
アリ・セス・コーエン
Image by: FASHIONSNAP

今年2月に西武渋谷店で開かれた写真展の模様
―アリさんがスナップの魅力としている「ストーリーを発信する」ことは、セルフィーでも実現できると考えますか?
ただ単に「スタイルを見せたい」ということであればアリだと思います。カメラで撮った写真よりもiPhoneで撮った写真の方が良いときもありますし(笑)。ただ、セルフィーの場合は自分がその瞬間をプロデュースすることになりますよね。他人に撮ってもらった時はその人の視点が入るので、そういう違いはあると思います。アーティストの自伝で例えれば、アーティスト自身が書いてしまうと「その人が何に影響を受けてきたのか」「どの時代に、どんな事象がどのように派生していったのか」というのを、距離を置いてみることはできないですよね。自分の作品が大きな文脈の中でどのように位置付けられているのかということは、自分自身ではわからないことの方が多いと思います。そこはやっぱり他人の視点が入って初めてわかる部分なので、完全なストーリーを綴るのであれば、両方の視点が必要なのかなとは思いますね。
―アリさんが考えるスナップ写真とセルフィーの違いとは?
フォーカスを当てる対象の違いでしょうね。スナップは他人にフォーカスを当てますが、セルフィーは自分です。「スナップを撮影する」ということは誰かの人生あるいは瞬間を切り取る作業でもあるので、スナップを通して「彼女たちの物語を綴る」ということだと思っています。
■スナップブログの未来
―アリさんが考える「スナップ写真の在り方」について教えて下さい。
やはり「被写体がいかに魅力的か」が重要だと思います。美しい写真が撮れるって確信が持てる被写体に出会えた時はすごくハッピーだし、場所とか文脈よりもその人自身の持つキャラクター性が大事です。言い換えれば、良いポートレートが僕にとっての最高のスナップで、理想の在り方ですね。ポートレートであることに加えて、メッセージ性があって、エモーショナルであって、見た方に楽しさでも悲しみでも何かしらの感情を与えることができるといいですよね。そして、年を重ねていくことに何か感じさせてくれるポートレートこそが、僕にとってのスナップの在り方です。

―今後のスナップブログについて教えてください。
ブログを運営することがゴールだったわけではないのですが、今の順調な状態を継続させるためにはフルタイムの仕事として今後も力を入れていくつもりです。他に手伝ってくれるスタッフさんも必要かなと考えたりもしています。ただ、この「Advanced Style」を含めて、僕が持っているブロジェクトはライフスタイル系に寄っているんですよね。今は「Audicus」という聴覚障害をお持ちの方の機器を作っている会社とコラボするプロジェクトを進行中で、写真家としてデザインなどに参加させてもらっています。ファッションだけではなくてシニアの方に関することは積極的にやっていきたいですし、写真がそういった仕事の一部になるのが望ましいですね。ブログを運営しながら、本を書いたり、トークショーをやったり、同時進行でいろんなことをやっていきたいです。絶対的に、ただスナップを撮り続けることだけではなく1つ以上のことはやらないといけないとは思います。
―スナップ活動は仕事の中心ではなくなるということでしょうか?
もちろんスナップを撮るのは大好きです。ただこれから先を考えると、ストリートスタイルのスナップのブログだけでやり続けるのは大変ですよね。ただ写真を撮ってすぐアップするよりも、もっとビデオやインタビューを取り入れるなどして、ライフスタイルを重視したものになっていけばいいかなと考えています。ウェブストアとかも良いかもしれません。すべて1人でできることではないのですが、ひとつのゴールではありますね。ブログでの広告収入も多少はありますが、メインの収入ではないんです。写真集も出していますし、写真家としてコミッションをたくさんやっています。でもスナップを撮っている時は、とても幸せです。
■アリ・セス・コーエン
2008年に写真活動をスタート。シニアの女性を被写体にしたストリートスナップが特徴で、2014年に日本国内で出版された写真集「Advanced Style」(大和書房)は発行部数4万部超えを記録した。2015年2月に写真展を西武渋谷店で開催。被写体となったマダムたちにフォーカスした映画「アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生」は5月29日からTOHOシネマズ シャンテ、TOHOシネマズ新宿ほかにて順次公開されている。
>>スナップブログ「Advanced Style」
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