大川「左がヒロシくん、右がジョニオくん」
1970年のデビュー以来、国内のドメスティックブランドの礎を築き上げた「ミルク(MILK)」の大川ひとみ。今回FASHIONSNAP(Fスナ)では、日本のカルチャーを牽引してきた原宿を中心に、国内外で世代の異なる様々なクリエイターと交流を持ち、常に新しいストリートスタイルを提案してきた彼女に迫る短期連載をお届け。第3話は、彼女が巡り合い、後の日本のファッションシーンに多大なる影響を与え続けている藤原ヒロシ、「アンダーカバー(UNDERCOVER)」のデザイナー高橋盾、「ケンゾー(KENZO)」のアーティスティックディレクターと「ヒューマン メイド(HUMAN MADE)」のデザイナーを務めるNIGO®との出会いを聞いた。
ー藤原ヒロシ氏、高橋盾氏、NIGO氏など、彼らと出会った頃のことは覚えていますか?
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ジョニオ君※高橋盾の愛称と会ったのは割と後の方で、その3人の中で最初に出会ったのはヒロシ君。ヒロシ君は当時17歳くらいだった気がする。とてもキュートで、センスがいい子だなって。きっかけはそれくらい単純なことなんですよ。みんな、今でも関係性は何も変わっていなくて、よく話すし「ひとみちゃん、今暇?お茶行こうよ」とか誘われる(笑)。
ー例えば、自分が若い時に年上に可愛がってもらったから、自分も年長者として下の世代に何かを残そうという感覚があったりしたんでしょうか?
そういう気持ちはまったくなかった!
ー帽子デザイナーのスティーブン・ジョーンズとも仲がいいですよね。
スティーブンがいたから、イギリスでいろんな人に出会えたなと思っています。彼とはロンドンのクラブで出会ったんですが、彼の紹介で、キム・ジョーンズ(Kim Jones)とも知り合えたし、ロンドンでたくさんの人と仲良くなれたから。スティーブンは、ミルクやミルクボーイがファッションショーをやる度に、毎回帽子を作ってくれるんですよ。1990年代に店頭で販売していた雑誌「MILK BAR」にも参加してくれました。
左)大川ひとみ 右)スティーブン・ジョーンズ 2018年頃
ーある日大川さんが、高橋盾さんに「これで適当に何か作ってみてよ」とシャネル(CHANEL)の服を突然渡したというエピソードを聞いたことがあります。
それはよく覚えている。私、シャネルの服がすごい好きなんですけど、着ても似合わないんです。というより、自分自身がそういうハイソサエティーな世界ではなく、ストリートに生きていたから、買っても着なかったんですよね。ジョニオ君に渡したのは、シャネルのジャケットだったと思うんだけど、表地のデザインもシルエットも可愛くて。気に入っていたんだけど「やっぱり私には似合わないなー」と。でもそのジャケット、裏地がシルクで、そこに重さを出すためにチェーンが付いていたんです。それで「あ、裏地の方がかっこいいし、裏側を表にしたら私でも着れるな」と思いついて。それでジョニオ君に「分解したり、切ったりしてもいいから作って!」ってお願いしただけ(笑)。
ー当時はみなさん、どこで遊んでいたんですか?
当時はクラブ文化全盛期だったから、クラブに行くことは多かったですね。新宿にあった「ツバキハウス」や芝浦の「ゴールド」、六本木通り沿いにあった「レッドシューズ」によく行きました。でも実は私、お酒を一滴も飲まないの。だから、お酒を飲まない人、飲めない子というのが当時一緒に遊んでいた人たちの第一条件だったりもしました。
ーお酒を飲まないのは意外でした。
コーラで朝までクラブを3軒くらいはしごして、ホテルで朝食をみんなで食べて家に帰っていた(笑)。
ーなるほど。話を聞けば聞くほど、当時の大川さんは、若者に特別な経験を与えてくれる存在だったのかなと想像します。
そんなこと全然ない!「一緒にお茶をしましょう」「ランチをしましょう」というのと同じで、仲良くなりたかったから一緒にいただけ。今も会社のスタッフや、販売員の子たちともよくお茶をするんですけど、私にとって、何よりも大切なのは、一緒にいて違和感がないこと。上なのか下なのかわからないけどチームが大切で、仲良しが一番。信頼関係がないと、仕事にならないと思うし、アパレル業界ってそういう世界だと思っているから。才能やセンスがある子たちと一緒にいて、楽しく過ごしたかった。
ー先ほどから度々出ている「センス」というのは大川さんにとって、どういうものなんでしょうか?
難しいな。うまく言えないけどやっぱり、一緒にいて「楽である」なのかな。多分だけど、「自分の仕事を全うするためには、1人の力でできることなんて高が知れている」ということに気がついていたんだと思うんです。だから、いつか助けてもらえるかもしれない新しい人材を無意識に探していたのかも。昔のこと過ぎて、その時何を考えていたのかまでは全然覚えていないし、今となってはわからないんだけどね(笑)!
【連載:MILK大川ひとみがFスナだけに話してくれたこと】
第1話「すべてを表現できる職業」
第2話「『ミルク』と『ミルクボーイ』ができるまで」
第3話「藤原ヒロシ、ジョニオ、NIGO®との出会い」
最終話「みんな心は16歳のまま」
(聞き手:古堅明日香)
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