高橋盾による「アンダーカバー(UNDERCOVER)」が3月9日、2022-23年秋冬ウィメンズコレクションのファッションショーを東京・国立代々木競技場第二体育館で披露した。ウィメンズの単独ショーの開催は、2018年にパリ・ファッションウィークで発表を休止してから約4年ぶり。「Cold Flame」をテーマに、ブランドらしいダークロマンスの要素が感じられる原点的なコレクションを見せた。
無音で登場したブラックドレス
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ショーは無音でスタートし、エレガントなブラックドレスのルックが続々と登場。ドレスはゴールドのファスナーで深いスリットが入っており、無数の針を束ねたチョーカーやブレスレット、ピアスなどで強さをプラス。数ルック目からBGMに、チャールズ・ミンガス(Charles Mingus)によるピアノ楽曲「Myself When I Am Real」がしっとりと加わる。
赤い花とレーザーブレードのモチーフ
続いて目を引くのは、レーザーブレード(剃刀の刃)のモチーフ。中央がギザギザにカットアウトされたメタルベルトを合わせた赤いドレスや、レーザーブレードと赤い花が描かれたファーコートは、華やかさと冷たさの相反する要素が美しく同居する。
タキシードにマスク、ピースマークも
BGMはクラウス・ノミ(Klaus Nomi)の「The Cold Song」に切り替わり、タキシードジャケットに、タートルネックとマスクが一体型になったトップスを合わせたモデルたちがランウェイを歩く。胸には平和運動や反戦運動のシンボルであるピースマークのバッジと、花のコサージュを添えた。
パンク要素をふんだんに
ストレートに取り入れたロックやパンク要素も今季のキーワードの一つ。タータンチェックのジャケットをはじめ、ライダースジャケット、トレンチコートなどにスタッズやスパイク、ビジューをふんだんに装飾した。ショーの終盤には、イエローのライダースジャケットとブルーのロングドレスを合わせたモデルが姿を見せ、ウクライナの国旗を彷彿とさせた(スタイリングは事前に決まっていたため、偶然の配色だという)。
平和を願うデザイナー高橋盾の思い
高橋はショー前日、自身のインスタグラムアカウントに、手描きのピースマークの絵とともに、「ウクライナが戦火の中、とても苦しい気持ちですが、私が今出来ることは平和の願いを込めた自分の作品を発表することであると信じています」とメッセージを投稿。さらに「ファッションと自由は、切に結びついています。一刻も早く世界中の皆が心から自由を味わえる世界が戻ってくることを心から願っています」と綴った。
今季のテーマ「Cold Flame」には、「心の奥底に燻る冷たいREBEL(反逆的)な炎」という意味を込めたという。エレガントな装いに安全ピンやスタッズといったパンク要素を施すことで、内なる強さが露出する。フィナーレは、平和に向かう反逆者たちが漆黒のランウェイを鮮やかに染めるようだった。
文化女子大学(現文化学園大学)とニューヨーク州立ファッション工科大学(FIT)でファッションデザインを学び、ファッションブランドやセレクトショップで販売職を経験。「WWD JAPAN」で記者として、海外コレクション、デザイナーズブランド、バッグ&シューズの取材を担当する。2019年にフェムテック分野を開拓し、ブランドや起業家取材を行う。21年8月に独立し、ファッションとフェムテックを軸に執筆、編集、企画に携わる。22年4月に文化学園大学の非常勤講師に就任。
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