DX推進でBCの働き方も多様に
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ー2021年はDX(デジタルトランスフォーメーション)も推進していました。
DXはコロナ前から進めていましたが、コロナ禍で加速しました。その一例として、女性の働き方にも関わる取り組みがあります。現在、弊社は約4400人のBC(ビューティコンサルタント)が働いてくれていますが、コロナ禍で店頭が閉店せざるを得なくなる中、オンライン接客のシステム化を急ピッチで進めました。新たなオンラインカウンセリングプラットフォーム「ウェブ ビーシー システム(WEB-BC SYSTEM)」と言いますが、化粧品特有の繊細な「色」や「質感」を再現できる高精彩な映像を実現し、店頭と遜色ないカウンセリウングが可能となっています。社内公募で約30人のBCから手が挙がり専任美容部員として活動してもらっています。お客さまが時間と場所の制約を受けないこの仕組みは、当社のBCにも同じことが言えます。近い将来、専任の美容部員は60人程度まで拡大したいですし、また海外の顧客の方にもカウンセリングが可能になれば良いと考えています。
ーBCさんの働き方も大きく変わりますね。
当社では、BCは「社会と会社のインフラ」だと考えています。もっともっと輝ける存在にしていきたいと思っています。オンラインカウンセリングのプラットフォームが構築できたら、これまで結婚や出産といったライフステージが変わることで仕事を諦めざるを得なかった方も、朝や夜の少しの時間でも働くこともできるなど、多様な働き方が可能になります。その仕組みを早く確立させたい。“スターBC”がたくさん誕生してくれたら嬉しいですね。
2021年に行なったDX戦略
・「メゾン コーセー」銀座を刷新しバーチャルメイクやセルフフォトスタジオを導入
・未来のシワレベルを予想するウェブサービスの提供開始
ー2022年の戦略を教えてください。
2022年の重点取組として、①中国・トラベルリテール市場の攻略、②ブランド価値向上(パーソナルな顧客体験の追求/独自の価値追求)③アフターコロナを見据えた構造改革と成長戦略④サステナビリティ戦略の推進ーーこの4つを推進します。
ーアフターコロナを見据えた構造改革と成長戦略では、「KOSÉ Beauty Partnership」を発表しました。この内容は?
これまで「六法よし」(売り手、書い手、世間、未来、地球、作り手よし)と言ってきました。ただコロナも含め、激しい地球変動が続く中で、競合他社とも一緒にパートナーとしてこの状況を変えていく必要があると思います。それは企業だけではなく、地域社会、さらには行政も含めてです。
ー具体的にはどういうことでしょうか?
ビューティパートナーシップは、当社らしい“美しい知恵”を通じて、「お客さま」「流通」「取引先」「社員」「投資家」「環境」「協業先」「行政」「競合他社」「地域社会」の10のパートナーとともに、お互いに高めあう関係性を構築することで、日本独自の化粧文化を創造して世界に広めていこうというものです。
ービューティパートナーシップが広がることで、市場の考え方も変わりますか?
さまざまなパートナーと協働し、社会課題の解決を目指していきたいと思っています。結果、市場も拡大すると思ますが、たとえば、昔は子どもはお日様に当たって過ごしていましたが、今は逆です。地球温暖化の影響は顕著となっており、赤ちゃんから肌のバリア機能を保ち、UVケアをすることが重要です。当社は現在、子どもにも地球にも優しい日焼け止めを開発し、幼保施設でその重要性と使用習慣を定着させる啓発活動を行っています。またジェンダーレスな社会が進む中で、世界中の多様なニーズに応えていくという点で、今まで以上にターゲットは広がります。さらには、ビューティに軸足を置きつつも、高齢化を見据えたウェルビーイングや、更年期なども含めたフェムテックなども化粧品メーカーに求められる取り組みだと思います。そのほかエステや美容家電領域、美容医療領域、すでに進めているミルボンとの提携によるヘアサロン領域まで。われわれの美容業界はまだまだやるべきことがあるのではないでしょうか。
2022年秋 キッザニア東京にパビリオン「ビューティスタジオ(仮)」を出展予定
→多様性を尊重する社会づくりへの貢献および、幼少期からのビューティパートナーシップ構築
他社との協業により、お客さま一人ひとりの症状や悩みに合わせた商品を開発
→・マツキヨココカラ&カンパニー経営統合後、第一弾のプライベートブランドとしてコーセーと共同開発した「レシピオ(RECiPEO)」
・マルホとの合弁会社で敏感肌ブランド「カルテHD」、ベストコスメ 受賞歴40 部門以上
・ミルボンとの合弁会社で美容室専売化粧品ブランド「インプレア(iMPREA)」
ーサステナビリティでは何を進めますか?
当社はサステナビリティの指針として、「美しい知恵 人へ、地球へ。」を掲げています。今後は、まず“アダプタビリティ”の取り組みを進めます。「誰も取り残さない」「多様な文化へ溶け込む」「あらゆる肌と髪に向き合う」「使いやすい、分かりやすい」「ジェンダーにとらわれない」「誰もが心地よい表現を使う」「個々のポリシーに寄り添う」「幅広い世代の垣根を超える」。この8つのテーマを設定し具体的に取り組んでいきます。たとえば、コスメデコルテでは40色を取り揃えたファンデーション「コスメデコルテ ゼン ウェア フルイド」を4月16日に発売します。グローバルの多様な肌の特性(肌色・肌悩み・肌印象)を捉えるため、多様な⼈種から、700名もの肌色データを解析。一⼈ひとりの肌色を美しく魅せるブランドオリジナルの色体系の40色を開発しました。日本では18色を先行発売します。
また、沖縄のサンゴ養殖専門家・金城浩二氏と連携して紫外線防御成分7種について、サンゴの成育に影響しないことを確認するなど、今後も地球環境と人に配慮した成分の開発を進めます。先ほどお話しした、花王・カネボウとの協働プロジェクトも大きく前進させる予定です。
求めるのは「化粧品が大好きな人」
ー広がるターゲット、市場の中で、求める人材とは?
新卒、中途採用いずれも、化粧品と化粧が好きな人を求めます。どんなに学校の成績が優秀で、また面接や筆記試験がすばらしくても、どれだけ化粧品が好きであるかが重要です。ここ1、2年はオンライン面接なのですが、新卒採用の最終面接で、バッチリメイクをして臨んでくる男子学生も多いです。オンライン映えメイクも心得ていますよ。そういった化粧品への愛情に加え、サステナビリティやSDGsの意識も備わっていてほしい。あとは感性が豊かな方がいいですね。
ー最後に、小林社長のサステナビリティを教えてください。
当たり前のことでいうと、ペットボトルはずいぶん前から使用せず会社にもマグカップを持参しています。ソーダーストリームを購入したのも早かったと思います。自分でできることはコツコツとやっているのですが、私は基本、モノを大事にするのが好きですし、上質なモノを大切に長く使いたい。スーツを含めた洋服も自分の好みは分かっていますので、無駄なものは絶対に買いません。50年近く前の車も、しっかりメンテナンスして乗っていますし、靴も長く愛用しています。父親の形見の時計は35年以上使っていて、息子、孫へと受け継いでいきたいですね。モノを大事に長く使う、これこそがサステナビリティではないでしょうか。
(聞き手:福崎明子、平原麻菜実)
■「トップに聞く 2022」バックナンバー
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