ヨウジヤマモト 2024-25年秋冬コレクション
Image by: FASHIONSNAP(Koji Hirano)
「それは、着る人の人生を変え、開花させるために考案されたドレスである」
パリで発表された「ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)」2024-25年秋冬コレクションについて書かれた資料の一文だ。ランウェイで発表されたのは、芸術的なフォルムの全34体。そのコレクションノートから、山本耀司のクリエイションの視点について紐解いていく。
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「自分の言語を通して仕事をするということは、世界から自分を切り離すということではなく、異なる、より開かれた、より自由な道を創造することを意味する。
本コレクションは、ヨウジヤマモトの特徴の多くを結集している——仕立ての伝統、形の変容、生地の精巧な分解と再構築、ドレスの複雑さ、芸術作品の自己主張など。それはまた、デザイナーの視点と技術の結晶であり、どのように服を着こなすかという先鋭的で先進的な提案でもある」(コレクションノートより)
キュビズム——彫刻のような黒
ショーの序盤に登場したのは、ヨウジヤマモトの芸術性と技術が注ぎ込まれた、黒一色のドレスとテーラード。ボディから突出した立体物が異形のシルエットを描いている。しかし単に立体を縫い付けているのではなく、複雑なカッティングにより身頃と突出部分が一続きで作られているため、有機的なフォルムが際立つ。
ウールとレザーを掛け合わせた2トーンのシリーズ、また中盤に登場したクラシック素材をミックスしたシリーズもまた、伝統的な仕立てを解体し、三次元の彫刻のごとく仕上げた。
特筆すべき造形と世界観について、ヨウジヤマモトの視覚言語として長きにわたり役割を果たしてきたという「キュビズム」が重なる。
パブロ・ピカソに代表されるキュビズムは、物体を二次元的に描いたり、三次元的に彫刻することにより、"関係の狭間"を探求してきた。その狭間を広げ、可視化し、居住可能にすることを目指したのが今回のコレクションだという。
「独自のカッティングや服の構造は、生地やクチュールの歴史など、これまで探究してきた様々な分野の融合が生み出す賜物である——全ての作品が、それを作り出す本質と着る者との出逢いそのものなのである」(コレクションノートより)
人生を開花させるドレス
後半の特徴的な2体は、分解されたピースを紐でつなげる形で構築。隙間からインナーが見え隠れする様は、2024年春夏コレクションのリボンでピースをつなげたドレスと通ずる。フィッシュネット付きの帽子と相まって、危うさを醸し出していた。
ムードを変えたのは、ショーのラストを飾ったグレーの5体。無駄を排したテーラリングがベースとなり、尖った肩先と、19世紀のバッスルスタイル風に腰の後ろにボリュームを持たせたシルエットが、アンドロジナスの雰囲気をまとった。
腰の装飾が徐々にボリュームを増していく様は、まるで大輪の花が開いていくかのよう。「Yohji Yamamoto by RIEFE」の黒をベースとしたジュエリーが控えめな輝きを添える。
「それらは詩の断片であり、新たな美の中で先鋭的で本質的な人生への道を切り開く」(コレクションノートより)
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