ダブレット 2022年春夏コレクション
Image by: FASHIONSNAP
ほのぼのとした農園風景を切り裂く爆音の中、「ダブレット(doublet)」が2022年春夏コレクションのショーを開催。パリ・メンズファッションウィークの公式日程に合わせ、ショー映像をライブで配信した。
■農園に響く爆音パンク
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場所は三鷹オーガニック農園。3匹のヤギが来場者を迎え、青い実をつけるぶどう棚の下がショー会場となった。収穫用のコンテナが座席代わりで、BGMとしてスイス民謡のヨーデルが流れている。
スタート時刻になるとサイバーなライトが光り、流れ出したのは激しいパンクロック。のどかな農園とのギャップが意表を突く演出の中、1970年代のロンドンパンクのアイコンであるシドとナンシーのような風貌のモデルらが登場した。
デザイナーの井野将之が今のファッションで感じているという「どんどんいい子になっている」ことへの違和感。環境に配慮した素材やサステナブルと謳われた服は本当に「カッコいい」のか。純粋にファッションの面白さを追求してきた井野が抱く矛盾や疑問が、反抗的なパンク精神となってコレクションに注がれた。環境に良い仕組みの中で作りながら、それらを壊す服。井野が言う「いい子なやり方で作る悪い服」は決してアイロニカルなだけはなく、ダブレットならではの「カッコよさ」があった。
■キノコレザーに毒キノコをプリント
ファーストルックのライダースベストは、よく見るとスタッズや装飾が全て刺繍で表現されている。その騙し絵のような刺繍の技術を用いたダメージレスのダメージジーンズも登場した。パンクだけではなく、中盤はヤンキー風やギャル風、そして顔に「へのへのもへじ」が書かれたかかしを模したシュールなスタイルが混ざり、笑いを誘う。
モヘア混のパンクニットは、工場で余った糸をつなぎ合わせて編まれたもの。全身でバナナのアートを模したニットは、廃棄されるバナナの茎から作られた糸で編まれている。ミルクプロテインから作られた糸はコーヒーで染めてカフェオレ色に。中には、廃棄される食材から抽出した染料を何種類も混ぜ、ドブのようになった色も。間伐材を利用した木糸で作られたコートには、きのこが生えたり鳥が顔を出している。
余剰を活用する手法で、在庫品や古着にも着目。「洋服の青山」のスーツを刻んで縫い合わせ、男女で着られるオーバーサイズの服にリメイクした。古着のジーンズを貼り合わせて圧縮した素材は、年輪のような表情を見せる。
デザインモチーフにも果物や野菜が多く用いられている。キウイやトマトのクロシェ編みや、「VEGETABLE OF THE ROOM」と書かれたプリントTシャツがユニーク。玉ねぎの外皮の成分を使ったナイロン製のボンバージャケットには玉ねぎをプリントした。
特に注目したいのはキノコ由来のレザーで作られたライダースジャケット。インドネシアのマイコテック社による最新技術を用いながら、背中に毒キノコで知られるテングダケをプリントしている。
■僕らのやり方で
コレクションにつけられたタイトルは「MY WAY」。流されやすい今この時代に、己の道を信じて進むということ。常に独自の道を歩んできたダブレットが示す「僕らのやり方」には、世に溢れる矛盾を吹き飛ばすようなエネルギーがあった。
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