まだまだある、革靴の名産地浅草のSDGsな取り組み
心地よい靴を買うための定規を提供する「マイサイズネット」
靴はサイズ選びが難しいアイテムである。そこで、全日本革靴工業協同組合連合会は、靴選びの悩みを解消し、楽しめる靴選びを提案する新しい革靴ショップ 「マイサイズネット(MY SIZE net)」の運営を開始した。
マイサイズネットのリアル店舗では、靴選びをサポートする研究から生まれた、足の計測値+店舗での試し履きの感覚値を含む「マイサイズ」を知ることができる。自分の足の寸法が分かるだけでなく、細かなサイズに分かれた基準靴(スケールパンプス)が用意され、実際に試着することで、本当に自分に合う靴の長さや形=「マイサイズ」を見つけられる仕組みだ。「マイサイズ」は店舗やネットで革靴を購入する際、商品が自分に合うかどうかを判断するブランドを超えた共通の定規になる。商品紹介サイト「マイサイズネット」には、同組合に加入する約40社200デザインの商品から、「マイサイズ」を入力して、ユーザー好みの革靴が手に入るようにした。デザインが気に入って買ったものの足に合わず、靴箱に眠っている靴を減らし、買ったのに履けないというストレスを減らせることは、無駄のない買い物にも繋がるだろう。
デジタル技術を用いた足の計測サービスは各社が行っているが、元田真吾専務理事はマイサイズのポイントを「ただ数値を計測するだけでなく、スケールパンプスに足入れして実際の履き心地を試すことができる点だ」と説明。お客様のフィットに関する好みは複雑で「ただジャストフィットだから良いとも限らない」と念を押す。
「パンプスは“履いてなんぼ”のアイテム。メガネを作る時も視力を測った後、実際にレンズをかけて見え方の好みを調べるはず。靴の場合はそれがなかった。計測サービスは靴選びの基準にはなるが、履き心地の好みは人それぞれ。最終的なフィットを決めるのはお客様なので、あくまで買うための定規を提供したい」。(元田真吾専務理事)。
ポップアップイベントに足を運ぶ客層は20~50代まで幅広い。「足元のカジュアル化は進んでいるものの、パンプスのニーズは依然としてあると感じている」と、今の若い世代に上質な革靴を買う文化を改めて発信したいと意気込みを語った。
■マイサイズネット
有楽町マルイ2階のコンセプトショップスでマイサイズネットのリアル店舗が、9月25日から期間限定でオープン。
公式サイト
難民を積極的に受け入れ日本の靴技術を継承する「パナマシューズ」
「パナマシューズ(Panama Shoes)」が運営するオリジナルブランド「ドミニクバー(Dominic3)」は、2012年から海外の難民を積極的に雇用し、職人として育成している。日本政府がSDGsの実施指針を2016年に打ち出したことを鑑みると「8:働きがいも経済成長も」「9:産業と技術革新の基盤を作ろう」「10:人や国の不平等をなくそう」など多くの目標にいち早く取り組んだ企業だと言えるだろう。
パナマシューズでは現場主義を貫き、熟練の職人がゼロから靴のノウハウを教育。渡邊綾子ディレクターは「彼らの母国は革靴よりもビーチサンダルの方が馴染みのある文化。特に革のことを教えるのは難しい」とした上で、「その時の気温や製造状況によって、同じ革でも状態は様々。職人はその細かな違いを見極め、一枚ずつ微妙な変化を汲み取り作業しなければならない。技術だけでなく、その機微にも気づいてもらうよう訓練している」と話した。
現在は2期生が工場で働いており、10月には新たにマレーシアの難民キャンプから4人の第三国転住難民を迎える。渡邊氏は「職人の高齢化問題と若手の人材不足に長く直面していた。私たちにとっては、ジャパンクオリティーをしっかりと理解してもらえれば、国籍は関係ない」と話す。
予想外の嬉しい効果もある。「彼らは家族を連れて日本に渡ってきている。来日した頃に小学生だった彼らの子供たちが今年高校を卒業し、弊社の職人になりたいと志願してくれた」。実際に、新入社員として入社し、現在は見習いとして働き始めているという。世代が繋がっていけば、革靴産業の未来も紡がれるはずだ。渡邊綾子ディレクターは「夏は社員や職人たちの家族も呼んで、会社の屋上で隅田川の花火大会を鑑賞するのが恒例。アットホームな浅草というエリアで、今後もこうした活動を続けていきたい」と締め括った。
■パナマシューズ
1958年の創業から半世紀以上に渡り積み重ね受け継がれてきた技術力と環境整備の整った現場でお客様に満足していただける靴づくりを実現。
公式サイト
photographer:MURAMATSU MASAHIRO
text:CHIKAKO ICHINOI
edit:ASUKA FURUKATA
■ファッションワールド東京・国際サステナブルファッションEXPO秋展
日本の皮革や皮革製品を集めた16社の展示ブースを出展。
会期:2023年10⽉10⽇(⽕)〜10月12日(⽊)
会場:東京ビッグサイト 東展示棟
所在地:東京都江東区有明3-11-1 ブースNo. A21-6, A22-6
公式サイト
■PITTI IMMAGINE UOMO
海外販路拡大を目指す国内の靴のブランドが出展する。
会期:2024年1月9日(火)〜1月12日(金)
会場:Fortezza da Basso V.le Filippo Strozzi, 1, 50129 Firenze FI, ITALY
出展ブランド:REGAL Shoe&co、H.KATSUKAWA、brightway、NUMERO UNO
公式サイト
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