ビューティコミュニティサイト「Kao Beauty Brands Play Park」
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ーデジタルイノベーションとしては、12月にデジタルプラットフォーム「My Kao」を立ち上げました。
My Kaoは、日用品から化粧品まで幅広い商品を展開する花王が、グループ全体で生活者と直接つながる、双方向デジタルプラットフォームです。「知る」「体験する」「買う」「創る」の4つの機能からなり、これらを通じてOne-IDでお客さまとつながることで、お客さまを深く理解し、さまざまなUX(顧客体験)の提供につなげていきます。「買う」については、花王初のブランド横断EC「My Kao Mall」をオープンし、まずは化粧品の販売からスタートしています。
「My Kao」トップページより
ー化粧品ではモールでの販売のほか、具体的にはどういったことを始めるのでしょうか?
My Kao内に、美容に関する情報を総合的に発信するビューティコミュニティサイト「Kao Beauty Brands Play Park」を開設しました。ブランド横断コンテンツとブランドサイトで構成されます。ブランド横断コンテンツとしては、お客さまの相談に「1対1」でこたえるものや、お客さまが投稿された質問がサイト上に公開され、それに社内外の美容の専門家が答えるものなどがあります。また、お客さまの声をもとに、社内外の専門家とともにつくったスキンケアやメイクに関する美容情報を、動画を交えながら総合的に発信する共創型のコンテンツも用意。更にAIを活用し花王独自のモニタリング技術を搭載した肌測定サービスも、この春から展開予定です。この肌分析機能をオンライン上でどこまでパーソナライズ化できるか、どう魅力的なものにできるかが腕の見せ所になります。
ー新技術のイノベーションについてはいかがでしょうか?
先ほどもお話した通り、今春、Kao Beauty Brands Play Parkに花王独自AIにより肌を解析するサービスを開始予定です。スマートフォンの自撮りだけで多項目の指標のスコアを表示し、肌状態に合わせたアドバイスやおすすめの商品を提案できる仕組みになっています。また新たな肌解析サービスとして、皮脂の中にあるRNA(リボ核酸)を網羅的に分析する独自の解析技術“皮脂RNAモニタリング技術”を応用し、アイスタイルさんとの協業でRNA肌型から化粧品を効率的に選択できる仕組みを開発する取り組みを開始しています。さらに、RNAモニタリング技術を活用した肌解析サービスをプログラムに組み込んだ、サブスクリプションビューティプログラム「エスト スキンアスリートジム」を昨年よりスタートしました。まずは限定導入で約20人のお客さまが参加してくださっており、エビデンスに基づくパーソナルなカウンセリングに満足していただいています。今年は100人まで拡大し、2024年に本格稼働予定です。
自身の肌に合う化粧品と出合うことで顧客満足を高めるだけでなく、将来的には需給バランスのアンマッチなどによる商品廃棄を削減する一助にもなることを目指します。このように、他社との取り組みで当社の持つ技術を化粧品業界で活用していきたいですね。
前進するコーセーとのサステナビリティ協働
ー化粧品事業のサステナビリティ領域においては、コーセーと包括的に協働しています。
2022年2月からは、コーセーさんとのサステナビリティ領域における協働の第1弾として、当社が推進する「化粧品プラスチックボトル水平リサイクルへの取り組み」と、コーセーさんが協力されてきた「絵具などへの化粧品再生利用の取り組み」で協働を開始しました。トワニーの化粧水や乳液などのプラスチックボトル容器や、「メディア(media)」のファンデーションの中皿にケミカルリサイクルPETを採用しており、順次ほかのアイテムにも広げています。また、2022年2月から7月まで、トワニーを扱う関東エリアのイオン直営店舗やイオンモールで展開する「カラースタジオ」で使用済み化粧品ボトル容器を回収。現在は、回収したボトルを用いて化粧品の“ボトルからボトルへ”の水平リサイクル実現に向けた実証実験を進めています。
そのほか、コーセーさんが協力されてきたモーンガータ社さんとの、使われなくなったメイクアップ化粧品を再生利用し、絵具製造・販売する取り組みに当社も賛同。研究所での品質追求・品質管理の過程で最終的に商品にならなかった化粧品の提供を始めました。そのアップサイクル絵の具を活用し、カネボウが子ども向けのアートイベントも実施しています。11月からはメイク製品の色材を印刷物のインキの色材へと再利用できないか試作と検証を開始しています。
花王グループ 2022年サステナビリティアクションおよび、協働事業
・男性も取得必須の育休制度を新設
・カネボウが"アップサイクル絵具"を使用したイベント開催。廃棄予定のメイクアップ化粧品を再生利用
・ピンクリボン月間にグループでアクション
・"美容部員の最高峰"を選出するロープレ大会開催
・持続可能な社会の実現に貢献する取り組みを伝える企業広告を展開
・美容専門学校に「ルナソル」の販売終了商品などを提供
・ドコモと協業でパーソナライズしたヘルスケアソリューションの創造へ
・ミルボンと協業で美容室でのビューティヘルスケアサービス共同プロジェクト
ー今後、両社で協働できる取り組みの可能性は?
新しいことを幅広くやっていきたい思いはあります。例えば、廃棄のことを考えるとメイクのプロモーションのあり方も検討が必要になります。そこまでになると単独で取り組むよりは、他社と一緒に進めていく方がスケールメリットもあります。これまでは捨てるしかなかったものを、活用できるものへと変換していきたい。本来ならば廃棄にならない構造が望ましく、そのためには販売予測の精度を高めて余計な量を作らない、さらには完全受注生産がベストですよね。ただ、一方でそれでは商品がお客さまの手元に届くのにかなりの時間を要してしまうなど、難しい面もあります。全製品は難しいですが、一部の限られたメイクアイテムは受注生産も視野に入れ検討していきたいと思っています。
ールナソルで先行して行っている先行販売などがサステナビリティアクションにつながっていますね。
ルナソルでは一昨年前から年6回の発売に変更し、それぞれ限定品を中心とした2つのメイクアップ提案を行っています。この改革により、広告モデルが使用するメインカラーに全ての新製品が入ることで、売れ行きの偏りをなくし廃棄削減につなげています。またeコマースで先行販売し、人気アイテムを分析して本販売に向けた生産数を調整する取り組みも導入しており、3年前に比べると廃棄量を大幅に削減できています。今後も試行錯誤しながらできることはやっていきます。
ー直近の課題は?
将来的に日本の人口が減少していく可能性を考えたとき、G11を中心にいかに海外で支持されるブランドに育成できるかが課題になります。例えばグローバルの拠点や研究所をさらに増やすこと、そしてグローバル市場で戦える人財を育てていくことなどがあります。日本人以外にも魅力を感じてもらえるモノを作るには、異文化を理解する人財も必要になってきますね。
欧米を俯瞰する体制構築
ー2023年のイノベーションについて教えてください。
これまで同様に、“パーパスドリブンで強いブランド作り”は引き続き行っていきます。個々のブランドの強み、特徴がはっきりと伝わるようなブランディングが重要だと考えます。
海外では1月1日付で「モルトンブラウン(MOLTON BROWN)」英国本社のマーク・ジョンソン(Mark Johnson)社長をトップとする欧米化粧品ビジネス部を設立しました。現在、欧州ではセンサイ、モルトンブラウン、スック、「アスレティア(athletia)」「キュレル(Curel)」を展開していますが、それぞれブランドごとに浸透エリアが異なっている状況です。センサイが強いエリアにモルトンブラウンも提案する。また逆も然りで、お互いを補いながら相乗効果を発揮し欧米で存在感を高めていきます。
そのほか日本ではトワニーのフェムテック分野の強化、コーセーさんとのサステナビリティ分野での新たな協働のほか、エキップでもスックは今年、誕生20周年を迎えさまざまな企画を予定していますし、4年目を迎え売上も順調に伸びているアスレティアでも異業種とのコラボレーションなどで存在感を発揮していきます。
ーKao Beauty Brands Play Parkも活発になりますか?
もちろん、使いやすさも含めより充実させアップデートしていきます。描く未来は「ブランドとお客さまがダイレクトにつながること」。ブランドを通してコミュニケーションや絆を創造する場であることを目指しています。
ー最後に、新社長としてのミッションは?
これだけのブランドを持っている意味を考えないといけないと感じています。それぞれのブランドを磨き上げながら、日本人だけでなく世界中の人にとってもより満足度の高いブランドにしていかなければいけません。ブランドにはそれぞれ“命”があり、例えばですが大きな花壇でも花によって肥料の量や陽の当て方、水のやり方もそれぞれ異なります。一つひとつを大切に育てながら、全体の花の見え方の美しさやバランスも考え、1人でも多くの人に楽しんでもらいたい。そんな喜びや楽しさを与えられる事業体にしていきたいと思います。
(文:ライター 中出若菜、聞き手:福崎明子、平原麻菜実)
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