイブ生地をリプロダクトする「REBEL FABRIC BY UNDERCOVER」の第2弾。1996年にアンダーカバーが発表したカモフラージュ柄を、デザイナー高橋盾と共にアップデートした。
■何か心に残るものを作りたい
今回のフィルムでクリエイティブディレクターとして起用したのは、写真家で映像作品も手掛ける岩澤高雄。尾花との何気ないコミュニケーションから発展し、スタイリストやキャストなどを集めて制作がスタートした。
服を主役に据えるため、パフォーマーは透明人間のイメージで、ナチュラルカラーの全身タイツ姿。2脚の椅子のみが置かれたシンプルな舞台を一台の固定カメラで俯瞰的に映し、パッと瞬時に変わるシーンの転換は、昔なつかしい箱型の紙芝居から着想を得たという。コレクションの特徴でもあるレイヤードとも重なる。
2人の演者のパフォーマンスを映した26分。コレクションフィルムの尺としては長い方だが「BGMのように、何かの作業や生活の中で流してもらってもいいと思う」(岩澤)という考えで、見方や感じ方は自由。最後に何か少しでも心に残るフィルムを目指した。
演出、音楽、スタイリング、ダンスや演技。撮影現場ではジャンルを超えたクリエイター同士が意見を出し合い、良いものを作ろうと高め合う。その様子を眺める尾花は、まるで観客のようにリラックスした表情。何かを指示することはなく、全てを任せているという。「物には自信がある。だから何をやってもいいと伝えた」。
■N.ハリの新たな歴史が始まる
今回のコレクションフィルムを通じてクリエイターらの情熱に心を打たれ、想像を超えるものに仕上がったことで「また色々なことをやれる自信がついた」と尾花。コロナにより海外でコレクション発表ができないなど例年とは異なる状況が続いているが、逆にこれまで変わらなかったシステムを変えるチャンスとも捉える。21年目の今年、N.ハリの新たな歴史が始まろうとしているようだ。
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