今年のお買い物を振り返る「2022年ベストバイ」。6人目は原宿のセレクトショップ「グレイト(GR8)」のオーナーである久保光博さん。北野武や村上虹郎を起用した「ロエベ(LOEWE)」とのコラボレーションヴィジュアルや、「ナイキ エアフォース1」40周年記念イベントへの参加、エコサイクル代理店事業をスタートさせるなど、日本を代表するセレクトショップとして世界からも注目を集めるグレイトのオーナーが選ぶ2022年に買って良かったモノ6点を紹介。
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MARTINE ROSE×TOMMY JEANS バスローブコート
FASHIONSNAP(以下、F):1点目は「マーティン ローズ(MARTINE ROSE)」と「トミー ジーンズ(TOMMY JEANS)」がコラボしたバスローブコート。2022年秋冬コレクションのアイテムですね。何が購入の決め手となったのでしょう。
久保光博(以下、久保):生地感とマーティン ローズらしいデザインが決め手ですね。僕の中ではマーティン ローズといえばパイル生地なんです。あとはこのマキシ丈のデザイン。これでサイズはSなんですがかなり着丈が長い。
F:長いシルエットはマーティン ローズらしさを感じますね。
久保:階段を登ったり、少し屈んだりすると地面に着いちゃいますね。マーティン・ローズって、1980年代のレイヴファッションからかなりインスパイアを受けてるデザイナーで、彼女のオーセンティックなデザインとして太いバギーパンツがありますよね。そういうのって、裾をガンガン引きずって履くのがかっこいいなと思っていて、このコートも引きずって着るほうが良いだろうと。バスローブでホームウェアの要素もあるので、家の中でも外でも着られるのも良いですね。それこそ「カサブランカ(CASABLANCA)」のデザイナー シャラフ・タジェル(Charaf Tajer)はよくバスローブを着てるじゃないですか。 おしゃれ着とホームウェアの境目にある心地良さにみんな惹かれているんじゃないですかね。
F:久保さんは今日も上下スウェットを着用しています。ホームウェアの要素を取り入れたスタイリングが今の気分ですか?
久保:元々動きやすい服装が好きなんですよ。 グレイトで初めて「リック・オウエンス(Rick Owens)」を売り出した時も、当時2008年頃は全身リックみたいな着こなしが主流だったんですが、バスケットシューズを履かせたり、パンツはデザイン性の高いリックのものでトップスはタンクトップを合わせたり、リアリティがあるファッションとして提案していました。「おしゃれはしたいんだけど、 いかに動きやすくて楽ちんか」っていうのが僕の中にはずっとテーマとしてあるんです。でも300近いブランドを扱っているグレイトのオーナーが全身スウェットばっかり着ているっていうのはちょっと問題でしょう(笑)。でもロングコートを上から羽織ってしまえば様になるし、ファッションとして成立する。だからロングコートにはすぐ反応してしまいます。去年は「ナマチェコ(NAMACHEKO)」や「アリクス(ALYX)」のロングコートを購入しましたね。
JIL SANDER コート
F:こちらもロングコートですが、マーティン ローズとトミー ジーンズのバスローブコートとは印象がかなり違いますね。ベーシックかつフォーマルなデザインです。
久保:TPOってほどじゃないですが、シーンによって着分けています。ジル サンダーはシーズンによってコレクションの良し悪しがなく安定しているから、過去に買ったものでも今シーズンのアイテムと合わせられるのが魅力。良い生地を使っているから色褪せないんでしょう。
F:久保さんは海外に行く機会も多いと思いますが、反応はどうですか。
久保:アメリカで「そのスタイリングめちゃくちゃイケてるね!」などかなり褒めていただけるシーンが多いです。スウェットの上にロングコートを着ているだけなんですが(笑)。海外だとスウェットの上下にロングコート、そこに個性的なアイウェアなどのアクセサリーを合わせるスタイリングは人気ですね。それこそ「バレンシアガ(BALENCIAGA)」の影響でここ最近、ロングコートの需要は日本でも増えてきているように感じます。
BALENCIAGA サングラス
F:話に出てきた個性的なアクセサリーとして、このバレンシアガのサングラスも活躍しているんでしょうか。
久保:まさにその通りで、大きめのスポーツタイプが今一番気に入っています。これはついつい2色買いしちゃったくらいで。バレンシアガのサングラスってかなり大きめで、キャップと合わせると当たってしまうんですが、バレンシアガのキャップはつばの一部分がくり抜かれていてサングラスがハマるようになっているんですよね。ただ僕は最近あまりキャップを被らなくなったので、基本スキンヘッドにサングラス、というスタイルが多くなっていますが。
F:バレンシアガのアイテムはよく買うんですか?
久保:そうですね。サングラスだけでもあと5個くらいは持っているし、バギーパンツやコートなどのアパレルもよく買います。カカトにバネが付いたスニーカー「X-Pander」も持っていますね。
F:ちなみに、夏はどんな着こなしをするんですか?
久保:夏はタンクトップの人になります(笑)。
F:タンクトップの人、ですか(笑)?
久保:今年の夏は「シュプリーム(supreme)」と「ヘインズ(Hanes)」のコラボタンクトップしか着ませんでした。それこそ着すぎたせいでタンクトップキャラが定着してしまって(笑)。タンクトップに7部丈のバスケットボールショーツ、スニーカーに「ロエベ(LOEWE)」のキャップやこのバレンシアガのサングラスなどの小物を合わせていました。もし夏にこの企画をやっていたら全部タンクトップでしたよ(笑)。
F:小物で魅せるのが夏の久保さんのスタイルということですね。
久保:小物が好きなんですよね。サングラスだったりネックレスだったり、腕に装着するものだったりで表現するのが楽しい。僕がバイイングするとそういうちょっと変わった小物を沢山つけてしまうから、在庫が残ってしまいスタッフから「セールでもにっちもさっちもいきません!売りにくいので程々に!」と怒られたりもします(笑)。
ECOCYCLE® フーディー
F:次のアイテムは「エコサイクル(ECOCYCLE®)」のフーディー。2021年11月から日本の代理店としてグレイトが展開していますね。
久保:グレイトとは別の事業部として立ち上げたプロジェクトです。アメリカに会社を作って、ビザも取得したのでこれから本格的に日本とアメリカで貿易を行っていきます。エコサイクルはリサイクルコットン50%、オーガニックコットン50%の100%コットンで作られているメイドインUSAのボディを使用したプロジェクトです。
F:既存のボディメーカーとはどのような違いがあるのでしょうか。
久保:こういうブランクのボディって、例えば「ヘインズ(Hanes)」や「チャンピオン(Champion)」、「ユナイテッドアスレ(United Athle)」と色々あると思うんですが、基本どれも中国製なんですよ。それは中国で生産したほうがコストが安いからですが、ここ2年でアメリカは自国の商品を大切にしよう、経済を守ろうという動きになっていて、輸入コットンに2倍の関税を課すようになった。そうなるとせっかく生産コストが安い中国で作っても意味がないということで、アメリカの工場に仕事が戻ってきてるんです。
F:ヴィンテージTシャツなど価値がつくもののボディは基本アメリカ製ですし、やはりブランド力と確かな技術があるわけですよね。
久保:エコサイクルでは、1990年代に使用していた機械を復刻させて生産しています。リサイクルコットンに変更するなど、今風に新しく作り替えてね。取引先の具体的な名前は出せないですが、みなさんご存じの有名ストリートブランドや大手セレクトショップのオリジナルアイテムなど、続々と契約が決まっています。生産数は前年比3000%まで伸びましたね。
F:コロナ禍でその成長率はすごいですね。
久保:工場も訪問する度に広くなっています(笑)。ベージュのボディを在庫として抱えていて、受注してから約2週間で染色するから他のボディブランドのように特殊なカラーになればなるほど在庫が少ない、ということは起きません。珍しいカラーにも対応できますし、注文から3週間で納品できるというスピーディーさも魅力だと思います。
F:取引先が続々と決まるのも納得ですね。久保さんはエコサイクルのアイテムの中でお気に入りのものはありますか?
久保:難しいね......。でも強いて挙げるとすればこのマーブル模様のフーディーですかね。特別に作ってもらったもので製品化はまだですが、こんな風にデザイン性のある染め方も出来るんです。
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