Image by: FASHIONSNAP(Koji Hirano)
2024年3月2日、「ジュンヤ ワタナベ(JUNYA WATANABE)」が2024年秋冬ウィメンズコレクションをパリにて発表した。コレクションノートにはこう綴られている。「PUBLIC ARTが日常にあるということーー造形物と服とのコントラストを美しく表現したい」。今シーズン、多くのデザイナーが口にした“日常”というキーワードが、渡辺淳弥の頭の中にもあったのは意外だった。では、実際のコレクションが日常に即した控えめで実用的な表現だったかというと、もちろんノーだ。
不気味なピアノの音色とともに登場したファーストルックは、ピラミッドのような四面体と三角形がボディに取り付けられていた。おそらく、それは“パブリックアート”の象徴で、その内側にモデルが入り込んでいるという構造だ(パブリックアートは多くの場合、触ったり中に入ったりできる彫刻である)。あるいは、人体はアートを支える幹とも言えるかもしれない。アウターの内側は、黒いタートルネックのニットウェアにワイドなスラックスというプレーンでアノニマスな装いになっているのは、何を意味しているのだろうか。
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“開かれたアート”として公共空間に存在するパブリックアートは、そのコンセプトにある種の暴力的側面を潜ませる。その多くは、町の風景の中では異形な存在であり、誰もがアクセスできるものである一方、不特定多数の人々が、それらに興味があろうとなかろうと、その存在を体験することを余儀なくされる。三角モチーフの後に登場した“棘”のスカルプチャーは幾分攻撃的に見え、人体に近づけない空間をつくり出す点でアンチソーシャル的だ。
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前半の19ルックはすべて黒で統一されていたが、ピアノの音色がエリック・サティの「Gymnopedies_No.1」に変わると一変した。チェスターコートやライダースジャケットといったベーシックな衣服はクリノリンの骨組みと融合し、その中にはレトロな花柄のドレスがコントラストを生み出すように挿入された。
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続いて、スポーツで使用されるプロテクターのようなもので立体造形されたコートや、パワーショルダーのテーラリング、鋲打ちのハーネスなども登場した。
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今回のコレクションには、刺、ジオメトリック、プロテクター、パワーショルダーと、近年の「ジュンヤ ワタナベ」のコレクションで見られたエレメントや興味が再応用がされていた点も指摘しておきたい。問いを投げかけることはアートの役割のひとつであり、「ジュンヤ ワタナベ」もまた、その造形の美しさとともに、明確な答えのない問いかけを続けている。
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