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FASHIONSNAPによる業界の職業図鑑。ファッション業界にはどんな職業があるのか? 名前は聞いたことあるけど実際どんな仕事をしているのか? という疑問を解消すべく立ち上がった連載企画です。業界の最前線で活躍する人を招き、リアルな職務内容や必要なスキルなどをファイリングしていきます。
第4弾はファッションスタイリスト編。アイドルグループ「乃木坂46」や「櫻坂46」、人気バンド「ジェニーハイ」などの衣装をはじめ、ファッションブランドのルックやショーのスタイリングを手がける市野沢祐大氏の協力を得て、この職業の魅力を探ります。
目次
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ファッションスタイリストってどんな仕事?
テレビや広告、雑誌、ファッションショーなどの出演者の服装をコーディネートする仕事です。基本的にはブランドのプレスルームなどを訪ね、既製服から必要な服を借りて(リースと言います)スタイリングを組みます。案件やクライアントの要望に寄り添い、適切なスタイリングをする必要があるほか、衣装の管理や実際の撮影への同行など、スタイリング以外にも幅広いタスクが存在します。
僕の場合はCMを含めた広告、テレビ、ライブ、MV、ファッションショーなどのスタイリングを軸に活動しています。担当しているのは「乃木坂46」や「櫻坂46」の「坂道系」と呼ばれるアイドルグループや「ジェニーハイ」「ゲスの極み乙女」などです。
「ボディソング(BODYSONG.)」「ミューラル(MURRAL)」などのファッションブランドのコレクションルックやショースタイリングにも携わっています。
ファッションスタイリストになるには?
服飾系の大学・短大、専門学校のスタイリスト科などに進学してコーディネートの基礎や服の取り扱いを学び、卒業後に先輩スタイリストに師事して独立していく流れが一般的です。雑誌編集者としてスタイリングに携わり、弟子入りせずに活動する人もいます。
僕は専門学校を出てから6年ほど下積み時代を経て独立しました。元々はデザイナー志望でしたが、学生時代に雑誌撮影の手伝いをした経験があり、スタイリストを目指すようになりました。
必要な資格や勉強しておいた方が良いこと
ファッションスタイリストになるために必要不可欠な資格は特にありません。ただ、衣装の返却などでクイックにプレスルームを回らなければならないことが多いので、車と普通自動車運転免許があると役立ちます。また色彩検定やカラーコーディネーター検定などを取得することも強みになります。
アシスタント時代は自転車で返却に回っていたのですが、衣装の入った大きなバッグを4つくらい持つこともあったのですごくキツかったですね。車があるのとないのとでは身体への負担とこなせる仕事量が変わってきます。
ファッションスタイリストのある1日のスケジュール〜市野沢氏の場合〜
やりがいは?
自分の組んだスタイリングが、読者や視聴者からのいい反響を得られたときには大きな喜びを感じられるでしょう。番組や媒体、クライアント企業、モデルや芸能人、ブランドなど多くの人々と関わることができることも魅力。
自分の中ではいつも何かしらコンセプトを決めてスタイリングをしています。ファンの方々がそういった「裏設定」に気づいてくれ、SNSで考察したりしてくださっているのを見るのが好きですね。SNSの普及によって、受け手の声を聞く機会も増えたので、そこは個人的に面白いポイントだと思っています。
大変だなと感じる時は?
就業時間が不規則になるため、不定休になること。現場には衣装の責任者として、早朝から夜中まで立ち会う必要があるので、拘束時間が長くなります。またリース返却は撮影後日の午前中に行うことが多く、時間やルートを考えながら計算して回らなければなりません。
特に時間が足りないのは永遠の課題で、独立したての頃は苦労しました。こればかりは経験を積み重ねながら自分の中の引き出しを増やしていくしかないと思います。
最もハードだった日は、朝4時に現場入りして終わったのが丸一日後の朝4時。そこから2時間後に次の現場に入る日もありました(笑)。
ファッションスタイリストの収入はいくら?
個人差はあるものの、独立して1年目は月収30万円ほどが相場です。キャリアアップしていくことで収入は増えていき、3〜4年目あたりで月収100万円〜を目指すこともできます。
収入に関してはゼロから数億円までピンキリだと思います。基本的に「スタイリング一体◯円」「1ページ◯円」という単価で報酬が決まるので、数をこなせばこなすほど稼ぐことはできますが、1人で捌ける仕事量には限界があります。僕の場合、ギャラだけでなく「どういった意義があるのか」といった部分も大事にしながら仕事を決めるようにしています。
ファッションスタイリストからの発展性、転職などは?
既製服でコーディネートするのがスタイリストの基本ですが、オリジナルで制作する「衣装デザイナー」として活動することも可能です。デジタル化が進む現代では、キャラクターやアバターのコーディネート監修など新たな分野でもチャレンジできるでしょう。さらに、スタイリストでファッションブランドを立ち上げたり、メディアを創刊したりする人も多くいます。
僕の場合は現在、スタイリングと衣装制作の仕事は半々くらいになっています。独立して2年ほど経った時にファッションブランド「ボディソング」とタッグを組んで、「乃木坂46」の衣装を制作し始めました。ファッションを感じられるアイドル衣装を目指して衣装制作を続けていたら、依頼が多くなりました。
ファッションスタイリストに向いている人や大切なこと
前提として、ファッションが好きで、コミュニケーション能力のある人。クライアントやスタッフと会話をする中で要望を聞き出し、柔軟に対応していくことが大切になります。言われたことをそのままやるだけではなく、相手の期待以上のスタイリングを提案する「好奇心」「行動力」「向上心」を持ち合わせていることも求められるでしょう。また、長い拘束時間に加え急な対応を求められることもあるので体力や精神力も必要です。
スタイリングには個人のバックボーンが色濃く反映されるので、「これまで何を経験してきたか」という部分が強みになってきます。「ただ格好良い」ではなく、「自分のスタイリングはこれだ」と個性を打ち出すことも重要になります。
ファッションスタイリストを志す人に向けて
学校の授業や街で見かける建造物、モノの配色など、全ての経験がこれからのスタイリングに繋がってきます。色々なことに興味を持って、自分の財産として、積極的に吸収してみてください。
ファッションスタイリストの年間スケジュールの一例
1月
・国内ブランドのルック撮影
・メンズパリコレクション 担当案件で撮影があればパリへ出張
2月
・繁忙期
・アーティストのライブ衣装スタイリング
・広告スタイリング
3月
・繁忙期
・東京コレクション(秋冬) ショールックなどのスタイリング
・広告スタイリング
4月
・繁忙期を終え、比較的ゆっくりできる時期
・広告、ミュージックビデオの撮影
5月
・フェスシーズンに備え、バンドのスタイリングが中心
・長期休みで海外旅行
6月
・フェスシーズン開幕 アイドルやバンドのスタイリング
・ブランドのルック撮影で海外出張
7月
・引き続きフェス、ツアーのスタイリング案件が多い時期
・9月の東京コレクションの打ち合わせ
8月
・ブランドのルック撮影
・広告スタイリング
9月
・東京コレクション(春夏)のスタイリング
・広告スタイリング
10月
・広告、テレビ、ミュージックビデオのスタイリング
11月
・広告、テレビ、ミュージックビデオのスタイリング
12月
・繁忙期
・歌番組、クリスマスイベントのスタイリング
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