Image by: FASHIONSNAP(Koji Hirano)
デザイナー 宮下貴裕手掛ける「タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.)」2023年秋冬コレクションのショーでは、ほぼ全てのルックにおいて、メンズモデルがスカートを着用した。現代ではスカートはウィメンズウェアとして認識されており、メンズが着用するのは一般的ではないが、ランウェイを歩くモデルを見たときに違和感はなかった。なぜなら、今回のコレクションがメンズウェアとウィメンズウェアを組み合わせてジェンダーレスなものとして「中和する」のではなく、あくまで加点方式で「女性的要素を含んだメンズウェア」を提案したように見えたからだ。
楽天による日本発のファッションブランド支援プロジェクト「バイアール(by R)」のサポートで開催されたショーの舞台は、現在の迎賓館などを手掛けた宮廷建築家 片山東熊が設計した日本初の本格美術館「東京国立博物館 表慶館」。重要文化財にも指定されているネオ・バロック様式の建物内には多くの業界関係者が詰めかけ、会場にはこれから開催されるショーへの期待からかどこか落ち着かない雰囲気が漂っていた。
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そんな観客たちの心を鎮めるかのように、ショーはゆったりとしたバイオリン演奏からスタートした。ショー音楽を手掛けたのは、これまでも共同で作品制作を行ってきた作曲家 ⼩瀬村晶。「喪失感からの解放」という宮下からのリクエストによって制作された讃美歌のようなオリジナル音楽が流れると、曲調に合わせ静かでゆっくりとした歩みでモデルが登場した。
2023年秋冬コレクションのテーマは、「THE TWO OF US」。宮下が「好きですし、尊敬もしています。友達のようであり、兄弟のようでもある関係です」と語る「ある女性」との関係性をメインテーマに据えて製作したという。「ある女性」について宮下は詳細を語らなかったが、ショー音楽のリクエストが「喪失感からの解放」であることから、女性とはもう会うことができないのではないかと推測する。モデルが長い階段から登場するシーンは、宮下と女性を隔てる長い距離を表しているようにも感じられた。
ファーストルックで姿を見せたのは、つばの広いフェドラハットを被り、オフホワイトのセットアップに身を包んだモデル。ショーの序盤では、このほかワンピースやボアベストといった柔和な印象を持たせたホワイトカラーのルックが多く登場した。
Image by: FASHIONSNAP(Koji Hirano)
一転、中盤以降はメインカラーにブラックを採用。マービン・スコット・ジャレット(Marvin Scott Jarrett)が創刊し、グラフィックデザイナー デヴィッド・カーソン(David Carson)がエディトリアルデザインを担当した1990年代のカルチャー誌「レイガン(Ray Gun)」のグラフィックを散りばめたトップス、ボトムス、アウターなどのアイテムが続いた。時にスタイルのアクセントとしてレイヤードしたサテンやベルベットのインナーが、コーディネートに動きを与え、個々のアイテムを上品に引き立たせていた点も印象的だった。
Image by: FASHIONSNAP(Koji Hirano)
ショーで着用したスカートは、ロングから太ももまで露出するマイクロミニまで、その種類は多岐にわたり、トラウザーは1本も登場しなかった。宮下自身が「⼥性でも男性でもない、よく分からない状態になっている」と話すカオスなスタイリング。コレクションにおけるジェンダーの線引きは、これまでのシーズン以上に曖昧なものとして表現された。
Image by: FASHIONSNAP(Koji Hirano)
タカヒロミヤシタザソロイスト.は、2010年にブランドを始動。同コレクションでデビューから13年を迎える。宮下がブランド立ち上げ当時のインタビューで語った「自信なんか持った事がない。ただ愛情です。洋服に対する愛と、あと洋服に携わっている全ての人への愛です」という言葉は、現状に満足することなく新たなクリエイションを作り出すエネルギーとなって、今なお燦然と輝いている。
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