シャルルアンリ・ルヴァイヤン(メイクアップフォーエバー社長兼CEO)
Image by: メイクアップフォーエバー
LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(以下、LVMH)傘下の「メイクアップフォーエバー(MAKE UP FOR EVER)」が今年3月、新たなCEOにシャルルアンリ・ルヴァイヤン(Charles-Henri Levaillant)氏を迎えた。メディアコミュニケーションや通信など複数の企業を経験し、LVMHでは「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のチーフ・デジタル・オフィサーを務めた同氏は、メイクアップフォーエバーの今後をどう見据えるのかーー。
■シャルルアンリ・ルヴァイヤン(メイクアップフォーエバー社長兼CEO)
エコール・ポリテクニーク(École polytechnique)、スタンフォード大学ハーバード・ビジネス・スクール卒業。フランスの公的部門でいくつかの役職に就き、研究大臣参与を経験。ブリュッセルの欧州機関でEUの通信にかかる枠組み規制の交渉を主導した。その後、フランスのエンターテイメント・メディア・コミュニケーション企業VENDI社の戦略・開発部門のバイスプレジデントとして、ブラジルの固定電話・インターネット・テレビ運営会社GVT社の買収を統括した。GVT社ではカスタマーエクスペリエンス部門のヘッドを務めた。LVMHには2019年に会長兼CEO ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)氏のアドバイザーとして入社した後、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のチーフ・デジタル・オフィサーを務めた。2023年3月から現職。
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ーいつメイクアップフォーエバーの社長兼CEOのオファーを受けましたか?
今年2月末の火曜日の夕方に、翌週の月曜日に就任してくれないかと要請がありました。オファーをされた翌日には、前任のガブリエル・サンジュニ・ロドリゲス(Gabrielle Saint-Genis Rodriguez)氏と会い、オファー通りに翌月曜にはこのポジションに就きました。本当にあっという間でしたよ! LVMHが各ブランドの社長の任命に関して、迅速かつ機敏に動く、ユニークな力を持っていることがわかりますよね。
ー1週間で! かなりスピーディですね。新社長としてのミッションは?
私の使命はメイクアップフォーエバーを世界のトップメイクブランドに押し上げることです。ルイ・ヴィトン時代、目覚ましい成功によって世界で最も価値のあるラグジュアリーブランド*へと成長させることができました。ですから、メイクアップフォーエバーでもトップを目指し、チームとともに動き始めました。
*Kantar BrandZ™ Top 10 Most Valuable Global Brands 2022より
ーベンチマークにしているブランドを教えてください。
プロフェッショナルなブランドとして、「M·A·C(メイクアップ アート コスメティックス)」や「ナーズ(NARS)」、「シャーロット・ティルブリー(Charlotte Tilbury)」。エキスパートブランドの「フェンティ ビューティ(Fenty Beauty)」、「ベネフィット コスメティックス(Benefit Cosmetics)」、アジアブランドでは「花西子(Floraris)」などをベンチマークにしています。
ー世界的に化粧品市場ではプレステージスキンケアやフレグランスが成長カテゴリーですが、 メイクアップがDNAのメイクアップフォーエバーの戦略について教えてください。
メイクアップカテゴリーでやるべきことがたくさんあるので、私たちはスキンケアやフレグランス業界に参入するつもりはありません。流通戦略を見直し、私たちが何者であるか、私たちの描く世界とはどのようなものなのかをより具体的に表現していきます。そのためには店舗の活用は必須です。
メイクアップフォーエバーにとって、プロのメイクアップアーティストたちの力は最大の価値です。彼らをもっと“現場”に立たせ、その技術をお客さまへ伝え、共有していきたい。私たちのクリエイションに、日本の洗練された文化を融合させれくれる日本人メイクアップアーティストが仲間に加わってくれたらと、強く望んでいます。
ブランドの人気を支えるベースメイクアイテム
ーグローバルでSNSなどデジタルが普及する中、広域に発信することも重要です。
そうですね。そのため、ローカライズされたアンバサダー戦略によって、消費者の感情やストーリーを刺激し、地域との関連性を高めることも重要だと考えています。私たちは近年、中国ではクアン・シャオトン(Guan Xiaotong)やチェン・イー(Cheng Yi)とパートナーシップを結びました。また日本では韓国の5人組ガールズグループの「ル セラフィム(LE SSERAFIM)」のリーダー キム・チェウォン(Kim Chaewon)をジャパンアンバサダーとして迎えました。こういったローカライズ戦略で多くの方に認知を高めることができ、成功を収めていると思います。
ーではブランドにとってアジア市場、そして日本市場をどう捉えていますか?
中国がアジア最大の市場であることに、今や驚くことはないでしょう。日本は他の市場と比べるとまだ小さいのが現状です。ですがもしかしたらご存知ないかもしれませんが、日本では長い間、プロフェッショナル向けに展開し、一般消費者向けに広げたのは意外と最近のことなのです。そういう意味で、日本の市場において私たちは若いブランドなのです。それゆえ日本市場ではまだまだ潜在能力を発揮できていない。私たちが持つその力の開発に全速力で取り組み、開花させることに、期待していただきたいですね。
2017年、「ギンザシックス(GINZA SIX)」に日本最大級、初の直営店をオープン
ー日本市場での課題はなんでしょうか?
前述したようにマス市場では新参者で、ブランドの構築や知名度の向上が課題です。自分たちが何者であるか、もっと表現することで、メイクアップフォーエバーの、このブランドのあるべき姿を獲得していけるでしょう。
何者であるか。矛盾していると思うかもしれませんが、フランスが起源であることをより強く発信すると同時に、日本のお客さまに寄り添うブランド。それにより私たちの潜在的な力を発揮できると考えています。
ウルトラHDルースパウダー(同5280円)
ーメイクアップフォーエバーの将来像をどのように描いていますか?
私たちは、すべての地域でそれぞれのメイクアップ市場成長よりも早いスピードで成長する計画を立てています。例えば、成長率がおよそ6〜7%の市場において10〜15%の成長を達成すれば、ブランドの長期投資の余地を残しながら順位を上げ、収益性をも向上させることができます。
特に日本はまだこれからですが、毎月のようにブランドの順位は上がっています。これは現地のチームがすばらしい仕事をしていれている結果です。現在、中東エリアで私たちはNo.1のメイクアップブランドです。この実績は世界でもNo.1を狙えるということを意味していますから、期待していてください。
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