女性の活躍や多様性が業績にもたらすもの
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ーESG活動におけるS(Social:社会)について、日本国内の資生堂グループの女性管理職比率は37.3%(2022年1月時点)、取締役会での女性比率は46.2%(2022年1月時点)と国内企業の平均9.4%※を大幅に上回る数字です。
資生堂の社会貢献を考えたときに、女性の活躍や外国人登用は率先して行うべき事象です。世界経済フォーラムが発表した「ジェンダー・ギャップ指数2022」で日本は146ヶ国中116位と、主要7ヶ国(G7)で最下位。この課題に日本の経営層は目を向けなければいけません。私自身、「30% Club Japan」の会長も務めさせていただいていますが、経営者の方々は、頭では多様性が必要だと理解しているものの、心から納得できているわけではないようです。なぜなら、自分たちが成長した時代はどうしても男性社会でしたから、習慣化、内面化してしまっている。そこからの転換を、資生堂がロールモデルとして発信することで後押しするのが使命だと思っています。
※帝国データバンク調べ(2022年7月15日~7月31日、有効回答企業数は1万1503社)
【「30% Club Japan」とは】
元となる「30% Club」は2010年に英国で創設。取締役会を含む企業の重要意思決定機関に占める女性割合の向上を目的とした世界的キャンペーンで、日本では2019年に始動した。経営トップがメンバーとなり、2030年にTOPIX100の女性役員割合を30%にする目標を掲げ活動している。
ー魚谷会長から見て、女性管理職比率の向上には何が必要だと思いますか?
経営層や管理職の意識改革でしょうか。当社では男性の育児休暇取得100%を目指していますが、ここでポイントなのは上司から育休取得を促すように伝えてあげると、取得率が上がるという傾向にあります。子どもの成長は一瞬ですから、パートナーとサポートし合って過ごしてほしい。大事なのは、女性が働きやすい社会というのは、男性にとっても健やかに働ける良い環境だということ。そういったことを30% Club Japanを通じて真摯に伝えていくことで現在、参加企業の取締役会の女性比率は約22.5%にまで高まり成果が出ています。
資生堂は海外地域事業所(中国、アジアパシフィック、米州、欧州、トラベルリテール)での女性管理職比率は、既に60%を超えています。今後は日本国内を含む6つのリージョンすべてにおいて、女性管理職比率を機会均等の象徴である50%に高めていきます。今後は、多様な人財の活躍と企業成長との関係を研究する社内研究機関「資生堂D&Iラボ」を発足し、研究で得られた知見を社外にも公表していく予定です。
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ー人財の多様性が業績に影響を与えるということでしょうか?
もちろん現代社会においてビジネスを拡大する上で、デジタルの活用、AIのアルゴリズムの活用は必須で、それにより傾向やロジックを導いてはくれますが、実際に商品を購入するお客さまに寄り添えるのは「人」なのではないでしょうか。国や文化によりどういった差異があるのか、人びとはどう感じているのかなど、AIは教えてくれないでしょう。グローバルに事業を展開するならば、グローバルな「センス」が必要です。だからこそ人財の多様性は非常に重要で、貴重な資本。資生堂が日本の化粧品メーカーとして、グローバル化をリードできたのは多国籍の多様な人財がいたからこそだと思っています。
ー多様性のある採用や配属も多いのでしょうか?
資生堂は現地採用を積極的に行い、各地域の市場特性に対応した提案ができる体制が整いつつあります。3年ほど前から、欧州の若手社員に資生堂のノウハウを活用した新商品開発を命じて、最終的にサステナビリティを意識したブランドウレ(Ulé)」が誕生しました。現在、ブランドECとフランス・パリの直営店舗でテスト販売中で、今後は欧州を中心に順次展開予定です。また昨年は、18年ぶりにメンズブランドの「サイドキック(SIDEKICK)」を誕生させ、主に中国の上昇志向が強いZ世代の男性をターゲットに発信しています。毎年11月11日に行われる中国の年間最大のECショッピングイベント「W 11(ダブルイレブン)」では、デビュー間もないにも関わらず、アイテム別のランキングに食い込みました。こういったことからも、企業のダイバーシティ&インクルージョンが進むと、イノベーションが起きる、ということが理解してもらえると思います。
新社長と二人三脚の新体制
ー今年から代表取締役社長COOに藤原憲太郎氏が就任。藤原新社長と二人三脚での経営がスタートしました。2人の役割は?
私は任期の2024年までCEOとして、藤原COOと並走していく予定です。藤原COOは海外事業に長けており、中国を中心に現場で事業を率いてくれましたが、会社全体の経営はこれからです。藤原COOが事業を執行しながら、私が経営指揮をとります。これまでの経験を生かし、またこれからの2年の並走を経て企業全体を見極める視点を培っていってほしいと思っています。
私自身の役割は中長期的な視点で、人財開発や投資に力を入れていきます。先ほどお伝えした今年開校する、「Shiseido Future University」では初代学長として若手を育成します。また「スキンビューティ」を確立させるための事業開発も準備しているところです。最新の研究で、肌と、食事や睡眠、ストレスといったライフスタイルとの関係が明らかになってきました。将来的に美しく健やかなスキンビューティのために、最適な食生活や製品、サービスを提供できる会社を目指します。事業が軌道に乗るころは、私はCEOではないかもしれませんが、さらに成長した資生堂を見るのが楽しみです。
「Shiseido Future University」施設イメージ
1階 エントランス
ー2023年はどういった年になると思いますか?
昨年の11月から12月にかけて、ロンドン、パリ、ニューヨークを視察し、さまざま方々と食事をしたり、現地の社員と対面でのコミュニケーションをはかりました。この数年で会食頻度は一気に低下して、労働環境のデジタル化による仕事の効率化も急速に進み、生活は大きく変わりましたが、対面でのコミュニケーションが持つ価値というのが少なからずあるというのも事実で、それを実感した出張だったと思います。2023年は日本でも徐々に本来の人同士のコミュニケーションが活発化し、デジタルとのバランスをどう極めていくか、というフェーズに入っていくのではないでしょうか。
(聞き手 福崎明子、書き手 平原麻菜実)
■「トップに聞く 2023」バックナンバー
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