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ステマ規制施行 アパレル企業が押さえておくべき5つのポイント

法人の場合、最大3億円の罰金を科される恐れも

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ステマ規制施行 アパレル企業が押さえておくべき5つのポイント

法人の場合、最大3億円の罰金を科される恐れも

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 「ステルスマーケティング」、いわゆる「ステマ」とは、広告であるにもかかわらず広告であると分からないようにして消費者に訴求するマーケティング方法を指す。これを規制する「ステルスマーケティング(ステマ)規制」の施行がいよいよ間近に迫っている。2023年10月1日以降、ステマ規制に違反した場合は、ブランド名が公表されたり、法人の場合は最大3億円の罰金を科される恐れもある。

 施行前ということで違反と判断された事例もなく、セーフとアウトの具体的な境界線も公表されていない現時点では、対策に悩む担当者も多いだろう。そこで本稿では、アパレル、ファッション企業の担当者が押さえておくべきポイントを5つに絞って紹介する。(文:平川裕)

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①PR表記ははっきりと

 インフルエンサーや芸能人に自社商品をSNSで紹介してもらうことはよくあるPR手法だが、「ステマ」に該当しないために最も重要なことは、「企業が主導した広告案件の場合はそうだと分かるように明記すること」だ。したがって、インフルエンサーなどに報酬を渡してSNSに投稿してもらう際には、「#PR」「#広告」といったハッシュタグを含めるなど、広告案件であることがしっかりと伝わる投稿にする必要がある。SNSによってはタイアップだとわかるように投稿できる機能があるので、それを利用して投稿するのも有効だろう。

 なお、「PR表記があればOK」というわけではない点に注意が必要だ。例えば、PR表記の文字サイズを極端に小さくする、背景に同化するような文字色を選ぶ、大量のハッシュタグの中にPR表記を埋もれさせる、1つ目の投稿ではなくコメント欄にPR表記入れるといった、消費者が見落としてしまうような表記方法を行えばステマに該当する可能性が高まる。また、使用するハッシュタグも多くの消費者が「広告案件である」と認識できるものを選ばなければいけない。そのため、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった文言の使用が推奨されている。

 ファッションローに詳しい橋爪航弁護士は、「投稿内容にPR表記を含めることをインフルエンサー側の義務として契約書に盛り込むと良いでしょう。また、その際には表記の方法も細かく取り決めておくことが重要」だと説明する。

②報酬を払わなくてもステマ規制とみなされる可能性あり

 「金銭を支払っていないからステマではない」とは必ずしも言えない点が、この問題の難しいところだ。この業界では一般的な、いわゆる“ギフティング”と呼ばれる、自社の商品をインフルエンサーなどに提供してSNSで紹介してもらうマーケティング手法には注意する必要がある。

 金銭ではなく物品を提供したうえで「商品を紹介してほしい」と依頼すれば、ステマ規制に違反する可能性があり、商品の紹介を明示的に依頼せずに「他の〇〇さんはこんな投稿してくれました」と伝えるだけでもステマに該当する場合がある。また、企業側が「宣伝してほしい」と明言せず、インフルエンサーが“自主的に”宣伝した場合も、インフルエンサー側が将来的に仕事につながるかもしれないという期待をもって宣伝した場合は、ステマと判断されるリスクがある。

 ここでのポイントは、「インフルエンサー側の自主的な意思で投稿内容を決めているか」だと橋爪弁護士はいう。しかし、インフルエンサーの真意をはかることは非常に困難。そのため、企業が自社商品をインフルエンサーにプレゼントする際には、「宣伝してもインフルエンサーにとって特段メリットはない」ということを明言するなどして自衛する必要がありそうだ。

③ペナルティ対象はインフルエンサーではなく企業

 投稿を行うのはインフルエンサーや芸能人だが、ステマ規制に違反した際にペナルティが課されるのは投稿者ではなく発注した企業やブランドだ。違反した場合は、消費者庁から指導を受けたり、ブランド名が公表されるほか、2年以下の懲役や300万円以下の罰金が科される可能性もある。さらに、法人の場合は最大3億円の罰金が科される可能性もある。

 「インフルエンサーなど、投稿した本人への罰則がないのは適切なのか、不正な投稿を行った人にまで罰則を広げることを検討すべきだという議論も出ているため、将来的には投稿者にも罰則が拡大する可能性は否定できません。なお、インフルエンサーなど発信する側も、契約上企業への損害賠償責任が規定されていたり、炎上によって自身の社会的評価が下がってしまったりするリスクがある以上、ステマ規制についてしっかりと理解しておくことが重要です」(橋爪弁護士)という。

④自社の社員の投稿も要注意

 投稿の内容に注意が必要なのはインフルエンサーだけではない。自社商品・サービスの宣伝や販売を推進する業務を担う従業員が、PR表記を付けずに個人のSNSアカウントからその商品・サービスが優れているかのような投稿を行った場合もステマに該当する可能性がある。このケースは、従業員が良かれと思って宣伝していることも多く、企業が知らないところでステマに該当する投稿が行われている場合がある。企業が全従業員のSNSをチェックすることも現実的とは言えないため対策が難しいが、「企業は従業員に対して、ステマ規制に関する教育や研修を定期的に実施することが重要」だと橋爪弁護士はいう。「研修は外部のインフルエンサーを巻き込んだ形で実施する方がより有効的でしょう。また、従業員については該当者の線引きが難しく、子会社の従業員も対象に含まれるため、グループ全体としてのルール作りと啓蒙が重要です」(橋爪弁護士)。

⑤過去の分もさかのぼってチェックする

 10月1日から始まるステマ規制だが、10月時点で存在する全ての広告が対象となるため、過去の広告の内容もさかのぼって確認する必要がある。原則として、ステマに該当し得る広告は10月より前に公表したものであっても、インフルエンサーなどと現時点で連絡が取れる場合には、修正や削除を行なわなければステマ規制の対象となり得る。今後は、「①いつ、②どのインフルエンサーに、③どんな投稿を依頼したのかを一覧化して管理記録しておくなど、対応が必要となったときに即時に対応できるよう現在の自社広告の状況を把握しやすくする工夫が必要。また、投稿内容の修正回数などが契約で定められていたりするケースもあるので、契約内容を確認してから投稿の修正や削除等を依頼する必要がある」(橋爪弁護士)という。

平川裕

Yu Hirakawa

幼少期を米国で過ごし、大学卒業後に日本の大手法律事務所に広報担当として勤務。2017年に「WWDJAPAN」の編集記者(バッグ&シューズ担当)としてパリ・ファッション・ウィークや国内外のCEO・デザイナーへの取材を担当する傍ら、ファッションロー分野を開拓する。現在はフリーランスのファッションライターとスタートアップのPR担当という二足の草鞋で活動中。無類のハイヒール好きで9cmヒールが基本。

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