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「ファッションとは何か」を問い続けた山縣良和の17年の軌跡

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「ファッションとは何か」を問い続けた山縣良和の17年の軌跡

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第2章:集団と流行(はやり)

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人とモノの集積が生む熱量

 「装うことの愛おしさを伝え、流行の本質を現すこと。創造性をもって新たな衣服を描き、そして心に届けることを」というリトゥンアフターワーズのコンセプト通り、「流行」というテーマも同ブランドを語るにおいて欠かせない。そしてその流行を生み出すものを「集団性が生み出すエネルギー」だと山縣は捉えている。この章では、そういった集団が生み出すエネルギーのポジティブ、ネガティブ両側面を描く。

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 冒頭を飾るのは、山縣がロンドンに留学していた際に親しみ、今でも頻繁に着想源にするという「フリーマーケット」の風景。ここでの流行とは、単なるトレンドではなく、人間の営みから発生する価値観や風土も指す。人の日常に根差した有象無象のモノが集積し、そこに人が集まる、人の生活から生まれたものが別の人の生活の一部に取り入れられ流転していくことでファッション(=流行)が生まれ、社会や文化、時に歴史までを形作っていく。

 ブルーシートを巻かれた布団に横たわる男女と子どものマネキンに様々な雑貨や服が置かれたインスタレーションは、同展のために作られた新作。合間には「THE SEVEN GODS」で発表されたブルーシートで作られたトップスなどを着たマネキンが並ぶ。布団の上に置かれたのは、長年リトゥンアフターワーズのアトリエに蓄積されてきた無名のモノたち。ひとつひとつのモノに関連性はなく、物語も意味も持たないが不思議と、無防備に横たわるマネキンの人物像や生活を描き出すようにも感じられる。

当初は敷き詰めたブルーシートにモノを置くだけの予定だったが、会場を見た山縣が布団のアイデアをひらめき、急遽キュレーターの自宅から布団が持ち込まれた。

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デザイナーとしての責任

 フリーマーケットを抜けると、同ブランドの「集団性」を象徴的に表現した作品が現れる。長い通路には、2020年春夏コレクション「After All」を発表したショー「FLOATING NOMAD(浮遊する遊牧民)」のフィナーレの、放浪民の大移動のように大荷物を背負って歩くモデルたちの行列を再現した。

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2019年撮影

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  同コレクションは、第1章で登場した「魔女」のコレクションを皮切りに展開した3部作「For witches」の最終章「Anxious Witches」として発表されたもの。“平和な世界”のために排除されようとする魔女の姿を通して、統合に躍起になる一方で、移民や差別など分裂が露呈している現代社会を表現した。2015年に発生したイスラム過激派によるシャルリ・エブド襲撃事件を発端としたISIL侵攻のニュース、シリアの内戦で住居を失い大移動を余儀なくされた難民たちを想って作られた同コレクションだが、現在も日々ウクライナやガザが攻撃を受けており、世界の状悲惨な状況は変わらない。同展のタイトルである「ここに いても いい」とは真逆で、自分の居場所にいることが許されない人々が多く存在する。ポピュリズムやファシズム、新型コロナウイルスまで、「流行る」事象の中にはネガティヴなものも多い。デザイナーとして、そういった流行からも目を背けてはいけないと山縣は話す。

 この行列を挟むように展示されているのは、2018年の「After Wars」に登場した2ルック。メインルックのモデルの後を集団のモデルが追いかけるという演出をそのまま1ルックとして引用した。

「幼少期に長崎の爆心地で目にした、折り鶴を持った学生服を着た人が黙祷をしている光景に、現在に繋がる景色を感じた」(山縣)

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2017年撮影

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 陸上自衛隊の日報問題で糾弾を受けた稲田朋美元防衛大臣が大勢の記者を引き連れて国会内を歩く映像をテレビで見て「これもファッションだな」を感じたという山縣は、モデルを取り囲む記者たちを合わせて1つの装いの形として提案する。ファッションにはポジティブな側面も多いが、人に最も身近な表現のひとつであるが故に、政治的な(集団主義への)利用にも繋がりかねないと訴える。

このヘッドピースも加茂克也作。「ピンクのワニを加茂さんに渡したら、ぶった切られたんですよね(笑)」(山縣)

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2017年撮影

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日常と非日常、社会と自分の位置を知り、愛すること。

第3章:孤立のトポス

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