岩田翔と滝澤裕史が手掛ける「ティート トウキョウ(tiit tokyo)」が、大久保の淀橋教会で2023年秋冬コレクションをショー形式で発表した。淀橋教会を会場に選ぶのは2017年春夏コレクション以来2度目。モードの文脈や変化への強迫観念にとらわれず、ファンの期待と「らしさ」に向き合いコレクションを製作したという。
2023年秋冬コレクションは、Netflixでもドラマ化され話題を呼んだ小説「クイーンズ・ギャンビット」の主人公ベス・ハーモンの人物像をインスピレーションソースにしている。クイーンズ・ギャンビットは、児童養護施設の少女ベスが自身の類まれな才能によって男性優位のチェス界の中を勝ち抜いていく物語だが、心の闇から酒やドラッグに溺れていき、孤独と依存症と戦いながらもチェスに打ち込んでいくベスの狂気的で危うさのある、だからこそ人間らしさを感じさせる側面に着目した。
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デザイナーの岩田は「人間像が均一化された今の世の中では、逆にベスのような生々しく狂気的な強さを持つ人間像が魅力的に映るのではと感じた」と語る。コレクションには、ブランドが追求してきた肌や着用している人が美しく見える服を目指すためのヌードカラーに、クイーンズ・ギャンビットの静かな狂気の要素をプラスしたという。
2011年デビューのティート トウキョウは、ブランドを継続するなかで、コレクション発表の考え方も変わってきたという。それは、「ブランドとして、誰と向き合うのか」ということ。独立したファッションを生んでいる東京で向き合うべきはモードではなく、ブランドを支持してくれる人たちであると改めて強く意識するようになったという。ファッション業界のプロに向けて気を衒うのではなく、顧客が喜ぶムードや世界観をアウトプットし続けることこそがティートトウキョウにとってのリアルなのだろう。
モードの文脈から距離をとったことでより強固になったのは、スキンコンシャスへのこだわり。ヌードカラー中心だった2023年春夏シーズンよりも、今シーズンはさらに限定されたトーンのニュートラルカラーで構成された。なぜ難易度の高いヌードカラーでまとめるのかといえば、それは肌の色に馴染み肌の美しさを邪魔しない色味だけで作ることに可能性を見出しているからだ。そのためテキスタイルは、幅広いベージュの中から理想の色味を作るため、今まで以上に色出しにこだわったという。
コレクションには、2023年春夏までは登場していた黒のパンツやプリントなど強いカラーは姿を消し、薄墨色の花柄のワンピースやニットのシャツとプリーツスカートのセットアップといったさまざまなベージュカラーのアイテムに加え、ビジューをあしらったニットベスト、スパンコールのついたセカンドスキンシャツ、など異素材を組み合わせたアイテムも多く登場した。
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