背景は砂漠。力強い足取りで登場したモデルたちは、荒々しく逆立つ髪に鋭い目つき、身体はファーに包まれ、まるで野生の生き物のよう。今シーズンの「サカイ(sacai)」の着想源になったという「かいじゅうたちのいるところ」の世界がランウェイに広がった。
"ワイルド"なクリエイション
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アメリカの絵本作家モーリス・センダックによる「かいじゅうたちのいるところ(原題:WHERE THE WILD THINGS ARE)」は世界中で愛され続けているロングセラー作品で、2009年にスパイク・ジョーンズ監督によって実写映画化している。阿部千登勢が手掛けるサカイは2025年秋冬メンズ&2025年オータムウィメンズコレクションで、かいじゅうたち、そして"ワイルド"という視点からクリエイションを広げたようだ。自然の中で生きること、既成概念にとらわれない思考、そして抑制されない情熱と感情の本質を表現したという。
大胆なボリュームと冴えわたるハイブリッド
まず目を引いたのは、ボリュームたっぷりのニットファー。毛足が長く存在感が抜群で、ジャケットの襟元やニットジャケットの肩や袖を覆う。アウトドアウェアをベースに、身体を包むボアフリースやファイクファーが大胆なフォルムを形成。ウィメンズはフレアやフリルのミニスカートを合わせることで、重さと軽やかさの絶妙なバランスに仕上げている。一方でメンズのパンツは、太ももから横に張り出すようにポケットを配し、機能性を備えた新しいシルエットを提案した。
ショーの中盤では、"かいじゅう"が編み込まれたニットや、「WHERE THE WILD THINGS ARE」のタイトルプリントといった、物語を連想するアイテムが登場。登山用のバックパックなど、より機能やボリュームを強調したインパクト大のアイテムが多く、サカイならではの"ハイブリッド"が冴えわたっている。
もう一点、特筆すべきはテーラードだ。2021年7月にジャン=ポール・ゴルチエのゲストデザイナーとして阿部千登勢が初めてオートクチュールを手掛けてから、手仕事のテクニックがサカイのコレクションに散りばめられている。今シーズンはラストパートで、シンプルな白シャツやTシャツにはじまり、襟の毛芯を露出したワーク・イン・プログレス手法のジャケットといった、サカイならではのフォーマルウェアにその片鱗を見ることができた。
カーハート、アグ、JWウエストンと旅へ
「sacaiのフレンズたちをワイルドサイドの旅へ連れていく」というコンセプトで、3つのブランドとのコラボレーションを発表。ショーの中盤で登場したのは3シーズン目のコラボとなる「カーハート WIP(Carhartt WIP)」で、深いブラウンとグリーンが自然界の色を想起させる。シグネチャーのウォッシュドキャンバスをベースに、新たにダウンやレザー素材を組み合わせた。
2018-19年秋冬コレクション以来、2度目のコラボとなった「アグ(UGG®)」は、サイハイブーツ、ローファー、ハイカーブーツの3型が登場。サイハイブーツは、折り返して内側のシアリングを大胆に露出すると、全く異なる印象のブーツとして履くことができる。
「ジェイエムウエストン(J.M. WESTON)」とのコラボは3回目。カウプリントが施された2型が発表され、コラボアイテムにも一貫して野生味あふれるムードが反映されている。
空想の中の"かいじゅうたち"を体現したようなコレクションは、より自由で開放的に独自の道を突き進む、サカイの本質を見るコレクションとなった。
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