今年のお買い物を振り返る「2023年ベストバイ」。2人目は、セレクトショップ「ロンハーマン(Ron Herman)」でウィメンズディレクターを務める根岸由香里さん。個人のインスタグラムに投稿しているスタイリングは多くのファンが注目。1児の母としての一面も持ち、ファッションを愉しみながら仕事と家庭を両立させたライフスタイルは20〜40代の女性のロールモデルにもなっています。そんな根岸さんに、2023年に買ってよかったモノ6点を聞きました。
目次
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COMME des GARÇONS 青山店リニューアル限定のチュールスカート
FASHIONSNAP(以下、F):まず1点目は「コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)」。学生時代からお好きなブランドだとお聞きしています。
根岸由香里(以下、根岸):初めて買ったのが10代で、いま40代の半ばに差し掛かったところですが、変わらずずっと大好きなブランド。こんなに長い間好きでいられるブランドって多くはないと思うんですけど、ギャルソンはその一つですね。
F:こちらのチュールスカートは、青山店が今年3月に24年ぶりに増床リニューアルした際に限定販売した商品だったそうですね。
根岸:青山店は学生時代から通っているので結構思い入れがあって。リニューアルで伺った時に、ちょっと遠くの方にこのチュールスカートが寝かせて置いてあったんですよ。遠目で見てもすごく膨らんでいるのがわかって、限定のスカートだと聞いてためしに穿いてみたら、想像していた以上にチュールの広がり方がめちゃくちゃドラマチックで。もともとこういったデザインが好きなんですけど、チュールでここまで広がるものは持っていなかったなと思って。着られるシーンが限られてきそうなのでデイリーユースなものではないけれど、仕事柄パーティーがあったり海外も行きますし......と思いつつ買ったんですけど、意外と日常で着ているという(笑)。
F:インスタグラムでもスタイリングを載せていましたが、とても素敵でした!
根岸:着てみて面白かったのが、これを穿いている日は本当にたくさんの人に声をかけられるんです。それも全然知らない方に。例えばおばあちゃまだったり、海外の方だったり、学生さんとかも。
F:注目を浴びちゃうんですね(笑)。
根岸:そうなんですよ(笑)。個人的にはお洋服って“自分の好き”が詰まっているものであり、自己表現のツールの一つだとも思っていて。だから、服を通して会話が弾むと、とても楽しい気分になります。もう一つ面白いところがあって、これ立つんですよ。すごくないですか?
F:本当ですね......チュールスカートが立った!(笑)
根岸:舞台衣装とかで使われるような生地なので、自立してしまうくらいのハリ感があるんですよ。
F:ファッション上級者でないと使いこなすのが難しそうなアイテムです。
根岸:結構着るのも大変で。ハリ感があってボリュームもあるので、公共の交通機関には正直乗りづらいという(笑)。でもこれを改めて買って着てみて気付いたことがあって。ファッションを仕事として何十年もやっていると昔の気持ちって忘れないつもりでいても忘れがちだと思うんですけど、「洋服ってやっぱり楽しいな」とか、人の心を惹きつける強い何かがファッションにはあるんだということを思い浮かばせてくれました。
F:原点に立ち返ることができた、素敵な出会いだったんですね。
根岸:はい。立っていますけど、まさにベストバイでした(笑)。
F:なんだかペットみたいで愛らしいです(笑)。ちなみにどんな風にスタイリングしていますか?
根岸:夏はシンプルな白いタンクトップに、足元は「ジャンヴィト ロッシ(Gianvito Rossi)」のプラットフォームシューズを合わせたり。春先もコンパクトなトップスと一緒に着ていましたね。ヴィンテージのTシャツとかも合わせていました。冬はどうしようかなと考えているところで、手編みの小さいケーブルニットや白いニットと合わせるのとかもいいなと、色々妄想しています。
F:ギャルソンでは普段、どういったものを買われるんですか?
根岸:レーベルで言うと「コム・デ・ギャルソン コムデギャルソン(Comme des Garçons Comme des Garçons)」が一番好きですが、コレクションラインや「ノワール ケイ ニノミヤ(noir kei ninomiya)」もよく見ています。他にはない“そこにしかない”みたいなものを買うことが多いかもしれません。
F:このスカートもまさにそうですね。着こなせるのも根岸さんくらいしかいないような気がします。
根岸:いやいや。でもなんかこう、チャレンジ精神をくれますよね。さっきの話と同じで、もう何十年もファッションを仕事としてやってきていると、あまり深く考えなくてもなんとなく正解が見えてしまう。このスカートは改めて、どう合わせようかな、どういうバランスだったら面白いかな、と真剣に考えたくなる。そこも原点に立ち返ることができたと言えますね。
Gesho 一点物のヴィンテージジャケット
Image by: FASHIONSNAP
根岸:実はこれ、最近買ったばかりのもので。友人である(ファッションディレクターの)長尾悦美ちゃんが立ち上げた「ザニーム(THENIME)」のお披露目の時に行って、一目惚れして買いました。「ボーディ(BODE)」のチームにいるペインティングアーティストさんがニューヨークを拠点に個人的に活動している「Gesho」というブランドで、アイテムはすべてそのアーティストさんがウィンテージのレザージャケットにハンドペイントを施した一点物なんです。
F:ファッションというより、もはやアート作品ですね。
根岸:ヴィンテージはもともと好きなんですけど、このレザージャケットってアートがなかったら、あまり見向きもされないタイプのものだと思うんですよ。でもアーティストの感性やアートが加わることで、全然違うものに生まれ変わって。そういうストーリー性があるものがすごく好きなんです。
F:ベースとなっているレザージャケットはどちらのブランドのものかわかりますか?
根岸:ブランドは特になさそうで。切り替えが三つ編みになっていたりするので、多分ウエスタン系で、アメリカ製なんじゃないかしら。
F:モチーフにテーマのようなものはあるんでしょうか?
根岸:どうなんでしょう。古いテレビや窓が描かれていたり、虎や鳥がいたり、シノワズリのような陶器もあったり......モチーフは様々ですが、きっと頭の中には何かあるんだろうなと思いつつ。
F:それを想起させるところも面白いですよね。一点物はよく買われるんですか?
根岸:そうですね。こういった手を加えたものも好きですし、いわゆるヴィンテージで、もともとは大量生産でも経年変化で一点物になったものも好きです。職業柄なのか、ワクワクしますね。物を作るのって本当にたくさんの人の手がかかって作られているじゃないですか。その商品と出会うまでに、いろんな人のいろんな思いが乗っていると思うと、商品の背景やストーリーみたいなものに、自分自身は多分惹かれているんだろうなと改めて思って。ヴィンテージとなるともはや誰がどこでどう着てたのかわからない。それが嫌な方もいるんと思うんですけど、私はそういったところにも惹かれるんですよね。
F:ウエスタンは今のムードだったりするんですか?
根岸:ずっと好きなテイストの一つではありますね。このジャケットに関しては、ウエスタンっぽさが少ないところもいいのかも。前を留めてシャツのように着るのもいいんじゃないかと考えています。
F:可愛いですね。シャツとして着るとまた印象が変わります。ちなみに単純な疑問なんですが、こういったアートが施されているものはどうやってお手入れされているんですか?
根岸:まず第一は気をつけて着ています(笑)。どうしてもという時は、専門の業者さんに相談します。このジャケットの場合はどうなるんだろう。とにかく気を付けて着たいと思います(笑)。
CANADA GOOSE ジャパンリミテッドのダウン
F:3点目は「カナダグース(CANADA GOOSE)」が今季発売したジャパンエクスクルーシブモデルのダウンですね。
根岸:これは発売を本当に待っていたんですよ。
F:このダウンを選ばれた理由は?
根岸:ギャルソンや「シモーン・ロシャ(Simone Rocha)」のようなモードなお洋服にも、デニムようなカジュアルな装いにも合って、なおかつ子どもと公園に行く時でも出張などのビジネスシーンでも、本当に何でも合うような黒いダウンをずっと探していたんです。昔買った別のブランドのものをずっと着ていたんですけど、そこからなかなか巡り合えていなくて。私がこれを見たのは半年〜1年前の展示会で、ついに“出会った!”と思いましたね(笑)。シルエットもディテールも質も、全部を超えてくる。ちょっと着てみますね。
Image by: FASHIONSNAP
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F:今日お召になっている服はちょうどシモーン・ロシャのブラックドレスですね。たしかにドレスにも合っています。ジャパンエクスクルーシブということで、日本人の体型に合うように設計されているんでしょうか。
根岸:そうだと聞いています。アウトドア系のブランドだと保温性重視なのでシルエットがウエストでシェイプされているものがすごく多いんです。でもこれは横からのシルエットが適度でいいんですよ。このままでもいいんですけど、例えばパリに行く時とかは、この上からベルトをして愉しむかもしれません。ダブルジップになっているところもポイントですし、素材のマットな感じもモードっぽさがあってまた良いんですよ。
Image by: FASHIONSNAP
F:アウトドア系ブランドだとリフレクターが入っていたり、ロゴが目立ちがちだったりしますが、このモデルはすべて削ぎ落とされていますね。
根岸:そうなんです。それに日常の動作のことも考えられているから、着脱もしやすくて本当に使いやすいんですよ。暑くなったらバックパックストラップを使うと、こんな感じでハンズフリーで持ち運びできるんです。
Image by: FASHIONSNAP
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F:たしかに便利そうです!
根岸:子どもを連れている時とかは最高ですよね。ファッションとしても可愛いかなと思っていますよ。ポケットの内側もフリースなので、手を入れるとやさしい気持ちになれます(笑)。入れてみてください。
F:......本当だ、やさしい気持ちになれました!(笑)
根岸:言わせたみたいになっちゃいましたけど(笑)。フードは取り外せるので、これはこれでスポーティさが取れて違うスタイルが楽しめると思います。あとは裾にドローコードも付いているので、冷たい空気が入らないようにもできますし。
F:本当に推しポイントが盛りだくさんですね。
根岸:シルエットはシンプルで色もブラックなんだけど古臭くもなく、長年探してきて自分のなかでのポイントを全てクリアした一着です。みなさんも買った方がいい!(笑)
F:(笑)。カナダグースの商品を買ったのは初めてですか?
根岸: 1着だけ、昨年に購入した「リフォメーション(Reformation)」とコラボレーションした花柄のダウンは持っています。そのダウンがちょっとファッションピースのようなデザインでショート丈なんですけど、とにかく軽くて、暖かくて。ブランド自体も掘り下げていくと信念が素晴らしいですし、ものづくりもハイレベルなのも知ってはいたんですけど、改めて良さを知って。
F:記念すべき2着目ですね。
根岸:来週、友人たちと久しぶりに大人だけの北海道旅行に行くので、その時に着る予定です。やっと着られるので楽しみです。
DIOR ドレス
F:次は「ディオール(DIOR)」ですね。
根岸:これは春先〜夏前に表参道店で買いました。
F:ディオールはもともとお好きですか?
根岸:大好きです。これは自分が年を重ねる中で、30代だったらおそらく選ばなかったんですけど、40代の半ばになってから、シンプルなんだけどエレガントで、オケージョンやお仕事の席でも着られる、TPOに合わせつつもモード色が強すぎない素敵なドレスを探していて見つけました。このネイビーという色もいいですし、何よりもこのシルエットが綺麗で。店頭でも「着た方が素敵だから試着を」ということで試着させていただいたのですが、動くと体の動作に少しだけ遅れて裾がついてくる。それもすごく優雅に揺れるんですね。ウールシルクという、少し重さがある生地が使われているのですが、それを引き立てるために裾部分にボーンのようなものを張り巡らせているんです。このハリと共にゆっくり裾がついてくる感じがすごくエレガントで気に入りました。ディオールの表参道店はお直しのアトリエを持っていらっしゃるので、サイズ感も見てくださいますし、そういうのも含めて、他とは違うような素晴らしい体験ができました。
F:いくつになっても着られそうなシルエットですね。
根岸:まさにそんな気持ちで買いました。このまま年を重ねて60代になっても着られそうだし、着ている自分がすごく想像できるなと。そんな買い物をしたいと思っていました。
F:ディオールではよくお買い物はされるんですか?
根岸:いや、たくさんお邪魔しには行っているんですけど(笑)。でもこのドレスは一つ一つを吟味しながらも出会えた一着です。
F:最終的には奮発されたんですね。
根岸:でも即決できなくて1回帰りました(笑)。
F:(笑)。
根岸:1回帰って考えた時に、何か自分を奮起させるようなモノを今年は買おうと思っていたんですよね。それで購入を決めました。
F:今年はなぜそういうモチベーションだったのでしょうか?
根岸:仕事も含めてネクストステージに向けて、自分の中で頑張りたいなと。仕事では今までとは違う方と商談する機会が増えましたし。あとは子どもがいま6歳なんですけど、だいぶ大きくなって、育児も少し楽になったんですね。で、なんとなく、産後に放っておいた体も体重も含めて、今一度自分を磨きたいなと思ってトレーニングを始めたりして、体が変わってきて、そうしたら買い物欲が出て......そういう2つの言い訳のもと、買いました(笑)。
F:(笑)。このドレスはすでに活躍していますか?
根岸:本当に気持ちを込めて買ったので、まだ2回くらいしか着られていなくて。寝かせちゃもったいないから、これからいっぱい着たいと思っています。
SAN MARE ディズニーコレクション
根岸:これは「サンメイア(SAN MARE)」にロンハーマンが別注したスペシャルコレクションです。ディズニーキャラクターがモチーフになったネックレスをつくっていただきました。
F:数々のアイテムをリアルバイしてきたという根岸さんですが、ベストバイとなったこちらのコレクションの魅力は?
根岸:まず作りがすごいんです。このフラットなものにエンボスで顔を表現するジュエリーは他にもあるにはあるんですが、線ではなく繊細な凹凸感で白雪姫や毒リンゴ、ミッキーやミニーもそうなんですけど全部表現されていて。サンメイアのジュエリーデザイナーによると、カメオを掘る職人さんだったり、歯の技工士さんだったり、通常ジュエリーの世界だとあんまりお願いしないような方もプロジェクトチームに加わっていただいているそうです。一つずつ型を掘っているのですごく手間がかかる上に、すべて18Kイエローゴールドで作られています。メッキ系とかではよくあるとは思うんですが、自分がつけるとしたらやっぱり本物がいい。大人の遊びですよね。 私自身はこの白雪姫と毒リンゴをセットでつけたいと思って買いました。
F:チャーム自体は大きい印象がありましたが、付けてみると馴染みますね。
根岸:おっしゃる通り大きいのですが、この凹凸感やダイヤモンドの入れ方、あとはやっぱり作りの良さから品が生まれているような気がします。セットでつけた時にバランスが良くなるように、シリーズとモチーフによってチェーンの長さが少し変わっているんですよ。
F:他のデザインではどういったものがあるんですか?
根岸:ミッキー、ミニー、オーロラ姫、リトルマーメイド、シンデレラのキャラクターたちですね。
F:白雪姫を選ばれた理由は?
根岸:白雪姫はディズニーの中でもたしか一番古い物語でしたよね。昔の原画もすごく可愛いですし、ファッションに落とし込んだ時にも、ちょっとレトロでヴィンテージ感があって。個人的に好きなこともあって、迷わずこれを選びました。
Image by: FASHIONSNAP
Image by: FASHIONSNAP
F:今日のシモーン・ロシャのドレスにはシースルーから覗かせるように敢えて内側に入れていましたね。
根岸:白いTシャツなどのシンプルなコーディネートの時は外に出すんですけど、今日のドレスはスパンコールでピカピカしているので、内側に入れてなんとなく透けさせてみました。
F:ジュエリーをコーディネートに取り入れるのも奥が深いですよね。
根岸:私もジュエリーって面白いなと思っていて。雰囲気を変えたいんだったら、お洋服を変えるのもいいんですけど、実はジュエリーを変えるとすごく雰囲気が変わるんです。洋服と比べて面積は小さいんですけど、ネックレスやピアス1つでテイストが変わりますし、その人のオーラや纏う空気感も大きく変わる。ジュエリーによってコーディネートの空気が変わるんだということを伝えたくて、ロンハーマンのジュエリーコーナーでは全身鏡を用意しています。
F:たしかにジュエリーを試着する時は手元だけ見てしまいがちですが、全体の印象も大きく変わりますよね。ちなみにこのディズニーコレクションは今も手に入るのでしょうか?
根岸:店舗やモチーフによっては完売をしているかもしれませんが、公式オンラインストアでも取り扱っているのでぜひ見てみてほしいですね。
L.L.Bean ヴィンテージバッグ&パリの蚤の市で買ったピンバッジ
F:最後はバッグとピンバッジ。ホリデー感がありますね。
根岸:バッグは「エルエルビーン(L.L.Bean)」のもので、「ベルベルジン(BerBerJin)」で買いました。1980年代のヴィンテージで、ホリデーシーズンにこういったデザインを出していたそうです。
F:根岸さんはエレガントなイメージがあったので、初めてお見かけした時にこういったカジュアルなバッグも使われるんだと正直、意外でした。
根岸:エレガントな服装も近年は多いんですけど、実はヴィンテージデニムにボロボロのスウェットを合わせて着たりもしているんですよ。
F:ピンバッジはどちらで購入されたんですか?
根岸:これはパリに出張に行った時に、蚤の市で。その時は別のピンをたくさん買い付けたんですけど、個人的にもホリデーシーズンの11月ぐらいから付けられるピンが欲しいなと思って買いました。昔はこういった“遊び”をしなかったんですけど。なんでしょうね、その時期にしか楽しめないことを自分自身がもっと楽しみたいなって思うようになって。いつも着ているものに、ちょっとピンをつけるだけでも楽しいです。
F:見ているだけでもほっこりした気持ちになれました。
根岸:そうなんです。このバッグも、ジム行く時に自転車のカゴに入れて信号待ちしていたら、海外の方に「クリスマスだね」と声をかけられました。
F:こちらのバッグはジムに行く時によく使われるんですか?
根岸:いろいろです。会社にも持っていきますし。コーディネートによって、ちょっと外したい時に持ったり。でも、基本的にはシンプルな洋服の時に持ちますね。洋服がシンプルだからこそ、ここで面白さが出る気がして。
F:ピンバッジはどんな風に使っていますか?
根岸:今年の2月に買ったのですが、まだ使えていなくて。(取材の時点で)ようやくホリデーシーズンになったので、このバッグに付けてみたり、ニットの首元に着けたりしてみたいですね。あとはジャケットでもいいかな。
F:今日のジャケットにも合いそうです。
根岸:きっと可愛いですよね。着けてみましょうか。
F:ありがとうございます。ちなみにジャケットはどちらのものですか?
根岸:「ピリングス(pillings)」です。ベストバイに選びたいくらい気に入っていて。ピリングスは2023年春夏シーズンからパリに出ていて、それまで知らなかったんですけどめちゃくちゃ可愛いブランドだと思って買い付けを始めました。これからすごく伸びていくだろうなって期待しているブランドです。
F:ピンバッジとの相性ばっちりですね! すごく可愛いです。遊び心を加えたくなったのは、何か心境の変化があったのでしょうか。
根岸:昔から遊び心があるものが好きなんですけど、多分そのチョイスの仕方が変わったのかもしれません。最近は何かが完璧じゃなくて、ちょっと抜けているという遊び心が、自分自身もそうですし、ロンハーマン自体もセレクションやスタイリングの軸の一つになっていたりします。さっきのディズニーのネックレスも、20代の時だったら違うアプローチで可愛く着けられると思うんですけど、年を重ねた今の方が、その面白さや遊びの感じがより際立つ気がしていて。
F:20代の時とはファッションの楽しみ方やモノのチョイスの仕方が変わってきたんですね。
根岸:そうですね。20代の時って、遊びというよりは「とにかく大人に素敵に見えたい」「自分をアップグレードさせてみせたい」という気持ちで、頑張って「ロレックス(ROLEX)」の時計を買ってみたり、背伸びしていたところがあったと思います。だから、今はその“逆”かもしれないです。遊びの中に上質なものを頑張って取り入れるというのが若い頃で、それが年と経験を重ねて似合うようになってきたからこそ、いい意味で肩の力が抜けてこういったピンバッジが気になるようになったのかもしれません。でもヴィンテージのスウェットに、カルティエの動物モチーフのダイヤモンドが入ったブローチをつけるという遊び方もしてみたいですね。
F:両軸で楽しめるのも経験を重ねた今ならではかもしれませんね。
今年を振り返って
F:今年はお買い物的にはどんな一年でしたか?
根岸:実は昨年までの2〜3年って、基本的にめちゃくちゃ買い物をしてきた私にとっては比較的落ち着いていた年だったんですよ。いろんなマインドの変化があって、意識が違うところに向いていたというのもあります。
F:意識はどちらに?
根岸:どちらかというとライフスタイル全般や食に向いていたと思います。ロンハーマンとしてもサステナビリティにシフトして公約も打ち立てて、洋服とは違うところに自分の中での学びみたいなものがありました。なので、そこに関連する興味あることに対してお金を使っていたかな。
それでも洋服は変わらず好きですし、その中で新しくお取り組みするブランドさんのものを買ってみたり、うちで買い付けしているものを買ったりはしていたんですけどね。ただその過程の中では悩みもたくさんありました。たくさんモノを作ることや売ることに対しても。それをこの3年をかけてセールを無くしていったり、セレクトに関しても“未来にとって良い”という実感を自分自身が持てるモノを選ぶようになっていきましたね。
F:今年はその意識がまた変わった?
根岸:はい。今年に入って海外にもまた出るようになって、そうした時に「もう1回ファッションを楽しみたい」と改めて自分自身が思えたんです。これまで、洋服ってなんだろう、ファッションってなんだろうってすごく考えて、難しいこともいっぱい考えていたけど、パリに行って自分がファッションを楽しめる瞬間があったからこそ、洋服や装うこと自体はちゃんと誰かの幸せに繋がっているだと思えたんですよね。なので、もう一度ファッションを純粋に楽しもうと、ちょっとお財布の紐が緩みました。
F:コンセプトストア「RHC ロンハーマン」が10周年の節目を迎えるなど、ロンハーマンとしての一年はいかがでしたか?
根岸:やっと人が集うイベントができるようになったことで、次に向けて自分を含めてみんなで改めて大事なことに気付けた年だったと思います。RHCもこの10年でいろんなことがありましたが、他にも今年に入ってからワイキキ店がオープンしたり、新たなスタートを1歩、いや、3歩くらい踏み出せた一年でしたね。
F:2024年はどんな一年にしていきたいですか?
根岸:来年はロンハーマンの上陸15周年を迎えます。この5年でも時代や世界は大きく変わって、自分たちも前進しているところなので、15周年を大事な節目として、改めてその次に向かえるように、自分たちもお客様もワクワクできるような新しいことをさらにチャレンジする一年にしたいと思っています。
F:ありがとうございます。最後に、お買い物ではどんな一年にしたいですか?
根岸:自分が見たこのないものや、出会ったことないものに出会いたいですね。お仕事柄、これまでたくさんのものを見てきていますが、それでも世界には、日本にだってピリングスのように見たことがないブランドがあります。そういうブランドやデザイナー、職人さんと出会って、買い付けする前に、まず自分が買いたいです(笑)。
■根岸由香里
1977年栃木県生まれ。文化服装学院スタイリスト科卒業後、セレクトショップで販売、企画、バイイングなどを担当し、ロンハーマンの日本上陸・立ち上げに参画するため2008年にサザビーリーグに入社。2016年に事業部長に就任。プライベートでは2017年に結婚、出産し、1児の母としての顔も持つ。
インスタグラム:@yukarinegishi
■2023年ベストバイ
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・義足モデル KawaK(川原渓青)が今年買って良かったモノ
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