ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)による「ミュウミュウ(MIU MIU)」の2024年秋冬コレクションがパリで発表された。テーマは「INDIVIDUAL MOMENTS」(それぞれの瞬間) 。人生のステージやその時々の心情、世界の変遷と共に変化する服の様々な瞬間を表現した。
大人と幼少期の間を行き来する様々な瞬間
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ブラウンやレッド、ネイビーなどのロングコートから覗くのは片襟だけ飛び出たシャツや、母親のワードローブから借りて無造作につけたようなパールのネックレス。胸ぐりが大きく空いたワンピースやペンシルスカート、ミニ丈のニットコートにはカラータイツが合わせられている。
Image by: MIU MIU
個々のアイテムや着こなしのバランスは懐かしさやドリーミーなムードが漂い、子ども時代の記憶を呼び起こす。ぶかぶかの手袋、ハンドバッグ、かっちりとした仕立てのアウター、大きめのタートルネックのセーターなど、大人もしくは大人への憧れを秘めたアイテムを組み合わせているのも印象的。それはまさに、家族から「ミュウミュウ」の愛称で呼ばれていたミウッチャの幼少期を追憶しているかのよう。大人と子どもの間を行き来するようなルックの数々だが、決して古めかしさやノスタルジーに浸るのではなく、(引き続きロッタ・ヴォルコヴァによる)スタイリングや丈感、ボリュームの配分やカラーリングといった要素で新鮮さを伴っている。
"ミウッチャらしさ"が満載
パジャマルックにアウター、スウェットのようなスポーティーなトップにボリュームのあるバルーンスカート、ユニフォームのようなシャツドレスにシアリングジャケットといった相反する要素の掛け合わせ、袖や裾から覗くシャツの絶妙な重なり具合(一部は2枚の異なる素材を貼り付けた1枚の生地)、グレーやネイビー、ブルーといった落ち着いたカラーパレットに差し込まれる意外性のある色の組み合わせや柄。ラフ・シモンズ(Raf Simons)とともに手掛ける「プラダ(PRADA)」や、ミュウミュウで毎シーズンコレクションを発表する中で、"ミウッチャらしい"と認識されつつも既視感を感じさせずにファッションを更新し、前進し続けていることが、彼女が長年第一線で活躍し、賞賛を浴び続ける所以なのだろう。
折しもファッションウィーク期間中、書店の店頭にはミウッチャが表紙を飾った「VOGUE」US版の3月号が並んでいた。作家のウェンデル・スティーブンソン(Wendell Steavenson)が書き起こした1万5000字からなるインタビュー記事からは、政治学の博士号を持ち、社会運動にも身を投じた若かりしミウッチャが、矛盾を抱きつつも家業であるファッションの道に進んだのは「美しいものへの愛が勝ったから」だと綴られている。その衝動的でありながら絶対的な信念が、彼女の生み出すクリエイティブの根底に流れていることを覚えておきたい。
「女の子らしさ」の再定義
コレクションは文字通りの「女の子らしさ(Girlishness)」を表しているようなルックが登場する一方、言葉の再定義も試みている。「(「女の子らしさ」という言葉が)以前は、特定の年齢の、特定の性別に用いられる名詞だったかもしれませんが、今は反抗心という強さ、自由な精神、そしてその人ならではの個性を表す万国共通の慣用句として用いられています。 一つの特徴としてではなく、広範な意味で、気質の根本的要素として捉えるべきでしょう」とコレクションノートに記された文章は、モデルのセレクションにも反映されていた。英国人女優のクリスティン・スコット・トーマス(Dame Kristin Scott Thomas)をはじめ、シンガーのエセル・ ケイン(Ethel Cain)、バレエダンサーのギヨーム・ディオップ(Guillaume Diop)、Netflixドラマ「ザ・クラウン」でハリー王子役を演じた俳優のルーサー・フォード(Luther Ford)、ラッパーでシンガーソングライターのリトル・シムズ(Little Simz)、スペイン人女優アンヘラ・モリーナ(Angela Molina)といった様々な年齢、人種、性別のバッググラウンドを持つモデルがランウェイに登場し、観客の目を引いた。
70歳のMIU MIUラバーがモデルに
そして今回のショーでもう一人話題に上がった人物がいる。中国・上海で医師として従事してきた70歳のQin Huilanは、息子のサポートの下、愛用するプラダやミュウミュウに身を包んだスタイリッシュなスナップをインスタグラムに投稿するブランドの1ファンだった。ショーの数日前にブランドからのダイレクトメールでショーモデルのオファーが届き、見事にランウェイデビューを果たしたという。
前述したようなミウッチャの幼少時代を追憶するようなルックが登場する一方で、実年齢が近く自身を投影するようなモデルを起用することで(ミウッチャは現在74歳)、年齢に関係なく「反抗心、自由な精神、個性」(=本コレクションでいうところの「女の子らしさ(Girlishness)」)を持ち続けることができると証明して見せた。
フロントローを飾る最旬の顔ぶれ
ショーにはミューズとしてブランドの顔を務める女優のエマ・コリン(Emma Colin)をはじめ、シドニー・スウィーニー(Sydney Sweeney)、日本アンバサダーのTWICEのモモ、IVEのチャン・ウォニョン、(G)I-DLEのミンニのほか、エヴァー・アンダーソン(Ever Anderson)、ジョーイ・キング(Joey King)といったフレッシュな"MIU MIUガールズ"たちがフロントローを彩った。
TWICEモモ
Image by: MIU MIU
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