メイクアップアーティスト吉川康雄氏に迫る
ファッションの完成に欠かせないビューティ。トータルの美しさを作り出すメイクアップアーティストとはどんな人たちなのか?業界でも一目置かれるメイクアップアーティストの、幼少期から現在までをひも解く連載「美を伝える人」。第2回は、ビューティクリエイターの吉川康雄氏にフォーカス。11年に渡りクリエイティブディレクターを務めたカネボウ「キッカ」や、自身のメイクブランド「アンミックス(UNMIX)」で、“カリスマ”的な人気を誇る吉川氏の、半生とは?幼少期からメイクアップの道を選んだ学生時代、単身で挑んだNY生活、そして「キッカ」への思い、「アンミックス」で伝えることとはーー。
■吉川康雄(よしかわ やすお)
1983年にメイクアップアーティストとして本格的に活動を開始。「流行通信」、「ハイファッション」などのファッション誌、ANA、SONY、PARCOなどの大手企業広告制作に参加。1995年に渡米。渡米半年後、「VOGUE」の撮影に当日の朝、急遽代役として呼ばれ、その後のキャリアを決定づけるファッションエディター、フォトグラファーと出会う。2008年から2019年3月までカネボウ化粧品の「キッカ(CHICCA)」ブランドクリエイターを務める。現在は、ニューヨークを拠点にファッション撮影はもちろん、広告、コレクション、セレブリティのポートレイトなど、世界のトップメイクアップアーティストとして活躍中。著書に「生まれつき美人に見せる」(ダイヤモンド社)、「褒められて嬉しくなる キレイの引き出し方」(宝島社)、「いくつになってもキレイ!になれる」(世界文化社)。
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ーまず最初に、幼少期、そして学生時代についてお聞きしたいのですが、吉川さんはどんなお子さんだったでしょうか?
新潟市内で生まれ育ちました。3人兄弟の末っ子で、兄と姉がいます。大人になってアメリカでは一般的なセラピー(日本でいう心理カウンセリング)を受けて気づいたことですが、当時は末っ子としてコンプレックスも抱いていたのでは、と思います。末っ子なので自由にさせてもらえた反面、重要視されていない感じもしていたような…。なので少し繊細だった部分はあったと思います。
ブルックリン在住の吉川氏にZoomでインタビュー
ー小さい頃から美や芸術に触れて育ったのでしょうか?
ごく普通のサラリーマンの家庭だったので、芸術に触れることも特にありませんでした。見た目は少し女の子っぽい外見でしたが、控えめでもなく、喧嘩もすることなく、普通の明るい男の子でしたね。
ー中学、高校時代はどのようなことに興味関心があったのでしょうか。
物事に入り込む性格だったので、一時期は勉強がゲームのように楽しくなって、夢中になりました。結果、いわゆる進学校の高校に入学したのですが、わりと自由な学校だったので勉強をする人もいれば全くしない人もいて。そこで自分は実は勉強がそこまで好きじゃない、ということに気づいてしまったんです(笑)。勉強をしてもあまり意味がないと思い始め、ある日突然勉強をしなくなりましたね。
ーそうなんですね。もったいないようにも思いますが(笑)。そこからメイクの世界へ?
いえ、そこから勉強の代わりに次第に興味を持ったのが、音楽だったんですよね。バンドを組んで夢中になりました。
ーどんな音楽が好きだったのですか?
1970年代の始めごろ、時代的にもロックは音楽じゃないって思われていたころでしたが、当時聞いたレッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)やジミー・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)に夢中になりました。彼らの音楽はそれまで聞いたことのないもので、「これは一体なんなんだ?!」と感動して。当時はお金もなかったけど、あまりにも新鮮で、貯金してはレコードを買い、同じレコードを何十回も聴き続けました。それで高校生のころはバンドを組んで、その活動に明け暮れて…。
ーほかに好きなアーティストはいましたか?
あとはデヴィッド・ボーイ(David Bowie)。最初は、その煌びやかなルックが僕のロックのイメージと重ならず全然興味なかったんだけど、「この人の音楽、スゴイ!」と気づいてからは、毎日がデビッド・ボーイで。毎朝、毎晩、寝る時もヘッドフォンで聴きながら寝てたんだよね。当時は英語が全然わからなかったから、歌詞の内容は聞かず、音楽だけを聞く感じ。そんな聞き方は今に至るまでずっと同じなので、アメリカで育った娘からは時々、「この歌詞、ダサいよ」って言われたりするんだけど(笑)。
ー高校卒業当時、将来は音楽で!と思っていたのでしょうか?
最初はそうでしたね。バンドに明け暮れた高校生活だったから、卒業もギリギリだったんだけど。親に「音楽で上京します」と言えなかった。だからとにかく試験がなくて入れる学校で選んだのが、美容学校だったんだよね。それで一緒にバンドを組んでいたメンバーの1人と上京することにしたんです。
(文 エディター・ライター北坂映梨、聞き手 福崎明子)
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