(左から) エンポリオ アルマーニ、エトロ、マックスマーラ、アンテプリマ
Image by: EMPORIO ARMANI、ETRO、Max Mara、ANTEPRIMA
2月末に開催された2024年秋冬ミラノコレクションは、過去や未来にインスピレーション源を求めつつ、各ブランドならではのツイストが光った。異国情緒あふれるクリエイションをさらに進化させた「エトロ(ETRO)」、ダークトーンの中に巧みな変化を生み出した「マックスマーラ(Max Mara)」、フューチャリスティックな世界観で新境地を切り開く「アンテプリマ(ANTEPIMA)」、きらびやかなディテールが闇を照らす「エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)」、平凡に抗う女性を描いた「エムエスジーエム(MSGM)」、タキシードを再解釈した「ドルチェ&ガッバーナ(Dolce&Gabbana)」の新作コレクションを振り返る。
地図なき古代の旅へと誘うエトロ
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マルコ・デ・ヴィンチェンツォ(Marco De Vincenzo)が手掛けるエトロのテーマは「エトロアクト(ETRO ACT)」。ホメロスの「オデュッセイア」からインスパイアされ、異文化への探究を軽やかなレイヤードの中に表現した。ランウェイにずらりと並んだのは、大迫力の巨大マスク。古代の劇場で感情やキャラクターを表現したモチーフがずらりと並び、まるで遺跡のような雰囲気を醸し出す。
マスクのモチーフはネックレスやイヤリング、ブレスレットなどにも形を変え、コレクションに登場。巻き付くようなスカーフやスカート、厚手の椅子張り生地を使ったショートジャケット、ペイズリーをあしらった「ウォルフォード(Wolford)」のボディストッキングなどを取り入れ、はかなさと強さをあわせ持つコレクションとなった。
Image by: ETRO
作家コレットのスタイルを描くマックスマーラ
イアン・グリフィス(Ian Griffith)が手掛けるマックスマーラは、フランスの作家 コレット(Colette)から着想を得て、“人生を自らコントロールできる完璧な女性像”を表現。「インナーライフ(THE INNER LIFE)」と題し、余分なものが削ぎ落とされた、モダンかつスマートな装いを探究した。カラーは、深みのあるネイビーや漆黒、スモーキーグレーといった落ち着いたトーン。コレットがしばしば男性のような格好をしていたことから、黒を多用したハンサムな世界観を打ち出した。
マックスマーラの得意とするパワージャケットのほか、1910年代の日本の影響を受けたという卵形シルエットの新作コートも登場。キモノスリーブで、背中でブラウジングして膨らみを持たせたシルエットが特徴だ。また、幅広のニットバンドと帯のような細いストラップベルトでウエストを強調したスタイルもエレガントなプロポーションを作り出した。
Image by: Max Mara
デジタル時代の未来を考えるアンテプリマ
荻野いづみが手掛ける「アンテプリマ」のコンセプトは「デジタルエレガンス(DIGITAL ELEGANCE)」。デジタル技術の急速な発展が生み出す暗黒さや不安感をデザインに昇華し、ポジティブなエネルギーを引き出した。「このコレクションを通じて現実世界とは異なる別の可能性を示し、ファッションを楽しむことのできる平和を祈り、未来の在り方について考えるきっかけを与えることができれば」と荻野はその意図を説明する。
会場にはデジタルサイネージが設置され、カラフルなグラフィックを映し出す。モデルたちがまとっていたのはサイバーパンクやY2Kの要素を取り入れた装い。フューチャリスティックな光沢素材を採用し、エネルギッシュかつ知的な女性像を描いた。
Image by: ANTEPIMA
明るく夜を照らすアルマーニ ウーマン
ジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)が手掛ける「エンポリオ アルマーニ」のテーマは「夜光」。待ちわびた夜に躍動する、自由なマインドの女性像を描いた。ジャンプスーツやルーズなテーパードパンツに、かぎ針編みのベストやフェイクファーニットをコーディネート。夜空を思わせるブラックを基調に、モーブ、バイオレット、ジェイドグリーン、グレーなど、“太陽が沈んだ冬の空”を表現した色彩がルックを彩った。
メタリックな装飾、星や月の刺しゅう、そして炎のようなラインストーンのチェーンがきらめきを演出。フィナーレにはモデルたちが雨雪の降る中、傘を手にして登場。弾むような足取りと笑顔が、暗い時代を明るく照らすかのようだった。
Image by: EMPORIO ARMANI
平凡に抗う自由な女性"スワン”を描くMSGM
Image by: MSGM
マッシモ・ジョルジェッティ(Massimo Giorgetti)手掛ける「エムエスジーエム(MSGM)」は、今シーズン、「ティファニーで朝食を」で知られるトルーマン・カポーティ(Truman Capote)が名付けた1950〜60年代に煌びやかなライフスタイルを謳歌した社交界のソーシャライトたちの呼称"スワン"にインスパイアされた平凡に抗う自由な女性らしさを描き出した。ボウやカクテルドレスなどブルジョアのムードを残しつつ、黒やコンクリート、クリーム、ダストピンクなどの落ち着いたカラーパレットにクリスタルの装飾やジッパー、MSGMらしいアクセントカラーを差し込み、華やかな世界にパンクやダークな要素をちらつかせた。ウエストシェイプのジャケットが登場する一方、オーバーサイズのアウター類も多く、フェミニンとマスキュリンなシルエットが程よく混ざり合った。
Image by: MSGM
Image by: MSGM
ベルギー人アーティスト、Jan De Vliegherが、食器やグラス、クリスタルのシャンデリアといった上流階級の居間の表象をブラッシュストロークで描いたプリントも貴族的なものへの一種の破壊的行為として取り入れられている。
タキシードの再解釈で女性らしさ表現したドルチェ&ガッバーナ
「ドルチェ&ガッバーナ(Dolce&Gabbana)」の2024年秋冬コレクションのテーマは「TUXEDO」。ドメニコ・ドルチェ(Domenico Dolce)とステファノ・ガッバーナ(Stefano Gabbana)はタキシードを「ピュアなスタイルの究極の象徴」と捉え、今回はシンプルでありクラシックなタキシードを再解釈して、女性らしさを際立たせる厳格さと誘惑を組み合わせたスタイルを作り出した。
Image by: ©Launchmetrics Spotlight
Image by: ©Launchmetrics Spotlight
コレクションはブラックを基調とし、クリスタルの装飾が施されたドレスやレオパード柄のコートなどでアクセントを効かせた。フォルムを際立たせるショート丈のジャケットやカマーバンドなどタキシードのディテールは残しつつ、ネットやヴェール、レースなど、女性の体に透明感を与える素材でマスキュリン、フェミニンさを融合。サルトリアの文化に深く根ざしたタイムレスなエレガンスを提案したという。
Image by: ©Launchmetrics Spotlight
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