ラムダン・トゥアミ
Image by: FASHIONSNAP
美容業界で大成功――ビュリーは一冊の小説との出会いからスタート
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2005年、共通の弁護士に依頼していた年配の男性から、破産寸前の老舗ワックス(蝋)会社の再生事業を持ちかけられる。
「もともと利益なんて出ていない会社だったから、上手くいけば売上高の10%を貰えるし、失敗しても負担はナシという契約でした。それが『シールトゥルードン(CIRE TRUDON)』。世界で最も古い蝋製品のメーカーであり、300年以上の歴史がありました。そのヘリテージに着目してデザインを一新しキャンドルを発売したところ、事業はグローバルで大成功を収めるようになりました。天気の良い所に住みたいというヴィクトワールの願望から、家族でモロッコに引っ越してアフリカ料理のレストランを経営したり、世界中を転々としていました」
「シールトゥルードン」は現在も、日本の主要百貨店等で取り扱いがある。
シールトゥルードンの米国1号店出店のためにニューヨークに引っ越す直前、結婚10年目にして、ヴィクトワールの家族が所有する南仏の城で結婚式を挙げた。映画「ニューヨーク←→パリ大冒険」のシーンをオマージュしヘリコプターを使った壮大な演出は、「Wマガジン」でウェディング特集として掲載された。
「数年前まではホームレスだったのに、本当に人生がガラリと変わりました。2011年、シールトゥルードンを買収したいとオファーしましたが、答えはノー。保有していた株を売却して、シールトゥルードンの事業からは身を引きました」
シールトゥルードンを離れた矢先、奇しくも再び美容業界へと導く一冊の本に出会う。オノレ・ド・バルザック(Honoré de Balzac)による小説「セザール・ビロトー」だ。
「ストーリーに魅了されました!バルザックが歴史にインスピレーションを得ている事は知っていたのでリサーチをしてみると、主人公のモデルとなったのが、ジャン=ヴァンサン・ビュリーという実在した調香師だったことがわかったのです。彼の店はすでに失くなっていたのですが、ビュリーの名を冠した商品が一つだけ南米で販売されていることを発見し、権利を買い取り『ビュリー』を再生させることを決めたのです」
ビュリーの1号店は2014年にパリにオープン。パリらしさ・歴史・美が融合したビュリーの世界観は、商品からストアまで全てのデザインをラムダンが担当しており、独裁的とも言えるまで全てを自分でマネジメントすることで実現する徹底した世界観が人気を集めるようになる。
「デザインから生産まで、出来る限りの工程をアウトソーシングすることなく、インハウスで収めたい。数年前には、ビュリーの製品のラベルのプリントを手掛ける印刷会社を買収しました。ビュリーでの仕事を見てデザインの依頼をしてくる人も増えたので、2019年にはアートディレクション会社をスイスで立ち上げたのです」
1号店オープン時3人だったスタッフは、今では全世界で300人に。直営店は、世界で33店舗を展開。2017年11月にはLVMHラグジュアリー ベンチャーが発行済み株式の12%を取得するほど、ビューティー業界で注目を集める事業となった。
ビュリーが展開しているアイテムの一部。毎回こだわったクリエイティブも魅力だ。
Image by: OFFICINE UNIVERSELLE BULY
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