今年のスニーカー市場を振り返って
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F:今年のスニーカー市場を振り返って。どんな1年でしたか?
小島:ダッドスニーカーの流れはゼロにはならないとは思いますが、だいぶ落ち着きましたね。コート系、特にバッシュのようなデザインのモデルが増えましたし、実際に人気でしたから。そういう流れがあるので、来年はバスケットスタイルの提案が上手くできるかが鍵になると思います。ランニングベースのモデルしか作っていなかったりすると、そのブランドは厳しくなっていくのではないかなと。
F:ランニングカテゴリーは引き続き好調だと思っていました。
小島:2年前のこの企画では、「ホカ オネオネ(HOKA ONE ONE)」や「オン(On)」の話題がたくさんありましたが、僕らのお客さんに2足目、3足目をどうすれば買ってもらえるかという課題があって。街履きでも支持をもっと得ようと考えると、ライフスタイル向けにどのような切り口で提案するかを話し合っています。もちろん各社ポリシーがありますし、スニーカーヘッズに向けて提案したいかどうかはメーカー側が決めることなので。もしスニーカーヘッズに向けて売りたいのであれば、できる限りの協力はしていきたいと考えています。
F:逆に今年調子が良かったブランドで言うと?
小島:「メゾン ミハラヤスヒロ(Maison MIHARA YASUHIRO)」が目立っていましたね。価格帯が3万円ぐらいでスニーカーの中では高額な方ですが、ファッション好きに支持され売れました。あとはやはりニューバランスですね。
F:ナイキ人気は変わらずですか?
小島:圧倒的です。スニーカー販売率もですが、色んなブランドからデジタルの取り組みだったり、マーケティングの話を聞きますが、正直ナイキは次元が違うというか。ナイキが発表したものを見て他のメーカーが作りはじめるようなイメージで、他が始めた頃にはナイキは別のことに取り組んでいる。今年1月にCEOに就任したジョン・ドナホー(John Donahoe)氏が「デジタルカンパニーにシフトする」と宣言しましたが、すでにデジタルの知見がすごく僕らも一緒に取り組むことで勉強させてもらっている部分があります。
F:コロナ禍でスニーカー小売も難しい局面を迎えていると思います。
小島:正直、これまではインバウンドの売り上げが大きかったので店舗は安定的な売り上げが取れる状態で、そこまでオンラインにフォーカスはしていませんでした。ただコロナ禍で売上が下がり、オンラインを見直そうとなって。コロナのおかげというと変かもしれませんが、オンラインコンテンツをアップデートしたことで実店舗のマイナス分を賄えるくらいオンライン売上が急伸したんですよ。
F:海外の店舗はどうでしょうか?
小島:実際に現地には行けていませんが、数字だけ見ると引き続き売れていますね。インドネシアやマレーシアなど東南アジアへの出店は数年前から力を入れていて、将来的には東南アジア全ての国に出店できればと考えています。
F:今年のスニーカートピックとしてはリセール市場が拡大して、さらに盛り上がった印象です。
小島:そうですね。「ストックエックス(StockX)」がアジアへの事業展開に力を入れ始めて日本円と日本語表示に対応したことや、スニーカーダンクだったりモノカブだったり日本発のプラットフォームが発展してきたことでリセール市場は盛り上がっていますね。
F:リセール市場が拡大したことで何か影響はありましたか?
小島:アトモスは返品の送料代がお客様負担なのであまりないですが、返品問題はよく聞きます。とりあえずで色々購入して、CtoCプラットフォームに出品する、売れなかったら返品の繰り返しというカオスな現象も起きているらしいです。
F:最近、注目のニュースとしてはアディダスのスタンスミスがレザー製を廃止して、すべてリサイクル素材に切り替えると発表がありました。
小島:アディダスは会社をあげてサステナブルに取り組んでいるので、どんどんリサイクル素材で作られた製品が増えていくと思います。ただ、日本国内だけでいうとサステナブルに配慮した製品だから買うという人はまだまだ少ないんですよね。他のメーカーでもサステナブルを打ち出したモデルがいくつか展開されましたが、正直ウチでは期待値ほど売れませんでした。
F:まだまだ課題はありそうですね。
小島:そうですね。ただ各メーカー、継続してサステナブルな製品を出していくというプランがあるので。僕らのフィルターを通して少しでも貢献していければと考えています。
今後のスニーカー市場はどうなるか?
F:来年、注目しているスニーカートピックは何ですか?
小島:重複しますが、バスケットボールシューズだったり、クラシックなスニーカーに注目していきたいですね。あと徐々に盛り上がっていますが、ヴィンテージ市場にも動きがありそうな気がします。1980〜1990年代のナイキのバッシュで、状態の良いものなどは注目されそうですね。お金を積んでも買えるかわからないものというか、ハイプなものよりも更に生産数が少ないスニーカーをコレクション目的で購入する人が増えていきそうな気がしています。
F:ほかに注目していることはありますか?
小島:あとは茶色系にも注目しています。ベージュとかブラウンが来年のトレンドになる気がしているんですよね。
F:トラヴィス・スコットとナイキのエア ジョーダン 1のようなカラーでしょうか?
小島:そうですね。トラヴィスコラボのようなカラーでインラインから「エア ジョーダン 1 ダークモカ」が発売されましたが、今年のエア ジョーダン 1の中でも人気でしたし、他のブランドでも茶色系のカラーを使った商品の反応が良くなってきているんです。普段は茶色系の靴ってあまり売れないんですけど、2002年ぐらいに茶色系なら何でも売れた時期があって。当時の雰囲気を感じるんですよね。来年のこの企画で答え合わせをしましょう(笑)。
F:2021年のアトモスの目標はなんですか?
小島:アトモスのサイトやアプリが生活の一部になれるよう、デジタルを強化していく予定です。
F:生活の一部とは?
小島:僕は家に帰ったら絶対に1回はネットフリックス(Netflix)を開いちゃうんですが、そんな日常的にチェックしたくなるものを目指したいですね。スニーカーヘッズの中には1日に1回は必ずSNKRSを見ちゃうという人もいると思うんですが、そういう習慣の中にアトモスがどう入っていけるか。ネットフリックスを見るようになって見なくなったアプリもありますし、色々なコンテンツで限られた時間を取り合っているので打ち勝っていければなと。「何かあるだろう」と毎日見てもらえるような仕組みは作っていきたいなと思っています。
F:別注商品などは引き続き豊富に展開していく予定ですか?
小島:そうですね。オリンピックがあることを想定しながら「渋谷」「原宿」「東京」みたいな僕らのベースをキーワードにした取り組みが増えると思います。世界各地に出店していますが、「東京ベースのスニーカー屋」と謳っていますし、20年以上渋谷・原宿で営業しているので、ルーツを大事にしていきたいという想いがあります。
(聞き手:林慎哉)
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