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百貨店化粧品売り場のインバウンド需要の現在地は?

百貨店化粧品売り場のインバウンド需要の現在地は?

 新型コロナウイルス感染症拡大による制限が緩和され、街には多くの訪日外国人客があふれている。2019年にインバウンド需要の拡大を背景に、右肩上がりの成長を見せていた化粧品業界にも大きなダメージを与えたコロナがようやく落ち着き、化粧品カウンターにも外国人客が戻りつつある。そこで今回、百貨店大手4社(伊勢丹新宿店、阪急うめだ本店、高島屋大阪店、大丸東京店)にインバウンド需要についてアンケート。2019年には届かないものの、前年比売上では数倍の伸長となり、アイテムではスキンケアのニーズが相変わらず高い。一方で購買の仕方や客層は2019年とは大きく変化していると捉えているようだ。

 大手百貨店各社の化粧品売り場のインバウンド需要は、訪日外国人の増加に伴い、売り上げも拡大する。接客がままならないほど急成長していた2019年に比べると70〜80%の戻りのようだが、今年に入って急激に拡大。伊勢丹新宿店の2023年1〜4月のインバウンド売上は対前年同期比約890%となり、春になり、高島屋大阪店の3〜5月で同約265%。5月単月で、阪急うめだ本店が対前年同月比で約700%、大丸東京店は同約2223.6%と大幅に伸張している。

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好調アイテムはスキンケア、「資生堂」や「SK-II」などが人気

 こういった好調をけん引するのが国産のスキンケアアイテムだ。コロナ前から、国産のスキンケアブランドに人気は集中していたが、コロナ後もその傾向は続く。伊勢丹新宿店は化粧水からクリームまで幅広いカテゴリーで好調で、カラーメイクの戻りは遅いものの、ベースメイクも回復基調だという。大丸東京店ではスキンケアの高級ラインが人気で、洗顔・化粧水・美容液・乳液・クリームといった一式購入が目立つ。一方で阪急うめだ本店はスキンケアやメイクアップを抑え、フレグランスの売上が高まっているようだ。

 ブランドでは伊勢丹新宿店と大丸東京店で「クレ・ド・ポー ボーテ(Clé de Peau Beauté)」「SK-II」「資生堂」が、高島屋大阪店でも「SK-II」のスキンケアアイテムが上位となるなど、プレステージブランドが人気だ。一方でメイクアイテムでは、高島屋大阪店で「エレガンス(Elégance)」のフェイスパウダーやカラー下地といったベースメイク、大丸東京店の「スック(SUQQU)」や「シュウ ウエムラ(shu uemura )」が上がり、ブランドによってはニーズが拡大しているようだ。また大丸東京店では、売上が伸びているブランドとして、上記に加え「ティアラリーン バイオプログラミング(TIARALEEN Bioprogramming)」が挙がっていることは特徴だろう。

国別では、中国以外のアジア、アメリカなどからの来店が増加

 来店客の国別では、コロナ以前に顧客の大半を占めていた、中国の富裕層やバイヤー、ツーリストがコロナを機に減少したことは言うまでもない。2023年に入り、1月に中国政府がコロナ禍で禁止していた観光目的の海外出国を解禁したものの、コロナ前のような来日が増えていないのが現状だ。そんな中で、円安の影響もあり中国以外の各国からの来日が増加。百貨店にも、韓国や台湾、香港、タイ、シンガポールなどのアジア圏を中心に、アメリカやカナダなどからの来店が増えているという。

大量買いから、目当ての製品の購入に移行

 またインバウンド需要において、コロナ前とは買い方の変化を各百貨店が挙げる。「コロナ前は指名買いやまとめ買いが多かったが、現在は接客やカウンセリングを受けて自分に合うものを購入されたいお客さまが多い」(伊勢丹新宿店)、「接客を求め、自分にあったパーソナルな化粧品を選んでいる」(高島屋大阪店)、「大量購入ではなく、自分用で必要な分を買われる。多くても3個ぐらいで、以前のように仲間を連れてきて買うようなことは無くなった」(大丸東京店)という。接客や、パーソナルなアイテムを求める傾向はコロナ直前から増えていた印象だが、その印象を上回る大量購入があったことは否めず、コロナを経て今、より日本人と同様の接客を求め購入するケースが増えているのだろう。また、阪急うめだ本店のように「旅行ついでに限定品やお目当ての製品だけを購入される方が多い」という回答からも、大量購入が減ったことがうかがえる。

 さらに、「日本人の親切丁寧な接客が好評で、日本の百貨店で化粧品を購入することにステータスを感じている」(高島屋大阪店)という見解も。コロナ前の、大量購入の中国を中心としたインバウンド客用と、接客の充実を求める日本人客用とで、違うVMDのカウンターを設置していたブランドも増えていたことを考えると、今後はインバウンドと国内とを切り分けて考えなくて良くなるだろうか。

 一方でブランド側からは、「コロナ前の、あふれる来店客に接客もままならず、ただ販売するだけで終わっていたところから、コロナを機に一旦リセットできた。今後、インバウンドが増えていく中で、当時のような“おもてなし”ができない状況にはならないよう、さまざまに考えていかなければ」という声も多い。今後、増えると予想される百貨店化粧品売り場のインバウンド需要、その対策における売上の動向に注目したい。

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