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ケンドリック・ラマーの押さえておくべき功績【連載:いまさら聞けないあのアーティストについて】

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ケンドリック・ラマーの押さえておくべき功績【連載:いまさら聞けないあのアーティストについて】

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 全く異なるジャンルでありながら、古くから蜜月関係にあるファッションと音楽。ここ十数年でその結び付きはさらに強くなり、今やファッションメディアでなにがしのアーティスト名を見ない日は無いと言ってもいいほどである。だがアーティスト名は目にするものの、彼/彼女らがファッションシーンへと参画した経緯や与える影響力、そして何よりも楽曲に馴染みが薄く、有耶無耶の知識のまま名前だけを認知している人も少なくないだろう。

 そこで本連載【いまさら聞けないあのアーティストについて】では、毎回1組のアーティストをピックアップし、押さえておくべき音楽キャリアとファッションシーンでの実績を振り返り、最後に独断と偏見で「まずは聴いておくべき10曲」を紹介。第7回は、麻薬の売買やギャングなどに対して否定的な姿勢を貫き、第44代アメリカ合衆国大統領であるバラク・オバマ(Barack Obama)に"Breaking new ground(新境地を切り拓いたラッパー)"と言わしめたケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)についてをお届けする。(文:Internet BoyFriends)

■いまさら聞けないあのアーティストについて:連載ページ

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人間性と音楽性に大きな影響を与えた地元コンプトン

 まず初めに、"稀代のリリシスト"と称されるケンドリック・ラマーは、アメリカに住むアフリカン・アメリカンとしてのメッセージ性と社会性の高いリリカルなラップを特徴としており、それがダイレクトに支持につながっている節は大きい。このため、太平洋を挟んだ島国・日本に住む筆者が"代弁者"であるケンドリックの音楽性について語る場合、アルバムごとに1本の解説記事を書かなければいけないほどの内容になると同時に、残念ながら"日本人"として理解が追いつかない箇所も多々ある。このため、本稿では彼のパーソナルな面を中心にご紹介したい。

 ケンドリック・ラマーは1987年6月17日、アメリカ・カリフォルニア州コンプトン生まれ。もともと家族はシカゴに住んでいたが、元ギャングだった父親ケニー・ダックワース(Kenny Duckworth)の身を隠す先として移住したコンプトンでケンドリックが生まれ、ソウルシンガーのエディ・ケンドリックス(Eddie Kendricks)から命名。しかし、コンプトンという地域は両親が揃っていることが珍しいほど殺人事件の発生率が高く、ケンドリックも友人や親戚の死を目の当たりにすることがあったほど劣悪な環境だった。現に、ケンドリックが所属していた音楽レーベル「TDE(Top Dawg Entertainment)」のCEOであるアンソニー・ティフィス(Anthony Tiffith)は、ケンドリックの父親ケニーが働いていたケンタッキーフライドチキンに強盗に入ったことがあるといい、このような生死と隣り合わせの生活が、ケンドリックの人間性と音楽性に大きな影響を与えている。「みんなにゴミだと言われるような環境で、ひどいバースを書き、ひどいリリックを書いたもんだ。そのおかげで批判にも耐えられる精神を育てられた」。

 また、息子にエディ・ケンドリックスから名を与えたことでも分かるように両親は音楽への造詣が深く、ある日、父親が街を歩いていると偶然2パック(2pac)とドクター・ドレ(Dr.Dre)が楽曲「California Love」のミュージックビデオを撮影している現場に鉢合わせ、急いで自宅に帰り当時8歳のケンドリックを連れて一部始終を見届けたという。この貴重な体験は、彼がラッパーを志すきっかけのひとつとなった。

エミネムに憧れ、高校生でラップをスタート

 2012年にリリースした2ndアルバムのタイトルが「good kid, m.A.A.d city(狂った街の優等生)」であるように、幼馴染やクラスメイトがギャングの道を選ぶ中、ケンドリックは優等生として詩を書き、キング牧師やマルコム・X(Malcolm X)を尊敬していたそうだ。そんなケンドリックがケンドリックになる前の少年時代は、父親ケニーが自宅で流していたことからプリンス(Prince)やアイズレー・ブラザーズ(The Isley Brothers)などに慣れ親しみ、幅広い感情の引き出し方などを学ぶ一方、故DMXのデビュー作「It’s Dark and Hell Is Hot」でラップの魅力を知り、地元を代表するジャンルであるギャングスタ・ラップなども聴くように。だが、最も影響を受けた人物にはエミネム(Eminem)の名前を挙げており、特にエミネムのメジャー2作目のアルバム「The Marshall Mathers LP」は「"ワードのビートへの乗せ方"に衝撃を受けた人生を変えた1枚」とコメントし、彼を史上最高のリリシストと絶賛している。

 ここでひとつ余談を。データアナリストのマット・ダニエルズ(Matt Daniels)は2019年、リリックに登場するワード数を基にした"最もボキャブラリーが豊富ラッパー"というランキングを発表したのだが、なんとケンドリックもエミネムも上位50位にすらランクインしていないのだ。他の音楽ジャンルよりもリリックが重視されがちなヒップホップにおいて、引き出しの多さが直列的に魅力につながるわけではないことを示す興味深い結果だろう。なお、1位はニューヨークが生んだ異才ラッパーのエイソップ・ロック(Aesop Rock)で、ケンドリックの2倍近いワード数に及んでいる。

 家族や土地柄の影響から早い段階でヒップホップに触れていたケンドリックだが、実際にラップを始めたのは意外にも遅く高校に入ってから。当時は本名ではなく、スラングで"OK、完全停止"を意味するK・ドット(K-Dot)という名で活動し、在学中の16歳で自身初のミックステープ「Youngest Head Nigga in Charge(Hub City Threat: Minor of the Year)」をリリース。すると、同作が地元を中心に人気となり、わずか17歳で音楽レーベル「TDE」との契約を勝ち取ったのだ。

 ちなみに、通っていたセンテニアル高校(Centennial High School)は、在学中に生徒が中退、逮捕、死亡するため毎年の卒業生数が全国平均を大きく下回るような学校だが、ケンドリックはオールAという優秀な成績を収め卒業。また、ドクター・ドレーやDJ・クイック(DJ Quik)らも同校の卒業生である。

"西海岸の新しい王様"の誕生

 K・ドットとして数枚の作品をリリース後、"本当の自分を知ってもらうため"に2010年から本名のケンドリック・ラマーに改名。これが功を奏したのか、2010年頃から早耳リスナーたちの間で話題となり、翌年には新人ラッパーの登竜門として知られるヒップホップ専門誌「XXL・マガジン(XXL Magazine)」の新人発掘企画"XXL・フレッシュマン・クラス(XXL Freshman Class)"の2011年版に選出され、勢いそのままに1stアルバム「Section.80」をリリースした。同作を聴いたドクター・ドレやスヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)は、ケンドリックを"New King of the West Coast(西海岸の新しい王様)"と絶賛するも、この頃のライブには観客が9人しかいなかったこともあったそうだ。

 しかし、2012年の2ndアルバム「good kid, m.A.A.d city」で、ケンドリックは新時代の旗手の地位を確固たるものに。先述したように、同作は犯罪都市コンプトン(mad city)で暮らす優等生(good kid)として育ったケンドリックの自伝的な作品となっており、多感な若者からタフな大人へと成長する彼の目線で人種差別、ギャング、貧困、女性問題などを取り上げている。惜しくも全米チャートで1位を獲得することはできなかったが(2位)、その内容からアメリカ社会そのものにも影響を与える傑作と称され、驚くべきことにリリースから約10年が経った2021年に"その年に最も売れたラップのレコード"となったほか、2022年5月には全米チャートのTop200に500週以上もランクインするという異常な記録を達成している。なお"m.A.A.d"は、コンプトンのほかに"My Angry Adolescence Divided(分断された怒りの青春)"と"My Angels on Angel Dust(エンジェルダストに乗った天使)"も意味し(※エンジェルダストはコカインの一種)、アートワークに写るのは幼少期のケンドリック、叔父、祖父だ。「アートワークは、俺の人生を物語っている。俺がコンプトンでどのように育てられて、無邪気な目で見てきたもの、そして、何が起こっているのか理解しようとしていたことを」。

 ここで再び余談を。ケンドリックの憧れの人物だったエミネムの耳にも「good kid, m.A.A.d city」の評価は入ってきたが、当時のエミネムはケンドリックの紡ぐリリックのレベルの高さからゴーストライターの存在を疑っていたという。そこで自らのスタジオに招待し、2人きりの空間でリリックを書かせたところ実力が本物であることを目の当たりにし、その時にコラボ楽曲「Love Game」が誕生。エミネムの8thアルバム「The Marshall Mathers LP 2」に収録されている。

ピューリッツァー賞も獲得する“稀代のリリシスト”に

 「good kid, m.A.A.d city」の大ヒットで"稀代のリリシスト"となったケンドリックだが、自惚れることなくすぐに次作へ着手。この時、あまりの制作意欲の高さから、カニエ・ウェスト(Kanye West)ことイェ(Ye)にツアーの前座を頼まれるも一度は断り、イェがスタジオ付きのツアーバスを用意して再オファーしてきたため渋々同行したという逸話を持っている。そして、「good kid, m.A.A.d city」から3年後の2015年に発表された「To Pimp a Butterfly」は、前作よりも彼の個人史に焦点を当てながらアフリカン・アメリカンの歴史も重ね合わせ、なおかつエンターテインメント性に重きを置いた作品やアーティストが増えるヒップホップシーンに改めてリリシズムの美学を知らしめる1枚として、見事全米1位を獲得。ここで同作の文化的・社会的意義を紐解くのはスペースの都合上省かせていただくが、1つだけ楽曲について触れるならば、アルバムのラストを飾る「Mortal Man」だろう。

 当初、「To Pimp a Butterfly」はアルバム名が「Tu Pimp a Caterpillar」(Tu.P.A.C = 2Pac)だったほど、今作でケンドリックは2パックへのリスペクトを表明しており、「Mortal Man」では1994年にスウェーデンのラジオ番組でインタビューに応える2パックの肉声を一部抜粋し、ケンドリックとの疑似インタビューを実現。「何があっても俺のファンでいてくれるか?」と何度も聴き手を伺いながら、名声や成功、レイシズム、ラップを続けることなどを質問し、最後には親友が書いた詩を読み聞かせるという内容になっている。同楽曲も含めた「To Pimp a Butterfly」の大作具合は、グラミー賞で最優秀ラップ・アルバム賞を受賞し、2017年にはヒップホップ文化の基礎を示す1枚としてハーバード大学の図書館に収蔵されたとお伝えすれば分かりやすいだろう。

 「To Pimp a Butterfly」が商業的にも批評的にも大成功を収めた2年後、4thアルバム「DAMN.」を発表。引き続きリリックに社会的・政治的なメッセージを織り込みながら、トラップをはじめとする現代風の要素を取り入れたことで、結果的にケンドリックの作品史上最も商業的に成功し、2作連続で全米1位とグラミー賞の最優秀ラップ・アルバム賞を獲得した。そして、「DAMN.」は前作と前々作よりも圧倒的なシンプルなアートワークと曲順でも話題に。アートワークは、「To Pimp A Butterfly」にも携わったグラフィックデザイナーが手掛けており、いわく"人々をムカつかせて議論を巻き起こす"ものを目指したそうで、ケンドリックの母親がつい「アートワークがストレスを抱えているよう」と連絡してしまうなど、彼の目論見通りとなった。曲順は、リリース後すぐにファンの間で"最後の曲から逆再生していくと、もうひとつの物語が出現する"という噂が囁かれてたが、のちにケンドリック本人が計画的なものであることを認め、コレクターズエディションが公式にリリースされている。

 また、"ヒップホップ独自の言葉使いにより真実が描かれ、リズミックでダイナミズムに溢れた曲で統合されていて、現代を生きるアフリカン・アメリカンの人生の複雑さを捉えながらも、文芸的小品として影響を与えている"と、ポピュラー音楽史上初めてピューリッツァー賞の音楽部門を受賞したことも忘れてはいけないトピックだ。

アフリカン・アメリカンの代弁者としての存在

 「DAMN.」以降、アフリカン・アメリカンの代弁者であるケンドリックの影響力はより強まったのだが、その最たる例が映画「ブラックパンサー(Black Panther)」のために2018年に制作されたアルバム「Black Panther: The Album」だ。監督を務めたライアン・クーグラー(Ryan Coogler)の直々のラブコールで実現した同作には、「TDE」のレーベルメイトであるシザ(SZA)やスクールボーイ・Q(ScHoolboy Q)らも参加。使命感や孤独感を抱える主人公ティ・チャラの心境をケンドリックの立場で巧みに昇華しながら、サウンドトラックという娯楽性も兼ね備え、彼のオリジナルアルバムと言っても過言ではない出来栄えに。なお、作中で使用されているのは全14曲中「All The Stars」「Opps」「Pray For Me」の3曲のみなので、映画「ブラックパンサー」を観たもののアルバムを未聴という方にはぜひ聴いていただきたい。

 その後、グラミー賞どころかピューリッツァー賞まで獲得したケンドリックはパンデミックもあり表舞台から姿を消していたが、2021年に5thアルバムのリリースをもって、16歳のK・ドット時代から17年間を共にした音楽レーベル「TDE」からの脱退を発表。そして、脱退発表から約1年後の2022年5月に5年ぶりとなる2枚組の5thアルバム「Mr.Moral & The Big Steppers」をリリースした。「DAMN.」からの5年間に、高校時代からの恋人ホイットニーとの子どもを授かったこともあり、今作では随所で思考と感情の変化が見受けられ、リリックでも音でも全体的に派手さを控えた内省的な仕上がり。特に、これまでアフリカン・アメリカンの代弁者としてシーンを牽引してきたが、幾度となく"普通の人間"であることが強調されており、この慎ましさには否定的な意見もあったが、見事3作連続となる全米首位を獲得。グラミー賞でも何らかの賞を受賞することは必至だろう。

アイコン化するリーダー

 (これでも)端的にケンドリックの音楽面について紹介したが、音楽を通じて彼が1人のラッパーという存在を超越したアフリカン・アメリカンのリーダーであることは分かっていただけたはずだ。そして、いつの時代でもリーダーはあらゆる面でアイコン化するもので、ケンドリックはファッション面でもフィーチャーされる存在に。このため数多くのブランドが彼をサポートしてきたが、「リーボック(REEBOK)」は比較的早い段階で「クラシックレザー(CLASSIC LEATHER)」などいくつものコラボスニーカーを製作している。また、「カルバン・クライン(Calvin Klein)」は今でこそキャンペーンヴィジュアルにラッパーを起用することが多いが、ケンドリックが登場した2016年時点ではまだ目新しかったため大きな話題となっていた。

 それからケンドリックも"あるある"の例に漏れず、2017年にリーボックから「ナイキ(NIKE)」へと移籍。実は、ケンドリックは大の「ナイキ コルテッツ(NIKE CORTEZ)」好きで、2013年にリリースしたビッグ・ショーン(Big Sean)とジェイ・エレクトロニカ(Jay Electronica)との楽曲「Control」内では、「And I ain’t rockin no more designer shit. White T’s and Nike Cortez, this is red Corvettes anonymous(俺はもうデザイナーモノなんか着ない。白Tとナイキのコルテッツ、それから赤のコルベットがあればいい)」とまでラップしている。このため、ナイキとのコラボスニーカーでは何度かコルテッツをベースモデルに採用しているのだが、第2弾モデルのアッパーには「DAMN.」を意味する中国語"该死的"があしらわれていた。これは、当時ケンドリックが映画「ラッシュアワー2(Rush Hour 2)」の登場人物でカンフー使いの黒人ケニーに心酔し、別人格"カンフー・ケニー"を内に宿していたためとのこと。

ナイキ コルテッツ ケニー

Image by: NIKE

 そして、ケンドリックは「TDE」からの脱退に先駆けてクリエイティブ・コレクティブ「pgLang」を結成しているのだが、2021年には「pgLang」がカルバン・クラインのショートフィルムを8本制作。さらに、「Mr.Moral & The Big Steppers」のリリースにあわせて「コンバース(CONVERSE)」とのコラボフットウェアも発表している。

 最後に、2022年のケンドリックにまつわるファッション的ニュースといえば、「ティファニー(Tiffany & Co.)」とのコラボレーションと、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の2023年春夏メンズコレクションで魅せたパフォーマンスだろう。まずは「ティファニー」から。彼は、6月に行われた音楽フェス「グラストンベリー・フェスティバル 2022(Glastonbury Festival 2022)」のステージで、「Mr.Moral & The Big Steppers」のアートワークでも被っている"いばらの冠"を着用していたのだが、これはティファニーがニューヨークにある工房で10カ月間にわたって4人の職人が制作したもの。8000粒以上のダイヤモンドを使用し、総カラット数は137カラット超に及ぶ豪華な逸品だが、"いばらの冠"はキリスト教において受難のたとえとして用いられていることから、芸術面での優れた能力、謙虚さ、そして忍耐力を表すメタファーとなっているそうだ。

 ルイ・ヴィトンでのパフォーマンスというのは、2023年春夏メンズコレクションがパリで発表された際、突如としてフロントロウに座っていたケンドリックがマイクを握り、ランウエイBGMとしてラップを生披露したのだ。これは、2021年11月に急逝したメンズ・アーティスティック・ディレクターの故ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)にトリビュートを捧げるもので、最新アルバム「Mr.Moral & The Big Steppers」から「N95」や「Savior」などをメドレーで披露。ラストは「Long live Virgil(ヴァージル万歳)」と彼を偲び、ショーは幕を閉じた。

まずは聴いておくべき10曲

1曲目:Money Trees

2ndアルバム「good kid, m.A.A.d city」(2012年)収録曲で、民家に強盗に入ったこと、幼馴染でギャングの娘であるシェレーンとセックスし仲間に話したこと、フリー・スタイルが唯一心を開放して現実を忘れることなど、地元コンプトンでの日々をラップしている。

2曲目:Love Game

エミネムの8thアルバム「The Marshall Mathers LP 2」(2013年)収録曲で、エミネムがケンドリックの実力を疑ったことから誕生した1曲。

3曲目:Really Be

YGのデビューアルバム「My Krazy Life」(2014年)収録曲で、ある年の夏に相次いで亡くなった3人の友人への追悼曲。酒やドラッグのリリックに混じり、コンプトンで暮らす若者としてのケンドリックの本音が綴られている。

4曲目:King Kunta

3rdアルバム「To Pimp a Butterfly」(2015年)収録曲で、社会現象を起こした1970年代のテレビドラマ「ルーツ(ROOTS)」の主人公で黒人奴隷のクンタ・キンテが着想源。“王”と“奴隷”という対極の地位にあるものを並べることで、ラップシーンにおける“王”となった“現在の自分”と“過去の自分”などの対比についてラップしている。

5曲目:Alight

3rdアルバム「To Pimp a Butterfly」(2015年)収録曲で、その社会性の高い内容から「We gon’ be alright(俺たちは大丈夫)」というリリックがブラック・ライブズ・マター(Black Lives Matter)ではしきりに叫ばれた。

6曲目:HUMBLE.

4thアルバム「DAMN.」(2017年)収録曲で、全米シングルチャートで初めて1位を獲得した記念すべき楽曲。マイク・ウィル(Mike Will)による特徴的なビートは、もともとグッチ・メイン(Gucci Mane)のために作られたものだった。

7曲目:FEEL.

4thアルバム「DAMN.」(2017年)収録曲で、ケンドリック本人が「人生のベストリリックが書けた」と太鼓判を押している楽曲。

8曲目:DUCKWORTH.

4thアルバム「DAMN.」(2017年)収録曲で、所属していた「TDE」のCEOであるアンソニー・ティフィスが、ケンドリックの父親が働いていたケンタッキーフライドチキンに強盗に入った実話についてラップしている。

9曲目:All The Stars

サウンドトラック「Black Panther: The Album」(2018年)収録曲で、レーベルメイトのシザとのコラボ楽曲。映画ではフィナーレに使用されており、ケンドリックの楽曲の中でもメロディが特にキャッチー。

10曲目:N95

5thアルバム「Mr.Moral & The Big Steppers」(2022年)収録曲で、パンデミック中に使用されたマスクの一種「N95」を、現代のアメリカ社会に存在する虚偽を説明するためのメタファーとしてタイトルに使用している。

■いまさら聞けないあのアーティストについて:連載ページ

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東京とロンドンを拠点に活動するエディターやライター、スタイリスト、フォトグラファー、グラフィックデザイナーが所属。

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