「サンローラン」2023年春夏メンズコレクション
Image by: COURTESY OF SAINT LAURENT
アンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vaccarello)が手掛ける「サンローラン(SAINT LAURENT)」が7月15日、2023年春夏メンズコレクションを発表した。舞台となったのは、メゾンの創設者イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)のゆかりの地であるモロッコ・マラケシュだ。
砂漠のオアシスから巨大なリングが登場
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インスピレーション源となったのは、戦後アメリカ文学を代表するポール・ボウルズ(Paul Bowles)の小説「シェルタリング・スカイ(極地の空)」。夢を取り戻すためサハラ砂漠へと旅立ったアメリカ人夫婦の姿を描いたストーリーで、1990年には映画化もされている。
ショー会場となった広大な砂漠では、円形のオアシスが神秘的に発光。スモークが立ち込める中、水の中から巨大なリングが徐々に立ち上がり、ドラマティックな風景を描き出した。このセットは、アーティストで舞台デザイナーのエス・デヴリン(Es Devlin)とのコラボレーションによるもの。カニエ・ウエスト(Kanye West)やビヨンセ(Beyoncé)など、数々の世界的スターの舞台美術を手掛けるデヴリンならではの、奇想天外なアイデアが活かされた。
ムッシュ サンローランの愛した「隠れ家」
マラケシュは、長年にわたりムッシュ サンローランの「私的な隠れ家」となった場所。パリでの多忙なスケジュールとは対照的に、ここでは穏やかな時間を過ごしていたという。今回のコレクションでは、そんなマラケシュでのライフスタイルを反映したリラックス感が特徴。ゆるやかなドレープ使いやシアーなボウブラウスも官能的かつレイドバックな雰囲気を醸し出す。
メゾンのアイコン、タキシードをアレンジ
また、2022年ウィンターウィメンズコレクションでも登場したタキシードに、新たな解釈を加えた。シャープな襟やショルダーの仕上げ、シングルまたはダブルのブレスト、クリームカラーの軽いシルクファイユのタキシードなど、幅広いバリエーションで展開。多くのモデルが素肌に羽織り、メゾンのアイコンでもあるタキシードジャケットに、メンズウェアとウィメンズウェアの要素を巧みに融合させた。
身体に添う細身のシルエットや、極端に短いショートパンツなどもジェンダーレスな空気をまとう。色味を絞り、ほとんどのルックが黒で統一されていたのも印象的だ。
砂漠で着る毛皮のコート
そして、春夏コレクションではあるが、ファーコートやレザートレンチも多数登場。コートの襟に付けられたブローチや、襟元から覗くボウブラウスに、ヴァカレロらしい美学を感じさせた。
足元には、カッサンドルロゴをあしらったトングサンダルやパテントのブーツ、スティレットアンクルブーツ、ビジューの煌めくフラットサンダルが、グラマラスな味付けをプラスした。
人生は「尽きせぬ泉」ではないのだから
地平線に沈む太陽をバックに幕を開け、日没と共にフィナーレを迎えたショーの壮大な世界観は、まるでSF映画のよう。最後に引用されたのは、ボウルズの名言だ。
「人はいつ死ぬかわからないから、人生を尽きせぬ泉のように考えている。だが、すべてのことは一定の回数しか起こらず、実際その回数は極めて少ない」
「あと何回、満月を眺めるだろうか? せいぜい20回だろう。だが、人は無限にその機会があると思っているようだ」
パンデミック後の世界では、すべての出会いや出来事がより尊く感じられる。ボウルズの言葉通り、メゾンの歴史を振り返り、かけがえのない瞬間を胸に刻む特別なコレクションとなった。
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