HIROMIさん(左)とビームスクリエイティブの堀麻衣子さん
Image by: FASHIONSNAP
「ビームス(BEAMS)」が、ビューティWebメディア「BEAMS BEAUTY(ビームス ビューティ)」を昨年秋に立ち上げた。ビューティアイテムの販売にいよいよ乗り出したのかと思ったが、ショップスタッフのおすすめアイテムの紹介やビューティ業界の重鎮インタビュー、工場見学といったコンテンツが並び、小売要素が全くない…。Webメディアとしての「ビームス ビューティ」。立ち上げメンバーのビームスクリエイティブ・堀麻衣子さんとディレクターとして参画するHIROMIさんに、その真意を聞いた。
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ー「ビームス ビューティ」の立ち上げ経緯を教えてください。
堀麻衣子(以下、堀):今の時代、お洋服の楽しみ方は、誰かのためではなく、自分のためというのが強くなってきていると思うんです。自信を持てるとか、きれいでいたいとか、そういったことのためにお洋服を買う人が、自分も含めて増えていると思います。それは美容やウエルネスも同じで、さらにその感覚はファッションとビューティを切り離して考えることはできないのでは。そう思っているビームスのスタッフがものすごく多くて、「お洋服を楽しみたいから、コスメも楽しむ」「年を重ねると、元の素肌がきれいであることが美しいと思うようになってスキンケアがんばっている」と言った声が上がりました。スタッフ同士の情報交換も多くなってきて、こういう興味関心をビームスから発信しても楽しいよね、ということで立ち上げました。
ー商品起点ではなく、興味関心を起点とするということですね。
堀:はい。ファッションを楽しむからこそ、美容・ウエルネスを楽しんでいるというスタッフからの起点が大きかったと思います。
“武器”はビームス スタッフのフィルター
ーこれまでショップでビューティアイテムを取り扱っていたり、確か10年ぐらい前に、御社がビューティ企業とECを立ち上げたりしていたと思いますが、なぜ今、メディアだったのでしょうか?
堀:コロナウィルスの感染拡大は大きかったかもしれません。より自分と向き合うようになって、スキンケアを中心に化粧品にお金を掛ける人が増えたとも聞きます。美容誌などで情報収集するのですが、プロの方の意見もすごく参考になる一方で、もっと身近な意見も聞いてみたい。またクチコミサイトだと、自分が欲しい情報を探し出すのに時間が掛かるというか…。もう少し、自分に近いところで自分ごと化できる美容の記事がまとまっていたらいいなと思ったんです。その中で、ビームスとしてやる意味は?となった時に、ビームスの“武器”でもある、スタッフというフィルターから発信することで、差別化した情報をお伝えできるのではないか、と考えました。
ーアイテムを紹介するだけだと、PRになってしまうということですか?
堀:そうなんです。まずは自分たち、スタッフの興味関心からスタートして取材して記事化することで、「ビームスのビューティメディアは面白いことやってるな」ということから認知を広げていこうと。
普通は逆だと思うんです。モノを作ったり扱ったりして、そのモノをPRすることが正しいやり方かと。でも自分たちでビューティアイテムを開発をするのはものすごく大変でしょうし、仕入れてキュレーションして発信するのでは、先ほど言ったように、ただのPRになります。ビームスには、ビューティに興味関心を持ったスタッフがたくさんいて、そういったスタッフが自分の言葉で伝えるメディアを確立した方が、この先、モノを作ったり、扱ったりしたときに説得力があるんじゃないか、ということですね。
ーなるほど、逆転の発想ですね。ではメディアとしてのコンテンツの構成は?
堀:4つのコンテンスで構成しています。
Hi! Professional!:教えて美のプロフェッショナル!
Try:気になるビューティコンテンツ、やってみた
My Best Beauty Gadget:みんなのビューティガジェット
Brad Tour:注目のビューティブランドのほんとのところ
できるだけ汎用性の高いモノを選んでいますが、切り口が違うだけで魅力が上がるものもあれば、失うものもあると思います。「Hi! Professional!」では、藤原美智子さんや早坂香須子さんといった業界のプロの方に、ビームスのスタッフが気になる美容のことをインタビューして掲載しています。「Try」では、「とにかく小顔になりたいのだ!」など、実際に体験してみる企画です。「My Best Beauty Gadget」はテーマに合わせてスタッフが使っているものを紹介するのですが、これはこれまで私たちがやってきた“井戸端”トークのアプトプットという感じでしょうか。「Brad Tour」はブランドの工場などを訪問して、ブランドの“裏側”を発信しています。
ー工場の裏側まで…、本格的ですね。全てビームスのスタッフからの発信というところがおもしろいと思います。
HIROMI:そこに嘘偽りが一切ない、このメディアの最大の武器ですね。1つのコラムに対して、例えばUVケアで25人のスタッフが、自分が使っている製品を発表しています。年代も20~40代とさまざまなんです。本当に同じブランドがたくさん出てくることだってあると思います。みんなこのブランド好きなんだ、流行ってるのか?ということが見えるのはおもしろいと思う。取り扱いがなければ、ある意味、“気を使った”発言をしなくて良いのは信ぴょう性が増しますよね。今は4つのコンテンツですが、そこに縛られ過ぎず、ビームスのスタッフの興味関心で広がっていけばいいし、進化させていけばいいと思っています。
逆の発想からコンテンツ作り
ーコンテンツの中身はどうやって決めているのでしょうか?
堀:スタッフの中から、美容部員さんのような、ビームス ビューティ部員を募集したんですが、男性も含め100人以上の応募がありました。その中から一期生を決めて、隔週でミーティングをしています。収集した気になるブランドや体験などから、次号のコンテンツテーマを考えます。HIROMIさんにも同席してもらい、今のトレンドからおもしろい切り口を考えて形にしていくっていう感じでしょうか。
HIROMI:堀さんが編集長の役割を担っていますが、そういった人たちと一緒に作り上げていくメディアですね。私がアドバイスするのは、例えば「春コスメ」をテーマにしようってなった時に、通常、ブランドからの発信だったらこういうことすると思う。でもビームスだったらどう?逆の発想から考えてって言ってますね。それで自分たちだけで考えるんじゃなくて、お店で聞いてきてって言ってるんですよ。20〜40代と幅広いスタッフがいる中で、お客さんもさまざまで。今、どういうのが気になるのかお客さんに聞いて、そこからコンテンツに落とし込めばいい。リアルボイスを基本に発信してるメディアって強いと思う。
ーそういう意味では、もっとディープな内容を発信する美容メディアが多い中で、ライトな記事の構成が中心なのはリアルな声を集めているからなんですね。
堀:そうですね。ターゲットがビームスのスタッフであり、お客さまでありってなったときに、プロフェッショナルではない私たちがディープなところを発信しても説得力はないと思うんです。美容に詳しい方が見て「え?」ってなるのは避けたいですし。ただ、どんなブランド、アイテムにしても、すっごく詳しいスタッフもいれば、そうでもないスタッフもいます。いろんなタイプのスタッフがいて、そういう人たちの興味関心ですよね。そこにはお客さまから聞いたリアルな声も入っている。その興味関心はイコール、自分たちのマーケットに近い人たちの興味関心ですよね。マーケットに近い距離でインタビューしているからこそ、引き出せて記事化できる。今後もいわゆるディープなメディアにはならないと思いますが、でもその近い距離感で感じること、思いをしっかり発信しています。
HIROMI:ビューティが大好きな人は、どんどん深い情報をほしいと思うけど、もっとマスというか、ビームスで買い物をする人たちは、そこまで考えて買ってないと思う(笑)。洋服には興味あるけど、美容にはそこまで興味なかったけどちょっと気になるって人は多いと思って、そういった人がターゲットですね。美容感度高い人をターゲットにしても勝算はないですよね。
ー年齢的には?
堀:ビームスの客層と考えると、25歳以上で、30〜40代でしょうか。
ーちょうど肌や美容が気になるころですよね。
HIROMI:1万円前後ぐらいだったら使える層ですね。
ービームスは早くからスタッフが前に出て発信していて、ファンがいるスター販売員さんがたくさんいます。そういった人たちからビューティも発信されれば、ファンは参考にしますよね。
HIROMI:ここに参加するスタッフは基本、自分の主たる業務があって、だからかそんなに焦ってない感じがすばらしいなと思うんですよ。メディアだけ、一本化していくと、なんだかしんどいよね…って。ビューティは特に本業じゃないからこそ、フェアに本当に巷で流行っているモノを拾い上げていけるメディアになるならば、勝算はあるなと。
社内的なことをいえば今、インスタグラムなどSNSで個が発信する時代で、スタッフ自身がメディアの立ち上げに関わったり、自己発信に関わったりすることで、スタッフ自身の財産が増えていくと思うんです。知見だったり、フォロワーだったり。ビームスにはすでに個人アカウントで何万人もフォロワーがいる人もいますが、そういう人たちだけじゃなく、ビューティに参加することで、SNSのテクニックも向上するのではないかな。
ー勝算は、マネタイズも可能?
HIROMI:今後のことを考えたときに、私自身、ビューティ企業さんとの取り組みを多くさせていただいていて、企業としてマス向けに広告を打つやり方もあるけど、もうちょっとコアターゲットに絞り込んだリアルなサービスがあればと思っていたんです。ビームスのスタッフのフィルターを通した発信というのは、企業からのニーズがあると思う。クチコミはやっぱり強いですよね。企業のニーズというのは、一般消費者のニーズにもつながるし。ビジネス的にサステナブルだと思います。
ーその意味は今後、企業を巻き込んだ広告案件もあるということですか?
HIROMI:そういうこともしていきたいですね。ただ、基本はビームスのスタッフに刺さらないものは入れない。ある意味、ユーチューブのタイアップに近いんじゃないかな。ウケてるユーチューバーは「いや、正直なことしか言わないですからね」のスタンスですよね。それってすごく今の時代っぽくて、メディアもそうあるべきだと思うんです。だから、「嘘をつかないメディア」をタグラインに、ビームスらしいビューティメディアを一緒に考えて、作り上げていますね。
ーオリジナルブランドの開発も視野に入れていますか?
堀:このタグラインが、ほかの美容メディアさんとの違いですね。HIROMIさんもおっしゃったように、私たちはまずビームスのスタッフだったり、お客さまに響くものでなければ、そこから広がりはないと思います。前にも言いましたが、そういったメディアを確立することで、ビューティアイテムを扱ったり、さらにはモノ作りの可能性も出てくると思います。お客さまの声、スタッフの声から生まれたメディアとして確立すれば、メディアとしての説得力をベースに、モノを作ることもできると思う。それを売るのも、モノ作りに参加した全国のスタッフですから。接客の熱量も違ってくると思います。
HIROMI:これだけ市場に化粧品があふれていて、情報過多の中で、高品質や魅力的なパッケージは前提に、売れる商品って「誰がおすすめしてるか」だと思うんですよ。どんな風に売るかがポイント。スタッフが自分ごと化して接客、販売できると思うと、メディアの先のモノ作りも可能性は高まりますよね。
おまけ
〜堀さんお気に入りアイテム〜
公式サイト:ビームス ビューティ
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