高橋盾が手掛ける「アンダーカバー(UNDERCOVER)」が、2023年春夏ウィメンズコレクションをパリファッションウィークで発表した。新型コロナウイルスの影響から、パリ現地でのショーはメンズコレクションで2年8ヶ月ぶり、ウィメンズでは2018-19年秋冬コレクション以来の4年半ぶりとなった。
今回のショーの舞台はパリ8区のアメリカン・カテドラル(大聖堂)。エリック・サティ(Erik Satie)のピアノ曲 「グノシエンヌ 第1番(Gnossienne No. 1)」が流れる中、中央祭壇をバックに、涙を流したように目元を光らせたモデルたちが歩く。
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切り裂かれたフォーマルウェア
涙の理由は、彼女たちが傷付けられたからのよう。ウェアは、切り裂いたようなスラッシュがキーディテールに。ファーストルックのジャケットは、片腕が露出するようにカットされ、胸元や背中も開いている。合わせたパンツも切り付けたらたようにスラッシュを入れているが、その切り口にはレースがあしらわれ、コサージュが添えられた。
他にもクラシカルなシャツ、ウェストコートをはじめ、"LOVE"や"DREAM"のロゴを載せたTシャツや、"SWEET"や"ANGEL"のロゴスウェットも大胆に胸元がカットされ、レースとコサージュで装飾した。
ドッキングした複雑なドレス
続いて特徴的なのが、複数の服をドッキングしたようなドレスだ。スパンコールの総刺繍のキャミソールドレスは襟や袖が複数あり、複雑な構造に見えるが2〜3通りに着用を楽しめるアイテム。ミニスカートとロングスカートをドッキングしたボトムスは、いずれかに足を通すともう一方の裾がトレーン(ウェディングドレスのような長いバックスタイル)のように広がりエレガント。また背中に結び目を施したバックシャンなトレンチコートやMA-1なども、日常着とイブニングウェアを掛け合わせた提案となっている。
大振りなノグチとのコラボジュエリー
ジュエリーは、これまでも協業してきたジュエリーブランド「ノグチ(noguchi)」とのコラボレーションによるもの。大ぶりな天然石を使ったゴールドピアスやネックレス、鎖のようなディテールのブレスレットなど。シューズはウェアのディテールと同様にスリットが入ったブーツやヒールサンダルなどが目を引いた。
ラストには丸いシルエットを描くミニ丈のイブニングドレスが登場。赤いチュールドレスにはシワ加工を施したり、深い傷を入れていたりと、美しさと醜さが同居する。ランダムに穴を開けたドレスには、無数のコサージュを添えた。
ショーの後に開催された展示会に行くと、これらのドレスにはデヴィル(悪魔)の尻尾をつけて展示されていた。大聖堂という神聖な場所への配慮もあり、ランウェイでは外して発表したそうだ。切り裂かれたスラッシュは、パンクな反骨精神の現れか、それとも心身を刻まれるようなことが起きている世界の悲しい現状か。傷がついても美しくあり続けるドレスと、添えられたレースや花の存在によって、困難を乗り越える強さと同時に優しさが感じられた。
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