創業者フィービー・ソング
Image by: Snow Fox Skincare
台湾にルーツを持ち、オーストラリアで育った女性起業家フィービー・ソングが、肌荒れに苦しんだ自身の経験をもとに、2年の歳月をかけて皮膚科医と共に開発したスキンケアブランド「スノー フォックス スキンケア(Snow Fox Skincare)」。地球と肌に優しいハイブリッド系スキンケアで、「クリーンカルマ」と表現する。そのコンセプトと商品はどのようにして誕生したのか。創業者のフィービー・ソング(Phoebe Song)にインタビューした。
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■フィービー・ソング(Snow Fox Skincare創業者)
台湾移民の娘として生まれ、オーストラリアで育つ。
若い頃から敏感肌と肌荒れ、かゆみやただれに苦しみ、さまざまな病院に行くも改善せず。銀行に勤めていたときに出会った皮膚科医と共同で、フォーミュラを完成させる。2016年、Snow Fox Skincarを立ち上げ、2021年に日本上陸。現在はオーストラリア、米国、香港、スウェーデン、日本などで販売する。シートマスクの総売上枚数は2億超え。
—ブランドを立ち上げた理由、2016年設立当時の思いをお聞かせください。
私自身が、肌が赤くなって火照る極度の肌荒れと敏感肌に悩んでいたからです。今は落ち着いていますが、完全に治るものではないため、今も私はその悩みを抱えています。ブランドを立ち上げる前は銀行で働いていたのですが、その頃はとくに肌荒れが酷く、今ほどインターネットも普及していなかったため情報も得られず、1人で悩んでいました。誰かに見られていると思うと、外出するのも嫌でした。
そんな時にある皮膚科医と出会いが転機になりました。その皮膚科医と一緒に化粧品を作ることになったんです。それまで、オーストラリアはもちろん、台湾やアメリカなどでも皮膚科に通って治らなかったので、正直、期待はしていませんでした。それから2年をかけて、約200もの処方をトライ&エラーした結果、やっと処方が完成したんです。その後2~3ヶ月で私の肌はすっかり美しくなりました。
—その処方のコンセプトは?
ナチュラルな成分を使った、敏感肌のためのクリーンな商品であること。クリーンとはエシカルな意味も含めたクリーンです。スノー フォックス スキンケアはEUで禁止されている1400の成分だけでなく、懸念されている400近い成分も使用していません。ここまで徹底してこだわっているブランドは、他にあまりないのではないのでしないでしょうか。ナチュラルとクリーンは異なり、ナチュラルな成分だから全ていいとは限りません。私が言うクリーンは結果を出すということ。当時の私に選択肢はなく、ナチュラルとクリーンの両方が必要で、その両方で結果を出す。そこにこだわっています。
肌の問題は人生の問題。その苦しい思いに、手を差し伸べたい
—ブランド誕生までの2年間の開発期間、苦しかったこと辛かったことは?
約200の処方をテストし、毎回私の肌にはリアクションが起きました。人からは病気だと思われるし、変な噂も立てられ、デートもできませんでした。一般的に、アジア人は美容に対する意識も高く、肌が美しいと思われていますよね。想像してみてください。そんな中で、これだけ肌が荒れていたら、どんな目で人に見られてきたか。精神的にも落ち込み、社会的にも孤立して苦しんだ2年間でした。私の肌は一生こうなんだと、ほぼ諦めていました。それが完成から2~3ヵ月で見違えるほど変わったわけですから、私自身はもちろん、家族も驚いていました。
だから、私にとって「クリーン」はマーケティングではなく、リアルなコンセプトなんです。私のような敏感肌は選択肢がありません。そして肌の問題は人生の問題。その苦しい思いに、少しでも救いの手を差し伸べたい、それが私のブランディングです。
スノー フォックス スキンケアの約束事
1.100%植物由来成分
2.容器はリサイクル可能素材を使用、ボトルはすべてリサイクル可能なPETボトル
3. 水汚染の原因の一つである漂白工程をしていないオーガニック コットン シートを使用シートマスクには、GOTS認証を受けた100%無漂白のプレミアム オーガニック コットン シートを使用
4. 世界でもトップクラスのリサイクルエナジー使用国である台湾製
*一部の製品で製造国が異なる
*台北にある主要施設は、50%の再生可能エネルギーを使用し、廃棄物のリサイクル率は83.9%
5. パッケージは、プラスチックを段階的に廃止し生分解性のあるプラスチックの使用に切り替え中
6. ワイルドハーベストのハーブサプリメントはオーストラリアや、タイ北部チェンライの山岳民族のコミュニティから調達
7.クルエルティーフリー(非動物実験)に積極的に取り組んでいる。動物実験が義務付けられている地域では直接販売していない
—そこからがスノー フォックス スキンケアのスタートなんですね。
ただ、ブランド設立時はお金がありませんでしたから、シートマスク、クレンザー、クリームの3つの製品しかありませんでした。アジア人にとってシートマスクはなじみがありますが、オーストラリアやアメリカの人々にとっては目新しい商品で、使い方から説明が必要でした。逆にアジアでは安価なシートマスクが豊富に売られていますから、香港に持って行った時は「100円で買えるシートマスクがあるのに、こんな高価なものが売れるわけはない」と笑われました。それが今や香港は、一番のセールスであるアメリカに追いつくくらいの勢いです。100%オーガニックコットンを使用し、分厚くて1枚に25mLの美容液を含んでいます。ナチュラルだけがコンセプトではない、それを超えた、こだわり抜いた商品です。
カーダシアンファミリーのお気に入りブランドに
—どういう売り方をして、人気が広がったのでしょうか?
オーストラリアでは天候のせいか、私と同じ症状に悩む人がとても多いんです。そういう人たちに受け入れてもらい、発売後2ヶ月で全て売り切れてしまいました。それをローカルのメディアが取り上げてくれて、その後は入荷待ちのリストができるほどになりました。香港ではメディアにシートマスクを送っただけでしたが、それを見た人から人気になりました。それがあまりにいい商品ということで「マリクレール(marie claire)」でビューティアワードを受賞したことも広がる一つの要因ですね。
アメリカはとてもユニークですよ。LAで開催された見本市に、スーツケース1個、アシスタント1人を連れて出展した時のこと。カーダシアンファミリーのマネージャーが来場したので、シートマスクを渡したんです。その後、コートニー・カーダシアンがブログで紹介してくれて火がつき、多くのセレブが愛用してくれました。また、グフィネス・パルトロウも気に入って自身がプロデュースする「goop.com」で販売してくれています。
私達はプロモーションにお金を使ったこともなければ、セレブにお金を払って紹介してもらうこともありません。ただメディアに真実を話してきた、それだけです。
—ブランドの将来像をどのように描いていますか?
私はスノー フォックス スキンケアは「クリーンカルマブランド」だと思っています。「クリーン」はライフスタイルそのもの。「いい行いをしたら、いいことが返ってくる」。原料の調達もパッケージ制作も全て、道徳に基づいて行っています。
私にとってカルマを信じるのは、とても大事なことです。私は苦しみを顔に持っていました。道を歩いているだけで人に指を指され、陰口を言われる、この苦しみを私は忘れません。その苦しみから救われた経験を、人に恩返ししたい。その過程で、人を傷つけない、地球を傷つけない、全てにおいてエシカルであり、クリーンであり続ける。そうしてできた製品を、選択肢のない敏感肌の人に届ける、それが「クリーンカルマ」です。全ての人がこの考え方で生きていれば、地球環境はもっと良くなるでしょう。ブランドを立ち上げた当時、私は荒れた肌を持つひとりの若い女性に過ぎませんでした。でも、この「クリーンカルマ」を信じてきたからこそ、スノー フォックス スキンケアは成功しました。このプロセスを、生涯大切にしていきます。
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