2024 Summer Collection
Image by: BOTTEGA VENETA
白のタンクトップとトロンプルイユデザインのデニム風パンツというスタイルで幕を開けた「イタリア」三部作を2023年ウィンターコレクションで締めくくり、「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」は新たな「オデッセイ(冒険・長旅)」に出る。2024年サマーコレクションで表現したのは、「コードのない衣服」。「自由と希望に満ちあふれた旅。かつての自分、なりたい自分、そして行きたい場所とのつながり。オデッセイには外的なものと、内的なものとがあり、また現実のものもあれば、想像のものもあります。それは変容と逃避の旅なのです」とクリエイティブ・ディレクターのマチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)が語るように、同氏の視座は衣服と世界の関係性、ひいては相反する作用を同時に繰り返しながら平衡状態を保つことである「動的平衡」に向けられた。
ダニエル・リー(Daniel Lee)が退任後、マチュー・ブレイジー体制となってスタートした「イタリア」三部作はイタリアの芸術家ウンベルト・ボッチョーニ(Umberto Boccioni)などから着想を得た2022年ウィンターコレクション、イタリアの建築家でありデザイナーであるガエタノ・ぺッシェ(Gaetano Pesce)によるセットデザインが印象的だった2023年サマーコレクション、そして「クラフト・イン・モーション(動きの中のクラフト)」を通じてイタリアの過去、現在、未来を融合させた2023年ウィンターコレクションで完結。1966年ヴィチェンツァで創業したメゾンのアイデンティティに向き合う時間ともなったイタリア旅を終え、次にブレイジーが向かうは広義の意味での"世界"だ。ショーのインビテーションで届いていたのも、腕時計の形をした羅針盤だった。
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2024年サマーコレクションは旅にはじまり、喜びから苦しみといった感情に至るまでのあらゆることの「移動」に主題を置く。人間の細胞は5年~7年の間に全て新しいものに生まれ変わるが、そこから導き出される"動的"であるという生命の本質に、動的平衡にブレイジーは触れようと、変容を遂げながら変幻自在に動き回ることの重要性を本コレクションで説いた。
Image by: BOTTEGA VENETA
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そうした想いを、プレイジーは表現としてどう服に落とし込んだのか。ショー会場のフロアに敷かれた、ペンギンや魚と共に描かれた大陸や海の上をモデルが闊歩する様はまさにそれを象徴するものであったが、デザインアイデアの核は様々な要素のブレンド。見たことありそうでない民族衣装風のフリンジドレスのルックや都会的なスーツスタイルとパレオのディテールで作るビーチスタイルを組み合わせモダナイズに昇華したルックなどがその最たる例だ。「動物、鉱物、植物といった原始的な世界と再びつながる必要があります。それは貝殻を拾い集めるようなもので、美しかったり、意味があったり、あるいはなかったりします。それは小さな奇跡や自然の驚異に宿る美しさと結びついているのです」と語るように、歴史学者の母とプリミティブアートの専門家の父を持つ同氏にとって、土着的なものに目を向けるのはある種自然なこと。サボテンやオウムガイをモチーフにしたドレス、花や花火、岩の造形など、プリミティブな自然の世界を取り込んだ境界のない装いと自由な造形は、なんとも形容し難い「コードのない衣服」として結実した。そして、要素と要素の「間」で起きる相互作用に生命の本質があるように、対極にあるものを組み合わせるという移動を軸にしたアプローチは、ボッテガ・ヴェネタの哲学である「クラフト・イン・モーション(動きの中のクラフト)」に帰結するのである。
Image by: BOTTEGA VENETA
アイコンであるイントレチャートは、ビッグサイズでバスケット型に編まれ、特に目を引いたフーラードバッグは、世界中の新間をレザーにプリントしてアップデート。またコレクションに華を添えたトロピカルリーフやラフィア、ロープのシューズやバッグは、いずれも精巧なレザーで製作。旅の小物の究極形として、アウトプットしたものだという。
Image by: BOTTEGA VENETA
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