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資生堂が、中期経営戦略「SHIFT 2025 and Beyond」で掲げた、2025年までにコア営業利益率12%、2027年に15%の達成に向け、最大の鍵とする日本市場の再構築を図る。その戦略の執行者として、代表取締役社長COOの藤原憲太郎氏が、9月1日付けで資生堂ジャパンの代表取締役会長を兼任し、組織およびビジネス構造の改革を推進。「既存の商習慣やビジネスモデルを見直し、抜本的な改革を推進する」とし、同氏主導で収益基盤の再構築を進める。
藤原社長COOは「SHIFT 2025 and Beyondの達成には、戦略・改革のスピードを一層引き上げる必要がある。その達成の鍵となるのは、2025年にコア営業利益500億円を目指す日本市場の再成長による、収益基盤の再構築だろう。社長に着任してから約半年、日本事業の構造について、課題と理解を深めてきた。成長市場ではない日本で、シェアを拡大するにはこれまでのビジネスモデルでは収益が上がらない。これまでの慣習を取り除き、消費者を起点にし、ニーズにすばやく対応できる体制であることが必要だ」。続けて「私自身が強く思う、『自己改革こそが永続的な発展を作る』という考えのもと、飛躍のための改革をやりきる所存だ」と力強く語った。加えてこの改革は、資生堂ジャパン社長CEOの直川紀夫氏と二人三脚で統括していくという。
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改革の3つの柱には、「Profitable Growthへの事業構造転換」「固定費の合理化」「組織風土改革」を据える。事業構造の転換として、プレステージブランドへの継続的な投資、新商品の強化、顧客基盤の拡大などを実行。高い付加価値を価格に転換する戦略的な値上げを計画する。「エリクシール(ELIXIR)」や「マキアージュ(MAQuillAGE)」などを抱えるプレミアムブランドにおいてはデータドリブンなビジネスブランドへ進化さえる考え。あわせて、営業組織体制にもテコ入れし、現場に投資配分の権限を移行するなどでエリア視点でスピーディに戦略を実行できる体制へと転換。リテーラーとも改めて互いの強みを活かした協業体制を築くとした。また、収益性と成長性が高いEコマースにも注力し、2025年までに売上比率30%を目指す。
固定費については、データ関連費用や輸送費、販促物オペレーションの改善、システムの内製化、バックオフィスの見直しなどを図る。加えて、人材価値を最大化する組織体制への転換を進め、店頭人員配置の見直しや企業価値である充実したカウンセリングの提供のため接客時間の最大化を推進する。
組織風土の改革においては、既存の商習慣から脱却し、リーダーシップ体制の再編などでリスクを見極めながら自己改革できる組織を目指す。2024年から、次世代リーダーの積極登用と育成を強化する考えだ。消費者視点でニーズの変化を捉え、スピーディに商品展開およびマーケティングを実行するため、現、常務チーフイノベーションオフィサー チーフブランドイノベーションオフィサーの岡部義昭氏が、副社長チーフマーケティング&イノベーション オフィサー チーフブランドイノベーションオフィサー チーフブランドオフィサー ブランドSHISEIDOに昇格する。チーフピープルオフィサー職の人選も固まり、今後発表を予定する。
また資生堂は2023年12月期第2四半期(2023年1〜6月)の連結決算を発表した。日本市場およびインバウンドの堅実な伸び、中国事業の黒字転換などで、売上高が前年同期比0.2%増(実質8.5%増)の4941億8900万円、コア営業利益が同59.9%増の280億3900万円、親会社の所有者に帰属する四半期利益が同27.7%減の117億5300万円だった。なおコア営業利益は、営業利益から構造改革に伴う費用・減損損失等、非経常的な要因により発生した損益(非経常項目)を除いて算出した。
日本事業は市場の回復に支えられ、中高価格帯製品が好調に推移。「クレ・ド・ポー ボーテ(Clé de Peau Beauté)」は10%台半ば、「SHISEIDO」は10%台前半の成長で、愛用者の増加とともに売上を拡大したほか、積極投資を行ったエリクシールが好調。メイクアップ製品の需要拡大により、マキアージュが力強く成長。そのほか、Eコマースは10%台前半の伸び。インバウンドは20%代後半で回復基調だが、2019年比では未達だった。これらの要因から、コア営業利益は前年に対し40億円ほど改善し、34億1900万円(前年同期は73億9700万円の赤字)の赤字幅が縮小した。
中国事業は前年同期のロックダウンの反動もあり、黒字に転換し、コア営業利益が同74億8600万円増の54億9800万円に改善。SHISEIDOは実店舗でのブランド体験価値の訴求によりオフラインで好調で、クレ・ド・ポー ボーテはEコマースの売上がけん引。大型商戦の「618」では大幅な値下げに依存せず、プラットフォームの多様化に対応したことで堅実な結果が得られたという。
アジアパシフィック事業は、台湾、東南アジアの成長、「ナーズ(NARS)」の継続的な好調が見られたものの、マーケティング投資の増加などから、コア営業利益は同21億7300万円減の2億3500万円となった。また、米州事業はEコマースで人気により収益性が高い「ドランク エレファント(DRUNK ELEPHANT)」が前年比2倍超の成長となったほか、ナーズ、SHISEIDOも着実に伸長し、コア営業利益は同3億6800万円増の40億5900万円に着地した。
一方で、トラベルリテール事業は旅行客の増加に伴い、回復基調にあるものの、韓国での免税売上の低迷など本格的な復活には至らず、コア営業利益が同15億4400万円減の154億4700万円にとどまった。
2023年の連結業績予想は、前期が好調に推移したものの、トラベルリテール事業における市場環境の変化や、為替市場のボラティリティの上昇といった、不透明感が高まっていることから、今年2月に発表した通り、売上高1兆円、コア営業利益600億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益280億円に据え置く。
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