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「シャネル N°5」新フィルムに込められたディレクターの思いとは? パリで単独インタビュー

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「シャネル N°5」新フィルムに込められたディレクターの思いとは? パリで単独インタビュー

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 「シャネル(CHANEL)」が、アイコンフレグランス「シャネル N°5」の新広告キャンペーンの“新たな顔”として、オーストラリア出身の俳優・映画プロデューサーのマーゴット・ロビー(Margot Robbie)を起用した。ルカ グァダニーノ監督が手がけ、マーゴットが出演する新広告キャンペーンフィルムが公開されるにあたり、ディレクションを担当した、グローバル クリエイティブ リソース ディレクターのトマ デュ=プレ=ドゥ=サン=モー氏にインタビュー。新フィルムの世界観、そのこだわり、そして「シャネル N°5」への自身の思いについて、語ってもらった。

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◾️トマ デュ=プレ=ドゥ=サン=モー(Thomas du Pré de Saint Maur)
シャネル フレグランス&ビューティ グローバル クリエイティブ リソース ディレクター フランスのエセック経済商科大学院大学を卒業後、名だたるフレグランスメゾンやファッションブランドでキャリアを積む。2008年、シャネルのフレグランス&ビューティのマーケティング ディレクターに就任。2014年から現職。文学や歴史の愛好家で、自身はシャネルのフレグランス「N°22」を愛用している。

既成概念としての〈女性らしさ〉に疑問を抱くすべての女性、ステレオタイプを超えた真実を求め、型にはまった答えは必要としない女性にシャネル N°5が差しだすのは、クリエイティビティと神秘に満ち、本当の自分に寄りそってくれる答え。解読するのは難しいけれど、誰もが感じられるもの。
答えは、N°5。

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マーゴット・ロビーを起用した話題のフィルム

⎯⎯新フィルムには、マーゴット・ロビーとジェイコブ・エロルディ(Jacob Elordi)が起用されています。製作背景やストーリーに込められたメッセージを教えてください。

 まず、フィルムに込めたメッセージの話をしましょうか。このフィルムは、自分の「欲望」や「願望」を表しています。フィルムの中で、2人がすれ違うシーンがあるのですが、主人公のマーゴットは、それを笑い飛ばし、海に飛び込み、光の中に浮かび上がります。彼女は、そのすれ違いを後悔したり落胆したりするのではなく、なにか決意を持ったように、自由に、ひとりで過ごすのです。彼のほうは、急いでいる感じで「彼女に会いたい」とナーバスになっているけれど、彼女は心の中で、うまくいくとわかっているんですね。

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 映画的な演出をしたフィルムの中では、2人がどんな関係なのか、カップルなのかそうじゃないかもわかりません。だけど、彼女は、ひとりでいる今この瞬間をいとおしみ、自分らしくいる自由を謳歌する。そんな静かなフェミニニティのメッセージが加えられています。

⎯⎯シャネル N°5の新たな顔になった、マーゴット ロビーの魅力は?

 私が思うに、マーゴット・ロビーは、このフィルムに込めたメッセージを体現するような人なのです。このフィルムに対しても、非常にナチュラルでリラックスして臨んでいるように見えました。予想できないことが起こっても、それを受け入れるオープン性を持っていると言いますか、彼女自身がそういう魅力を持つ人なのではないかと思います。『自分の人生を生きる』という強さがある。彼女自身がそういう人だったからこそ、こんな強いメッセージ性のあるフィルムができたのかもしれません。

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カリフォルニアの壮大なランドスケープを舞台に

⎯⎯新ムービーの舞台は、なぜカリフォルニアを選んだのでしょうか?

 N°5にとって、カリフォルニアでの撮影は、実は初めてではありません。80年代にも撮影したことがあります。今回は自分自身が、その時代の雰囲気を再現したかったというのがひとつ。また、カリフォルニアは、広大さを象徴しているかのような場所ですから、そこに人生がいかに広いかということを重ねる。そういった哲学を、ソフィスティケイトしながら、広大なランドスケープと重ねた部分がありますね。

⎯⎯新フィルムは異例の2分20秒と長い作品になりました。その理由を教えてください。

 過去には、もっと長い作品がありました。20年ほど前でしょうか、ニコール・キッドマンを起用したとき3分30秒くらいの作品を制作したことがありますね。ただ、フィルムは長ければ良いというものでもなく、意味なく長いだけのものというのは退屈だし、30秒でもストーリーを伝えることはできるのです。でも今回のテーマである欲望、期待感、すれ違い、芯のある女性の強さを語るためには、少し長いストーリーが必要だったということです。

⎯⎯この新フィルムに対する、トマさんのパッションを聞かせてください。

 フィルムに対する情熱は、フレグランスに対する私のパッション、私のコミットメントと同様です。しかし、今回、一番パッションがあるのは、ルカ・グァダニーノ(Luca Guadagnino)監督、そして、マーゴット・ロビーとジェイコブ・エロルディという素晴らしいスタッフとともに仕事ができたこと。これは特殊でラッキーなことです。世界一素晴らしいブランドだからこそ、最高の映画界のスタッフを集めることができるのです。また、先鋭的なクリエイターたちと非常に密な関係を築けていることは大きな喜びですね。まるで顕微鏡をのぞいているような、好奇心あふれる素晴らしい世界です。

<参考>
ルカ グァダニーノ監督:「君の名前で僕を呼んで」(2018)で脚光を浴びた、官能的な魅力を放つ映画作品の名匠。「See You at 5」は35mmフィルムで撮影され、肌の質感や、初めての出会いに向けた感情の高まり、ひとりの女性と彼女の欲望の対象とのあいだの〈震え〉をよりくっきりと映しだした。
ジェイコブ エロルディ(マーゴット ロビーの相手役):ドラマシリーズ「ユーフォリア/EUPHORIA」や、マーゴット ロビーがプロデュースしたスリラー映画「Saltburn」(2023)に出演。さらにソフィア コッポラ監督作「プリシラ」(2023)でエルヴィス プレスリー役、今後公開予定のギレルモ デル トロ監督作ではフランケンシュタインを演じる。

すべての女性に語りかける、シャネル N°5という存在

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⎯⎯トマさんにとって、シャネル N°5とはどんな存在ですか。

 そうですね、「私にとって」というパーソナルな答えではありませんが、一言で言うなら、聖なるもの。「聖なる、女性らしさのお守りのようなもの」。フレグランスをつけるという行為よりも、フレグランスというお守りを持っているということが、メタフィジックというか、ひとつのパワーになると思うのです。

 N°5は、世界一有名でアイコニックなフレグランス。ラグジュアリーアイテムでありながら、普遍的なものである。普遍的でありながら、非常に独自性のあるものでもある。より強く、より美しい人生のため、持っているだけで素晴らしい製品です。歴史やストーリーを持ち、新しい自分を見出したいと願う、すべての人に語りかけるものでしょうか。

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(編集:福崎明子)

EDITER / WRITER

岡本真実

MAMI OKAMOTO

東京生まれ。大学卒業後、Huge、装苑のエディターを経て渡仏。現在、パリを拠点にフリーランスの編集者として活動中。

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