Image by: Ippei Saito
密着 2月12日:ショー本番
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【9:00】
ショーの舞台となる五反田TOCビルに各種スタッフたちが集合。機材の搬入が行われ、照明の設営が始まる。

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【9:23】
2トントラック4台分、ダンボール600箱の枯葉が運び込まれる。枯葉はいずれもKokiの実家がある山梨県の山から採集されたもの。秋口の発色が美しい時期に拾い集めた枯葉を、ドライフラワーを製造する家業の乾燥機で乾燥させ、色褪せないように保管していたという。

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【9:38】
エレベーターいっぱいの紙袋を引きずってコッキチームの第一陣が会場IN。袋の中にはショーの座席として使用するために制作したオリジナルクッションが320個。学生と共に手作りで制作した。

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【10:00】
600箱の枯葉の搬入が終わり、次々とダンボールが開封されていく。封を開けるとたちまち、会場は森の中と錯覚するような深い緑の香りに包まれた。枯葉は床に積み上げられ、少しずつ客席を作っていく。音響テストを始めるチーム、照明を組み立て続けるチーム、大量の枯葉を地面に敷き詰めていくチーム、大勢が駆け回りながら準備を進める。無機質でがらんどうだった空間は活気を帯び、枯葉の山は、次第に”小さな森”に近づいていく。刹那的に終わっていくファッションショーができるまでに、どれだけの人の手とこだわりが詰まっているのだろうか、思いを馳せずにはいられない。

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【12:28】
概ね敷き詰め終わった枯葉の上に、客席であるクッションが配置されていく。ランウェイの幅は異例の40cm。クッションは、ブラウンのコーデュロイにコッキの「K」の文字が施されている。ランウェイに立ってみると、客席から眺めている以上に狭く、客席は脚が触れそうなほど近い。しかしこの観客とモデルの距離の近さはKokiきっての希望だ。鑑賞者と被鑑賞者としての関係ではなく、空間全体が「コミュニティに見える」ようにしたい、という思いがそこにはあった。

カラーはグレー、ネイビー、カーキ、レッドの4色。
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【13:09】
控室にはヘアメイクの河村の姿があった。紆余曲折を経て、筒状に空洞が作られたレースを組み上げた造形にフリンジなどのパーツを載せた立体感のあるヘッドピースが完成していた。次第と控室にフィッター、キャスティング、演奏者たちが集まり始め間も無く皆が本格的に動き出す。

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【15:18】
微調整が重ねられた枯葉の山はより自然な稜線を描きリアリティを増していた。ランウェイから周辺一体に広がる森の風景を見渡すと、「ノスタルジック」の一言で片付けてしまうのはあまりにも惜しいほどの言い得ないに感情が押し寄せる。童心に返って枯葉の山に飛び込みたくなるようなふとした郷愁や心細さ、自然に対する恐怖と恍惚、そういったものに限りなく近い純粋な服。子どものような好奇心や、ファッションへのただひたむきな情熱で服を作り続けてきたコッキの、ピュアで生々しい衝動衝動がストイックな姿勢の下で形になる。コッキが追求する美しい景色に、そうしたものを重ねた。

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【15:26】
バックステージではスタイリングの仕上げに入る。コッキチームは前日からアドレナリンが出て眠れずに当日を迎えたという。ファーストルックのモデルは今回が初来日。やや緊張の面持ちだ。ヘッドピースの調整では、パーツをカットしたり、取り外したりと大胆な変更も続く。

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【17:31】
テクニカルリハーサルやウォーキングテストを終えて、リハーサルがはじまる。

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「白樺の木の森」をショー空間で表現するため、当初は木のオブジェを持ち込むアイデアもあったが、白樺の木に見立てた棒状のライトを空間内に林立させるという演出に変化した。刺繍やアメリカンキルトといったクラフトワークが印象的なコッキは、表面的なエッセンスを抽出すると“牧歌的”なテイストに傾きすぎる。しかし、本質はものづくりに対する真摯な姿勢とユーモア。空間やライトで無機質さ、工業的な冷たさを加えることで人間味や温もりを際立たせる。

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演奏隊もコッキの衣装を着用。レースのマスクをかぶっている。
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【19:00】
ドアオープン。電気が消えた会場を誘導のかすかな光を頼りに恐る恐る歩く。暗い中で体育座りをして見回す周囲のクッションは岩肌のシルエットのようにも見える。席に案内され、柔らかい枯葉の上にはじめて足を踏み入れると、想像以上に柔らかく、踏み荒らされていない美しい山に入り込んだようである。踏んだ時のカサカサという音、踏んだことでいっそう香り立つ枯葉。クッションに腰を下ろすととても柔らかかった。

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【20:10】
ショーは40分押しでスタートした。会場には、思い思いにコッキの服を装うゲストが集まり、業界を代表する錚々たるメンバーも集結していた。

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【20:25】
無事ショーが終わりフィナーレを終えた客席では拍手喝采が起き、バックステージでも拍手が起こっていた。スリリングであり、他で体験することのないランウェイだったからこそ、バックステージに返ってきたモデルたちには安堵の表情が見える。
ショーが終わってからも森の中は熱気を帯びていた。観客たちはコッキからの贈り物となったクッションを大切に抱えながら、余韻に浸り感想を語り合う。各々が各々の想いや湧き上がる感情を噛み締めながら、名残惜しそうに帰路についていった。バックステージには大仕事を終え一息つくKokiの姿があった。
顔を明かさない、謎に包まれたコッキチーム。余計な“言葉”や“イメージ”を介さず、ただ純粋に「服が好き」という想いと情熱が純度を保ったまま、プロフェッショナリズムを貫き通して服になる。彼らのクリエイションが胸を打つのは、創る者だけでなく着る者にとっても「服が好き」という初期衝動が尊いものだということを思い出させるからかもしれない。

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