球体関節人形作品集の決定版
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【タイトル】Hans Bellmer: Photographe
【著作】Hans Bellmer
【発行年】1983年
F:次は球体関節人形で名高い、ハンス・ベルメール(Hans Bellmer)の作品集です。
喜多:ベルメールを最初に日本で紹介したのは澁澤龍彦だったと思います。澁澤を通して球体関節人形を知った人形作家 四谷シモンが、それまでの人形制作を改めて多くの作品を世に残したことをきっかけに、日本のバブル期には多くの人形作家が誕生したそうです。ベルメール自身はドイツ出身のアーティストですが、ヨーロッパよりも日本の方が球体関節人形という分野が成り立っているなと感じます。
喜多:人形は生物ではないけど、人の想いや情というイメージが付けられやすく、結果的に恐怖の対象にもなりますよね。
F:あまりにも人間に似ているロボットは、少し怖いですもんね。
喜多:幻想系と球体関節人形が、なぜ高い親和性を持つのかを考えていくと「愛着」や「畏怖」に繋がっていくのは面白い。少年少女を模した人形が多いのも、永遠に歳を取らないという畏怖だし、歳を取り続ける人間が、変わらない美しさを保つ人形を愛でるというのは愛着。時間という現実と、美しくあり続けるという虚像が永遠に交わらないんですよね。自分のものだけど「物」のようには扱えない。人間と人形、階級的には「買ったもの」「買われたもの」という主従関係なのに「持ち主として守る立場」という風に考える人もいる。「そこにあっても自分の所有物には一生ならない」ということが球体関節人形に限らず、人形の持つ魅力だと思います。
F:お店でも、球体関節人形の展示が何回か開催されています。
喜多:宣伝も込めてツイートをするんですが、やはりレスポンスの中には「きもい」「怖い」などの言葉が並ぶんですよね。作家も僕も、わかっているので何も言わないんですが、その「怖さ」も球体関節人形の要素の一つだなと思います。「怖くないだろう!かわいいだろう!」というのも現実が見えていない気がしますし。
F:球体関節人形に限らず、様々な展覧会を何度も店内で開催しています。お店の名前は「古書 ドリス」ですが、展示の回数を考えたら「ブック&ギャラリー ドリス」でも良いのにな、と思ってしまいました。
喜多:展示って、普段は出会えない人もお店に足を運んでくれるし、やはり華やかなのでそっちの方向性に流れそうになった時もありました(笑)。でも、僕はあくまで本が好きだし、古書店で展示をしているということに意味を見出して声をかけてくれるアーティストの方もいるので、古本屋を辞めようとか、ギャラリーにしちゃおうと思ったことは一度もないです。
喜多:本がある場所って、自宅に近い気がするんですよね。家には新刊ばかりはないし、古本ばかりあるわけでもない。もっというと、自分の好きなフィギュアとか、作品とかを飾る人も多いと思います。だから、少し大きい自室のような本屋になれたらなとは考えていますね。
F:たしかに、古書 ドリスは、古本だけではなく新刊も取り扱っていますよね。
喜多:「自分の部屋みたいな場所で行われている展示」という意味で、新刊書店よりも古本屋の方が作品展示には向いている気がします。展示会の回数がめっきり減っているのであまり偉そうなことは言えないですが、「この場所を◯◯円でお貸出しをします」というやり方じゃなくて、古本も新刊も作品も同じ場所に存在し、相互作用があるようにしたい。お店全体を使ってもいいし、ある本棚だけにフォーカスしてもいい。お客さんはもちろん作家さんにも楽しんでもらいたい。それが、作品の良さを純粋に見せるホワイトキューブより、本屋さんで展示をすることの意義かな、と思っています。
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