Image by: CAMPER
スペインのシューズブランド「カンペール(CAMPER)」が好調だ。全世界での売り上げは、パンデミック前(2019年1月〜12月)と比較して2023年度(2023年1月〜12月)は約30%増加する見込みで、特に日本では10代〜20代の購入者が約40%増加し、日本・世界ともに1975年のブランド創設以来史上最高額の売り上げを記録しているという。好調の背景にあるのは、2019年にクリエイティブディレクターに起用されたアキレス・イオン・ガブリエル(Achilles lon Gabriel)の存在だ。「マルニ(MARNI)」でシューズのデザインヘッドを務めるなど様々なブランドでシューズデザイナーとして経験を積んできた同氏のクリエイションがブランドにもたらした功績を振り返りながら、支持される理由を3つのポイントでまとめた。
ユニークなデザイン×高機能
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アキレスの参画以降、シーズン毎に特徴的なデザインの新ラインを発表。その一つ一つが新たな顧客から支持され、勢いをつけてきた。特に人気が爆発したのは以下の3モデル。
2021年8月に発売された「コバラ(KOBARAH)」は、2016年の春夏シーズンに一度発表されたモデルを復刻。単一の原材料で生産することで原料廃棄ゼロを達成するという製造スタイルにアップデートした。ユニークなデザインでありながらサステナブルな側面も持つコバラは、瞬く間に広がりを見せ数日で完売した。
2022年2月に発売された、ギザギザなディテールが特徴的なローファー「テイラー(TAYLOR)」は、登場と共にSNSで話題化。その影響で「ウォールデン(WALDEN)」、「テルマ(THELMA)」などの他のローファーも認知が若い世代にも拡大し、20代の来客が急増したという。
2021年に発売した、岩場の地形に着想したソールが特徴的な「カースト(KARST)」や、2022年に登場したつま先に取り外し可能なラバーパーツが付属した「ジャンクション(JUNCTION)」といったユニセックスラインは、キャッチーなデザインながら履きやすいと男女ともに評判を集めている。どちらもまだリリースから日の浅いシリーズでありながら、多くのリピーターを擁するという。
「ブランドらしさ」のバランス
アキレスのクリエイティブが多くの人を惹きつける根本的な理由についてブランド担当者は「カンペールのアイデンティティーやヘリテージを尊重した上で、新しい形にしていく姿勢」と分析。前任のクリエイティブディレクターはイメージを刷新すべくそれまでのクリエイティブイメージやプロダクトの幾つかを封印して新しさを追求していたが、アキレスはブランドに参画以降、新モデルだけではなく、ブランドのDNAや初期のデザインも活かした復刻や進化版も多く発表。2016年に一度販売していたコバラをサステナブルな生産スタイルにアップデートし春夏のアイコンサンダルへと成長させたことをはじめ、1995年の発売以来1100万足以上を売り上げているカンペールのアイコンシューズのひとつ「ペロータス(PELOTAS)」シリーズや、カンペールが最初に発表したモデル「カマレオン(CAMALEON)」といった古くから親しまれているベーシックなモデルを元に新たなデザインを生み出した。新規のファンだけではなく「履きやすい靴」としてイメージを確立した初期のカンペールを履いていた30代後半以上の世代からも注目を集め、改めて人気が出ているという。
一方で、2015年に立ち上がったハイエンドライン「カンペールラボ(CAMPERLAB)」は、2019年にアキレスがクリエイティブディレクターに就任したことでリブランディング。カンペールとの差別化を図るため、既存商品は残さずロゴも変更してリスタートした。カンペールラボのアイテムは、カンペールのメインコレクションとは世界観を分け、現在は公式オンラインストアと新宿のフラッグシップストア、ドーバーストリートマーケットギンザや一部のセレクトショップのみで展開している。限定展開により「高機能でハイエンドなデザインスニーカー」としての認知を高感度層に対しても拡大した。このほか、カンペールのコラボレーションプロジェクト「カンペールトゥギャザー」では、韓国・ソウルを拠点とするファッションブランド「アーダーエラー(ADER ERROR)」やベルリン発ブランド「オットリンガー(OTTOLINGER)」といった気鋭ブランドとのコラボレーションでも話題を呼び、ファッション感度の高い新規顧客を獲得しているという。
いい意味で“定番”がない多様性
「カンペールといえばどういうシューズ?」と聞かれた際の返答が人によって全く異なるほど、カンペールのイメージにはいい意味で“定番”が固定化されてない。新作を発表するたびにアイテムごとに新規顧客を獲得できていることに加え、サンダル、ブーツ、スニーカー、ビジネスシューズなど幅広いカテゴリーを揃え、デザインのバリエーションを豊富にラインナップすることで、多様な需要に対応。以前まではコレクションにほとんど登場することがなかったローファーを新たに加えるなど、アキレスの参画によりその特徴はさらに顕著になったとブランド担当者は考える。年齢や性別による境界線を設けない展開により、顧客層はZ世代からシニアまで幅広く、履き心地の良さや個性的なデザインを気に入った顧客が型違いや色違いをリピート購入することも多いという。
カラフルなカラーリングもカンペールの特徴の一つ。クリエイティブの監修は全てアキレスが手掛けており、元々カンペールのDNAにある「プレイフル」の価値観をアキレスらしくデザインに落とし込む。デザインとヴィジュアルによって「人々に“ハッピー”を届けたい」と話すアキレス。「色の魔術師」とも言われているという同氏の色選びは大胆だが、「不思議とコーディネートに馴染むのが魅力」とブランド担当者は語る。カラフルな展開のイメージが浸透したことで、一般的に人気が高い黒に並び「せっかくカンペールを買うなら」とカラフルなカラーのモデルを手に取る顧客も多く、リピーターが2足目、3足目でカラフルなカラーのアイテムを買い足していくという動きも多く見られるようだ。
ブランド担当者が「非常に多様性のあるブランド」と話す通り、ブランドの文脈に則ったクリエイティブを多様な型、カラーで展開することで顧客の幅を拡大。幅広い世代が自分に似合うものを気に入って購入しやすい世代を問わないブランドとして着実に成長している。
◾️カンペールジャパン:Instagram
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