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【トップに聞く 2025】コーセー 小林一俊社長 2026年の純粋持株会社移行に向けグローバルで戦える体制構築へ

コーセー 小林一俊社長

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コーセー 小林一俊社長

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【トップに聞く 2025】コーセー 小林一俊社長 2026年の純粋持株会社移行に向けグローバルで戦える体制構築へ

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 2025年の展望を、2024年の振り返りとともにインタビューする「トップに聞く」。創業80周年の節目である2026年に純粋持株会社体制への移行を進めるコーセー。グローバルでの多様なビジネスモデルの展開と提供価値の拡大に向けた体制構築のため、企業やブランドの強みを活かし持続的な成長と企業価値向上を目指す“ビューティコンソーシアム構想”の実現に向け、着実に歩みを進める。小林一俊社長に、2024年に残した課題と、今期の方針について聞いた。

小林一俊(こばやし かずとし):慶應義塾大学卒業。1986年コーセー入社。1989年から企画本部長室でCIプロジェクトの推進を担当。創業45周年にあたる1991年にはCIを導入。同年3月に取締役マーケティング副本部長、12月取締役マーケティング本部長兼宣伝部長を歴任し、広告宣伝の刷新を図るなどコーセーのイメージ向上に大きな力を発揮。1995年常務取締役、2004年代表取締役副社長、創業60周年にあたる2007年6月から現職。

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⎯⎯2024年は中国市場の不振も増収で着地しましたが業績を振り返ると?

 日本市場の「コスメデコルテ(DECORTÉ)」と「雪肌精」、米国市場の「タルト(tarte)」での2桁成長によるプラスが、中国事業の大幅減収をカバーし、増収となりました。一方で、商品構成の変化やグローバルな原料規制対応による原価率上昇等により収益性は低下し、課題を残しました。

2024年12月期
売上高:3227億5800万円(前期比7.4%増、為替の影響を除くと前期比5.0%増)
営業利益:173億6400万円(同8.6%増)
経常利益:216億4600万円(同6.9%増)
親会社株主に帰属する当期純利益:75億1000万円(同35.6%減)

⎯⎯“大谷効果”とも呼ばれるほど、ロサンゼルス・ドジャース所属の大谷翔平選手の起用は話題だけでなく売上にも貢献しています。

 2022年の年末から契約する大谷選手とは2025年も継続しています。今年もコスメデコルテの美容液「リポソーム アドバンスト リペアセラム」の広告モデルとして出ていただいていますし、テレビCMも放映しています。昨年に引き続き、大谷選手を起用したポップアップも表参道で開催し盛況です。雪肌精でも「雪肌精 スキンケア UV エッセンスジェル」の新テレビCMを放映し、商品だけでなく紫外線対策の重要性についても発信していただいています。

 大谷選手の起用はジェンダーを超え、男性の顧客増加に一役買っています。男性は、一度商品を使い効果実感を得られれば離れることが少なく、リピート率が高い。ロイヤルティーが高く、“大谷効果”が後押しして男性客が増加しています。2024年度に実施したリポソーム美容液の大谷選手を起用したキャンペーンでは、期間中の主要百貨店におけるブランド全体の男性新客が、前年と比べて1.5倍に伸長しました。定期購買など店舗に行かなくても購入できる点も支持されています。当社のキーワードであるグローバル(Global)、ジェンダー(Gender)、ジェネレーション(Generation)の“3G”を体現した事例だと思います。

大谷選手と小林社長との対談が話題に

2025年の目標や日やけ止めの重要性を語る

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⎯⎯コスメデコルテは国内で過去最高の売り上げとなった一方、グローバルを含めた全体では減収となりました。どう捉えていますか?

 日本市場を中心に考えることは悪いことではないのですが、グローバルへの視野が広がっていなかった結果だと思っています。そのため今期から大きく変革していく予定です。当社の悪い癖で、「日本人向けに商品を作り国内でヒットすれば、そのまま海外に出ても売れるだろう」という慢心がありました。しかしグローバルはより競合が多く、その国や地域で価値観や嗜好も異なり、他社もこだわりのある商品をそろえている。その中で選ばれるためには、現地の生活者にどのようなアピールをすべきかが大切です。

⎯⎯そういう思いに至ったきっかけがあったのでしょうか?

 以前、「アディクション(ADDICTION)」のポップアップをメイクの最先端であるニューヨークで開催したとき、「アディクションは日本人メイクアップアーティストが手掛けたメイド・イン・ジャパン ブランド」と紹介していたのですが、タルトのスタッフから「アメリカの現地の人にとって、大事なポイントはそこだろうか?」と指摘が入りました。「アディクションというブランドが消費者に何をもたらしてくれるのか」、「どんな驚きを与えてくれるのか」をアピールするべきなのでは、と。これまで日本式の訴求を現地でも行っており、国や地域の特性に合わせた訴求をしきれていなかったと認識を改めました。

⎯⎯2030年に向けた中長期ビジョンでの脱・自前、「現地起点のマーケティング・モノづくりへの転換」と「地域に根付いたブランドの新たな獲得」を推進に通じます。

 そうです。例えばアメリカなら成分や開発ストーリー、モニタリングなどが必要です。スペックを重視する中国では効果効能を羅列した紹介が好まれるなど…。そのため、新戦略の一つとして今後は現地起点のモノ作りやマーケティングをきめ細かく行っていく予定です。まだ構想段階前ではありますが、海外展開を広げたいと思っているブランドでは海外での生産も検討の余地があると思います。

⎯⎯前期、タイ発ホリスティックウェルネスブランド「パンピューリ(PAÑPURI)」を展開するピューリ社を買収し、今期に入りインド発のスキンケアブランド「フォックステイル(foxtale)」を展開するフォックステイル社の株式を10%取得して戦略的提携契約を結びました。成長市場のASEANおよびインドで構成するグローバルサウス地域戦略に注力しています。

 グローバルサウスの市場を攻めるには日本式商品やメイド・イン・ジャパンだけでは戦えません。先ほども言いましたが、特性に合わせた訴求をしていくべきと考えています。今回買収に至った、パンピューリの売り上げ構成比はタイ国内が74%を占め、スパ事業が17%、中国が4%、欧州が1%、その他が4%となっています。ただ中国の富裕層にも非常に人気のあるブランドで、中国強化のためにもパンピューリが大きな役割を担うと思います。実は、「コーセーが中国撤退か」という風評があり誤解を解くために、現地ニュース媒体の取材も受けてしっかりと説明させてもらいました。苦戦している中国市場を諦めてグローバルサウスに重きを置くと思われがちですが、それは誤解だと断言します。中国は当社にとって最も重要な市場の一つです。

⎯⎯この先もM&Aは積極的に行いますか?

 今回、海外ブランドのM&Aは2014年のタルト以来10年ぶりでした。2~3年おきにM&Aを行っていればもっと当社の成長スピードも早かったのではと思わなくもないのですが…。高い品質はもちろん、当社との親和性を重視した結果で、価格面で折り合いがつかずなかなかご縁がなく、今に至りました。M&Aの第1の条件は規模感といえます。CEOがブランドに携わり、こだわりや思い、クリエイティビティに力を入れているのか。タルトやパンピューリ、フォックステイルはそれぞれが全く異なるブランドですが、共通のこだわりや思いは強く感じました。このほど発表した、ビューティコンソーシアム構想や持株会社体制に移行に関しては、それらのブランドが当社グループに加わりやすい体制を作るためでもあります。

⎯⎯発表した持ち株会社移行の狙いを教えてください。

 現状、国内での業績は良いが連結では利益が出にくいという点が挙げられます。理由の一つは、例えばコーセーとコスメポートなど、社内でのカニバリや無駄があることです。また、コスメデコルテと「アルビオン(ALBION)」も同じ百貨店や専門店で扱っていますが、各々独立して運営しています。もっと効率よく運用できるのではないかと考えています。特に人事や経理、システムなどが共通化できれば、効率良くシナジーが生まれて利益創出できるのではないでしょうか。

 加えて、近年は原材料や人件費、物流費、DX費用が高騰しています。特にDXは、一度仕組みを作ると常にアップデートをしなければならずランニングコストが掛かります。紙を使わないデジタルは、一度構築すれば、大きな投資が必要ないと考えていたのですが、実は逆です。デジタルの世界は日々進化していますし、常にアップデートが必要です。ここ数年、デジタル費用がものすごく膨らんでいるのが実際のところです。その点も国内グループ間で効率良く運用していきたいですね。国内では当社がこれまで築き上げてきた基盤と存在感の高さを生かして利益を創出し、それで得た利益をグローバル展開への投資にしていく流れです。

⎯⎯各ブランドの課題や戦略は?

 コスメデコルテは先述の通りですが、メイクやスキンケア、ベースメイクと、どのカテゴリーにおいてもヒット商品が生まれています。特に直近ではリップが好調で、消費者を飽きさせない話題も作られていると思います。そしてフレグランスのキモノシリーズも非常に好調です。当社は創業時から香りにこだわり、実は「香水のコーセー」と呼ばれていたほど。現在も新製品開発の時には、「香料決裁」があるくらい香りへの思いが強い。フレグランスは国内ではさらに伸びるカテゴリーであり、さらなるブランド価値向上にも期待できると思っています。

 中国の事業戦略として、コスメデコルテは百貨店を中心販路に高価格帯アイテムで、雪肌精は化粧品専門店を中心販路に中価格帯アイテムで勝負するといった、流通及び商品戦略を取っていきます。

⎯⎯雪肌精をもう少し詳しく教えてください。

 雪肌精は化粧水「薬用 雪肌精」を1985年に発売して以来、初のリニューアルを実施し、新たに「美白」と「肌あれ防止」のW効能を持つ成分を配合した「薬用雪肌精 ブライトニング エッセンス ローション」へと生まれ変わりました。2024年末には、世界で活躍するNumber_iの平野紫耀さん、神宮寺勇太さん、岸優太さんの3人を新グローバルブランドミューズに起用した影響も大きく、商品はもちろん、既存商品の売り上げも伸長し、若年層から年配層まで幅広い層を獲得できました。好調なブライトニングローションに次ぐ、スターアイテムとなる“カテゴリーナンバーワン戦略”の商品を作り、育てていくことが今後も重要ですね。

 そういった意味でも、5月にはナチュラル・クリーンビューティ市場に向けた新シリーズ「雪肌精 BLUE」をローンチします。「東洋発想」をベースに美しさの巡りに着目し、一人ひとりの肌質や体質にあったアプローチで肌・心・体のバランスを整えるサポートをするホリスティックケアとして開発しました。「禅」といった、和に親しみや価値を感じてくれている人が多いグローバルに向けたブランドとして育成していきます。

⎯⎯そのほか、“カテゴリナンバーワン戦略”を推進するブランドは?

 「メイク キープ」シリーズの仕上げ用ローション「メイク キープ ミスト EX +」が非常に好調でシリーズ累計1500万本を突破、シェアNo.1を獲得(インテージ SRI+ メイクアップフィクサー市場、2023年6月~2025年2月、金額シェア<メイクキープミストシリーズ>)しています。2024年11月は75.7%と過去最高のシェアを獲得(インテージ SRI+ メイクアップフィクサー市場、2019年6月~2024年11月、金額シェア<メイクキープミストシリーズ>)するほど人気です。こうした圧倒的な地位を確立する魅力あふれる商品を、今後も開発していきます。

⎯⎯最後に、今期の意気込みをお願いします。

 2026年1月のホールディングス化に向け、選択と集中を行い各事業の権限を明確にしていきます。そして、国内の売り上げ400億円を超えるコスメデコルテに次ぐ、第二のブランドの育成も課題です。雪肌精は100億円越えのブランドに成長し、今年20周年を迎える「ジルスチュアート(JILL STUART)」も100億円越えとなり、ブランドとしてのプレゼンスが発揮できます。そういったブランドを増やしていきたいですね。

2025年度連結業績予想
売上高:前期比4.1%増の3360億円
営業利益:同15.2%増の200億円
経常利益:同4.4%減の207億円
親会社株主に帰属する当期純利益:同83.7%増の138億円

photography: Masahiro Muramatsu, text: Wakana Nakade | interviewer: Akiko Fukuzaki(FASHIONSNAP)

最終更新日:

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