コーセーが、2023年12月期第2四半期(2023年1~6月)の連結業績を発表した。日本の百貨店・専門店チャネルにおけるハイプレステージブランドや、欧米での「タルト(tarte)」の好調により、売上高が前年同期比10.5%増(為替影響を除き7.1%増)の1442億9500万円、営業利益が同44.5%増の104億2000万円だったが、為替差益の減少により経常利益が同7.2%減の140億6200万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同2.1%減の86億9700万円となった。ハイプレステージブランドの継続的な好調や、独自技術を採用したコスメタリー事業の製品もベースメイクやポイントメイクの急激な需要拡大により順調に拡大した。一方で、流通企業による仕入れ抑制が続く韓国や、百貨店売上が伸長するもECが伸び悩んだ中国に課題が残る。
日本は、「コスメデコルテ(DECORTÉ)」で大リーガーの大谷翔平選手を起用した広告施策が新客・男性客の増加に寄与し、リポソームシリーズがけん引。「アルビオン(ALBION)」では人気美容液「エクラフチュール」の刷新が好調。ポイントメイクの復調で「ジルスチュアート ビューティ(JILL STUART Beauty)」や「アディクション(ADDICTION)」も2桁成長が続く。「雪肌精(SEKKISEI)」も大谷選手や羽生結弦選手を起用したプロモーションが売上を後押しし、回復基調となっている。売上高は同15.5%増の875億2500万円を計上。また、国内ドラッグストア・GMSが売上の8割を占めるコスメタリー事業では、ニーズを捉えた商品がヒット。「ヴィセ(Visée)」の新製品「ヴィセ ネンマクフェイク ルージュ」は、色移りのしにくさや「ネンマクフェイクルージュ」といったキャッチーな商品名および色名、SNSプロモーションが功を奏し、発売3ヶ月で45万個を消化。初期計画比187%で好調に推移している。そのほか、毛穴ケアニーズに応えた「ワン バイ コーセー(ONE BY KOSÉ)」の「ポアクリア オイル」や、累計出荷800万本を超えるフィックススプレー「メイク キープ ミスト EX」シリーズから登場したパウダーや化粧下地も化粧崩れを防ぐアイテムとして人気を博した。
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アジア地域は、中国でロックダウン解除の反動で百貨店売上が伸長したが、プラットフォームの多様化の影響によりECは減収。韓国トラベルリテールの低迷も加わり、売上高は同11.5%減の319億4100万円にとどまった。
北米では、ベースメイクの新作がSNSで“バズった”タルトが、EC・店舗ともに売上拡大に寄与。北米以外の欧州・中東・アジアにおいても新規出展を推進し、各地域で市場トレンドを上回って推移している。円安進行の影響も含み、売上高は同31.2%増の216億7000万円と大幅な伸びを見せた。そのほかの地域は、欧州などでもタルトが売上をけん引し、売上高が同41.1%増の31億5700万円に成長した。
小林一俊 代表取締役社長は、「前期は大谷選手の起用やメイクアップ市場の回復で、着実に良い結果が得られた。しかし、市場の大きな反響に対し、売上に満足はしていない。下期はフックとなる力強い製品が控えている。販売の機会を逃さず、クロスセル戦略を加速させ、さらなる成長を図る」と通期への期待を込める。
上期と同様に、今期は「投資の年」と位置づけ、引き続きデコルテ、アルビオン、タルト、雪肌精を含むプレステージを中心に積極的に予算を投下。デコルテではラグジュアリーな世界観を担う最高峰ライン「AQ」を9月に刷新、ポイントメイクを象徴する「アイグロウジェム」を7月にリニューアルした。海外渡航の増加を見据えたチャネルの拡大にも着手し、7月には海南島免税業界において最大規模のポップアップを実施。秋にはパリ市中免税への出店が決まり、欧州市場での認知拡大につなげる考えだ。アルビオンでは顧客の拡大および新客の獲得を計画。プレステージのワン バイ コーセーからは、日本初の「肌の水分保持機能改善」と「シワ改善」の両効能が認められた「ライスパワー® No.11+(プラス)」を配合した、薬用高保水密封バーム「ONE BY KOSÉ セラム シールド(医薬部外品)」を8月21日に発売する。同製品は勇心酒造との長年の協業から開発が実現。ニーズが高いエイジングケアを起点に、他製品とのセット販売などで既存客へのクロスセルを狙う。また、ブランドを横断したグループ合同プロモーションを今年も実施。今後も市場の拡大が見込まれる敏感肌ニーズにフォーカスし、雪肌精(コーセー)、「カルテ HD」(コーセーマルホファーマ)、「セラミエイド」(コーセーコスメポート)から、子どもから大人まで使える敏感肌向けスキンケアを訴求し、3社合同のキャンペーンも実施する。
2023年12月期通期の連結業績予想は中国や韓国などの情勢が不透明なことから、当初発表を据え置く。売上高が前期比5.5%増の3050億円、営業利益が同5.1%減の210億円、経常利益が同28.5%減の203億円、親会社株主に帰属する当期純利益が同29.1%減の133億円を見込む。
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