いよいよ冬本番。暖かい室内で過ごすプライベートタイムに、ブランケットにくるまって読書はいかがですか?ミステリーやラブストーリー、アドベンチャーなど、今回は読書にマッチする香水を紹介します。
目次
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読書と香りのコーディネート
最初に紹介するのは、本そのものを連想させる香り。図書館や部屋の窓際で、冬の暖かい日差しを浴びながら、書物の香りを感じて。
フエギア1833 「ビブリオテカ デ バベル」
幻想的な図書館へ飛び込んだような、ウッディーでスパイシーな香り。ホルヘ・ルイス・ボルヘスの短編小説に登場する「バベルの図書館」をイメージし、杉の木で作られた書棚に書物が整然と並ぶさまや、重厚な革の装丁、羊皮紙やインクの匂いが、書物そのものへの想像力を掻き立てる。六角形の閲覧室は螺旋階段を上下して移動でき、灯りはランプという名の果実、司書たちはそこで生涯を終えるというバベルの図書館。その謎に満ちた世界観から、書物の香りを堪能したい。
ミラー ハリス「シークレット ガーデニア オーデパルファム」
図書館の片隅で見つけた、埃をかぶった懐かしい本。それは古典小説「秘密の花園」。悲しみで心を閉ざした気難しい女の子メアリが、秘密の庭園を通して明るい心を取り戻す物語は、幼い頃も今も愛せるノスタルジー。フレッシュな柑橘とジューシーな梨の香りがイギリス北部の澄んだ空気を思わせ、気さくな家政婦が整えてくれる清潔なベッドのようなムスクや、庭師から漂う木々の香りも物語を感じさせるメアリはクレイヴン氏に、ガーデニアの柔らかい花びらやジャスミン、すみれなどの咲き乱れる美しい光景を見せたのかもしれないと、想像を膨らませてくれるだろう。この香りを纏って改めて、幼い頃に読んだ本を読みなおしてみては?
バイレード「キャンドル ビブリオテーク」
読書の時間に浸るなら、部屋の雰囲気作りも重要。このキャンドルは、時間の流れから遮断された図書館をイメージしていて、特別な空間を作り出してくれる香り。フルーティーなプラムの香りがシナモンやバニラと重なり、ベルベットのようになめらかに広がり、古い革のブックカバーのようなレザーノートと、アーシーなパチュリやバーチウッド(白樺)の奥行きあるドライダウン。休日の午後や、ディナー後のひとときに焚いて、温もりのある読書タイムを演出したい。シックなビジュアルも素敵。
ミステリー&サスペンスとコーディネート
ミステリーやサスペンスの本を読むなら、スリリングでドキドキするようなストーリーを携えた香りを纏って、ドラマティックな気分を盛り上げたい!
ペンハリガン「クランディスティン クララ オードパルファム」
イギリスの上流貴族たちの人間関係やユーモア、刺激的なエッセンスを描いたユニークなシリーズである”ポートレート”は、一族やそれを取り巻く人間たち、そして男女の嘘やすれちがい、裏切りなどのダークな心理戦の側面も備えた、物語の登場人物が香りとなったユニークなライン。”秘密の女、クララ”の香りは、物語の中心人物であるジョージ卿を虜にする中毒性を持ったオリエンタルノート。官能的で自信に満ちあふれ、社交的で笑顔がセクシーな大人の女性であるクララの、魅力と罪深い恋愛、そして駆け引きの香りが、サスペンス気分を盛り上げてくれる。
ラルチザン パフューム「ヴェネナム オードパルファム」
夜の帳が下りた時に目覚める、神秘的な自然に隠された秘密を描き出した”ラ ボタニックコレクション”より、まるで口当たりの良い”ヴェネナム=ポイズン(毒)”のような甘く包み込むような危険な香りを。インドのマサラチャイティーのスパイスに、炊き立てのライス、サンダルウッドが混ざり合い、遥か遠い土地への旅を感じさせる。しかし、本当に効く”毒”は、実は正面切ってやってこないもの。やわらかく、自然に、すぐそばに寄り添い、気付いた頃にはもう抜け出せない。カラフルな蛇がゆっくりと首に巻きつきはじめ、次第に危険は迫っている。あちこちに張られたミステリーの伏線を、香りとともに回収して。
リキッドイマジネール「ブラッディ ウッド」
ワインをイメージした知的でセンシュアルな香り。じわじわと追い詰めた最後に始まる闘いに、血のついた鋭い刃物のようなトップノートは必要不可欠。ホワイトワインの澱や、フルーティレッドワインアコードと、赤いジュース(香水の液体のこと)が重なれば、激しい金属音が聴こえるスリリングな展開を息をのんで見守るよう。やがてウッディアコードやサンダルウッド、オークなどの木のぬくもりが終わりを告げれば、力強い明日への希望を感じさせてくれる。ミステリー&サスペンスの結末は、こんなドラマティックな香りと共に。
ラブストーリーとコーディネート
初恋、爽やかな恋愛、官能的な展開、無償の切ない愛…さまざまな角度から楽しめる恋愛小説は、甘酸っぱさ、センシュアル、包み込むような優しさなど、香りのバリエーションもさまざまにコーディネートを楽しめます。
パルファン ロジーヌ パリ「ローズ グリオット」
甘酸っぱいチェリーがさわやかな恋を感じさせる、すがすがしく切ないフルーティフローラルノート。フランスでは、ルネサンスの象徴である清らかさと繁栄を連想させるチェリーは、美しさと柔らかさの代名詞。古くから芸術家たちが愛の物語を書くインスピレーションになった果実。太陽の光が射しこむ教室のカーテン、皆が集う騒がしい時間と、一人で残った時に訪れる驚くほどの静寂、遠くで聞こえるスポーツの歓声…。誰しもが遠い昔に感じたような、青春のひとときを懐かしく思えるピュアで澄んだ美しい香りを纏って、新しい恋の物語を。
エタ リーブル ド オランジェ「ノエル オ バルコン(賢者をも狂わす魅力)」
官能的な恋の瞬間と、ドラマティックなラブストーリーとコーディネートしたい香り。クリスマスパーティに現れた誘惑のダンシング・クイーンは、眩しい笑顔とオーラで周囲を照らし、会場にいる皆の視線が釘付けになるほど魅惑的。彼女がくるくると回ると、デコルテから甘い蜂蜜とバニラオレンジがふわりと漂い、清潔感のある温かなフェロモンが冴えない賢者を惑わす。彼女の伏せた長いまつげの頬に映った影に誘われるまま手をとれば、意外なほど冷たくて驚く。ジンジャーブレッドの香りのやさしい刺激が、物語の意外な展開を想像させてくれる。
ドルセー「C.G. どこか他の場所へ行きたい」
どこにいても見守っていてくれるような無償の愛の物語を感じる、ハートフルなグリーンフローラルノート。15歳の私たちはとにかく自由で、菩提樹の花、ハチミツ、刈り立ての干し草の牧歌的な香りに包まれながら、「どこか他の場所へ行きたい」と未来の夢に想いを馳せる。すぐに大人になるとも気づかずに、早く大人になりたいともがき、時には感情を高ぶらせぶつけながら、どこまでも駆けてゆく。この香りを纏えば、「どこへ行っても、いつもここで待っているよ。」と、大切な人からの愛のメッセージが聞こえてくるだろう。
ファンタジー&アドベンチャーとコーディネート
日常や仕事の慌ただしい時間から少し現実逃避したいときは、ファンタジーやアドベンチャーの世界に浸ってリフレッシュするのもおすすめ。高貴な香りを纏って“夢”の国へ没入してみて。
セルジュ・ルタンス「サンタルマジュスキュル」
夢のような異世界を旅するファンタジーとコーディネート。まるで白昼夢。先生の厳しい声が現実へと引き戻すまで、少年の魂は教室の天窓を通り抜け、夢の国を漂う。一冊の大きな本を開く。図書室からこっそり持ち出した、持ち出し禁止の本。体育倉庫に隠れて無我夢中で読めば、遠い昔にあった国のお姫様を救う物語のはじまり。森を駆け、トルコの薔薇と話し、大きな獣に乗って空を飛び、澄んだ空気に髪をなびかせる。やがて試練が身体だけでなく心にも訪れる、シルキーでクリーミーな夢物語のサンダルウッド。ほろ苦いカカオの香りと、遠い日の情景は、いつでもあなたをファンタジーの世界へ連れていってくれる。
クリスチャン ルブタン「ルビプリンス オードゥパルファン」
探求心を忘れたくない大人たちを奮い立たせてくれる、ドラマティックで刺激的なアドベンチャーとコーディネート。壮麗なピラミッドを取り巻く、謎のヘビ。ヘビは何も言葉を発しないが、あなたの頭の中に語り掛けてくる。ここへ来れば、勇気を出して中に入れば、眠った財宝を誰より早くを手に入れられると。黄金の砂が舞い落ちるようなシスタスの香りをくぐり、サンダルウッドの間をひたすら進む。様々な死の仕掛けを巧妙に避けながら、一歩一歩と前進していく。甘いトンカビーンの香りが辺りに満ちて、ついにヘビは真実の姿を現す…。香りによる冒険の旅は、まだまだ続いてゆく。
美容・香水ジャーナリスト
フレグランスとナチュラル美容を中心に、さまざまなメディアでコラム、エッセイを連載中。香水ジャーナリストとして、オーセンティックな香りからメゾン・ニッチブランドまでの幅広い知識を持ち、香りを語る表現力についてのワークショップやセミナーも行う。香りにこだわる化粧品の監修やディレクションにも携わり、2022年にはブランドとのコラボレーションによるオリジナルのフレグランスも発売。毎月、ブランドの枠を超えた新作フレグランスを紹介するインスタライブも配信中。
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