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“強さも弱さも肯定する服” 家で働く職人と作り上げたリブ ノブヒコの母娘の物語

RIV NOBUHIKO 2025年秋冬コレクション

Image by: FASHIONSNAP(KIYO)

RIV NOBUHIKO 2025年秋冬コレクション

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“強さも弱さも肯定する服” 家で働く職人と作り上げたリブ ノブヒコの母娘の物語

RIV NOBUHIKO 2025年秋冬コレクション

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 幼い頃に見た親の姿を覚えているだろうか。

 親子の関係は人それぞれ異なるが、多くの人にとって、親は優しさと時には厳しさをもって無条件の愛を注いでくれる存在だったに違いない。そして、何よりも、すべてを知っているかのような、理想の大人の象徴だったはずだ。自分が親と同じ年齢に近づいたり、それを超えたりしたとき、ふと気づくことがある。幼い頃に大人として見ていた親の姿は、実際には想像していたよりもずっと若く、未熟だったのではないかと。

 東京ファッションアワードを受賞し、初のショーを開催した「リブ ノブヒコ(RIV NOBUHIKO)」は、そんな素朴な思いに着想を得た。

 日本人の小浜伸彦と韓国出身のリバー・ガラム・ジャンによるデザイナーデュオは、「初めてのランウェイショーは、まず大切な人に向けたいと思いました」と語る。今季のコレクションは、ジャンの愛する母親の姓「LEE」を冠している。

時を超えて見えてきた母の繊細さ

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 ジャンの幼少期の記憶の中で、母は自立心に溢れ、一人で娘を育て上げる強さを持った女性だった。しかし、今振り返ると、「強く見えたけれど、実は少女のような繊細さを内に秘めており、ただ強くたくましく生きるために、大人という殻をかぶって振る舞っていたのではないか」と感じるようになったという。

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 この気づきは、彼女の母親だけに限らず、「現代を生きる多くの女性たちにも共通する普遍的な価値観ではないか」と、より広い視点に繋がっていった。2025年秋冬コレクションでは、強さと繊細さが共存する女性の二面性を、リブ ノブヒコらしくクチュール技術を日常着に落とし込みながら表現している。

ワイルド・ラグジュアリーという独自の概念

 リブ ノブヒコは、「ワイルド・ラグジュアリー – 日常に自然に溶け込むラグジュアリー」をコンセプトに、クチュールの観念や技法を既製服に再解釈し、独自の女性像を描くブランドだ。ジャンは「フセイン・チャラヤン(Hussein Chalayan)」や「セリーヌ(CELINE)」で経験を積み、小浜は「ディオール(DIOR)」や「ランバン(LANVIN)」のアトリエで腕を磨いた。

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 2020年春夏のデビュー以来、ブランドはクルミボタンや精緻なビーズ刺繍など、職人的な手仕事で作り上げたウェアやバッグをアイコンとして確立し、その緻密な技術で多くの人々を驚かせてきた。このショーは、これまで進化させてきた「ワイルド ラグジュアリー」の集大成でありながら、自己紹介のようなショーにも感じられた。

自宅就労を実現した職人プログラム

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 ブランドの中心には、結婚や育児、病気や介護などの理由でキャリアを中断し、外で働くことが難しい人々を職人として採用する「MY HOME ATELIER」というプロジェクトがある。このプロジェクトでは、キットとガイドブックを提供し、各々の状況に合わせて働くことができ、自宅での手作業を通じて職人としてのスキルを学べるシステムが整えられている。現在、日本と韓国で約20人が参加し、年齢層は30〜60代、ライターやパタンナー、教師などさまざまなバックグラウンドを持つという。

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 ジャンは「3シーズン目に入った頃から本格的に始まりました。一緒に物を作れる人を探してブログに書いたところ、1日で60件ほどのコメントが寄せられました。多くの人が『子どもがいるから外で働けない』という理由で、外での仕事ができない人が多いことに気づきました」という。

 小浜は「ほとんどがオンラインで完結でき、カリキュラムも整っているので、負担なく職人を育成できます。長期的に続けてもらうことでクオリティも安定しています」と説明する。さらに「職人さんたちの温かさをいつも感じていて、今日のショーも『来られなくても遠くから応援してくれている』というメッセージをいただいています」と、強い絆が築かれていることを明かした。

フラワーモチーフに込められた思い

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 今季はフラワーモチーフが多く見受けられた。これは世界初の女性プロボクサーとして知られるバーバラ・バトリック(Barbara Buttrick)の言葉からヒントを得たという。「Girls aren’t the delicate flowers they used to be. (女性はもはや昔のようなか弱い花ではありません)」の名言からなのだろう。

 ブランドは「女性はもうお部屋を飾るような花ではなく、一人の自立した人間である」という解釈から、花を強さのモチーフとして起用した。

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 オフィスウェアを想起させるグレーのテーラリングやブルゾンには、立体的でエレガントなコサージュを装飾。モノトーンストライプのラガーシャツにはくるみボタンや花のボタンでつまむことでツイストさせ、レーザーカットされたフラワーモチーフが全面にあしらわれたドレスには繊細なヴェールを被せてみせた。

バッグのようなドレスの二面性

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 ラストには、ワイヤーを入れて円盤のように広がり、裾にハンドルを装飾したドレスが目を引いた。このアイテムは、今季の象徴的な存在であり、”女性の二面性”が表現されている。

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 「大人の女性はバッグを持つというイメージがあります。それと女性らしさや繊細さを象徴するドレスを組み合わせました。持ち方も持ち上げるように、力強くしています」と小浜は語る。

母への感謝と女性たちへの祝福

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 ショーのフィナーレ後に挨拶に出てきたデザイナーの2人は客席に座っていた母の元へ駆け寄り、花を手渡した。

 お互い涙を浮かべて、「見せれてよかった。ママは韓国にいて、私はイギリスの大学に通い、ヨーロッパで働き、これまで自分がやってる物をちゃんと見せる機会が無かった」とジャン。涙を流していた母は、娘の成長を目の当たりにした深い感動を感じていたに違いない。

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 プレスノートの最後に記された言葉が、心に残った。

 「本コレクションは、母に向けた、そしてあなた方大人の女性に向けた祝福にも似た、全てを肯定するコレクションである」

 リブ ノブヒコは、多様な役割を担う現代女性たちの、強さと繊細さという二面性を受け入れ、静かに寄り添う存在でいてくれるのだろう。

RIV NOBUHIKO 2025年秋冬

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2025 AUTUMN WINTERファッションショー

ファッション リポーター

大杉真心

Mami Osugi

文化女子大学(現文化学園大学)とニューヨーク州立ファッション工科大学(FIT)でファッションデザインを学ぶ。「WWD JAPAN」で記者として、海外コレクション、デザイナーズブランド、バッグ&シューズの取材を担当する。2019年にフェムテック分野を開拓し、ブランドや起業家取材を行う。21年8月に独立し、ファッションとフェムテックを軸に執筆、編集、企画に携わる。22年4月に文化学園大学の非常勤講師に就任。

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