スウェットは映画「逆光」のオリジナルグッズ。イラストはイラストレーター たなかみさきがデザイン
Image by: FASHIONSNAP
暴力、女遊び、ドラッグ...衝撃の次回作「blue rondo」
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ー須藤さんが主演・監督を務める次回作「blue rondo」を制作中だそうですね。どのようなストーリーなのでしょうか。
舞台は現代の東京。夜の仕事をしている男の子と、クラブでダンサーとして働く女の子を描いた物語です。亡くなった兄の元カノと弟の恋愛を主軸としたストーリーで、脚本は「逆光」に続き、渡辺あやさんと共同で手掛けました。既に撮影を終えていて、来年夏の公開を目指しています。
ー須藤さんの実体験を散りばめたストーリーと聞きました。
そうですね。どこまでが事実で、どこからがフィクションなのか、というのは詳しく語るつもりはないですが、「blue rondo」はかなりパーソナルな部分に踏み込んでいます。
ー映画「逆光」と連動したドキュメント連載「逆光の乱反射」では、ご自身の生い立ちを赤裸々に書かれていますよね。
幼少時代のことから、金髪・ピアス姿で通った中学時代、大学受験、渋谷のクラブで働いていた時代....結構話してますね。「blue rondo」のストーリーは、渋谷のクラブでアルバイトをしていた時期を投影しています。自分のコンプレックスを無我夢中で乗り越えようと、もがいていた苦しい時期でした。
ーいつ頃の出来事ですか?
3〜4年前ですね。怖い人たちのトラブルに巻き込まれたり、女遊びに明け暮れていたり、そんな時期でした。ケンカするほど強くないので、クラブで絡まれてはよく殴られて。今思うと、自分から巻き込まれに行っていたんでしょうね。一度悪い方へと向かうと人ってどんどん悪い方向に進んでいってしまいますよね。「blue rondo」というタイトルには、そうした「人生の中で繰り返される憂鬱な旋律」という意味を込めているんです。
ー自身の作品で、自分の人生に正面から向き合うことへの恐怖は無かったのでしょうか。
もちろん向き合うことへの恐怖はすごくありましたし、撮影中は精神的に苦しい時期もありました。でも、自分が先に進むためにはそうせざるを得なかった。
傍からみたら、しょうもない苦しみだって思われるかもしれない。でも、この作品を作り上げることが、覚悟を持って表現することへの挑戦でもあったんです。何もかも曝け出してでも作品に向き合うことで、「表現することとはこういうことなんだ」と自分自身に提示したというか。
ー美しい情景と若者たちの繊細な心理描写を描いた「逆光」とは、対照的な世界観ですね。
映画自体は、男の子と女の子が恋愛するという他愛もない話なんです。それでいて、人の心の内面にえぐりこむ作品。暴力、ドラッグ、閉塞感、苦しさ、トラウマ....目を背けがちな汚れたテーマをまとめて全部ぶつけました。あやさんとは「最も醜くくて、汚れてる、そんな世界を走り抜けた先に見える美しく神聖な光。そんな作品になるといいね」と企画の段階で話していました。
ー「逆光」は舞台設定と同じく1970年代の古着でスタイリングが組まれていました。「blue rondo」はどのような衣装が使われていますか?
映画において衣装はかなりこだわっている部分の一つです。「逆光」の衣装は色彩設計の域に入っていると言える程、美しさを重視しています。キャラクターたちの関係性やパーソナリティを、衣装のシルエットやカラーで見せることを意識しました。例えば、大人びたセクシーな雰囲気を纏った「吉岡」というキャラクターにはえんじ色のシャツを着せたり。逆に「blue rondo」ではリアリティを追求して衣装を選んでいます。例えば、このキャラクターの性格だったら、この位の金銭感覚でこういうデザインのアイテムを買うだろう、なんて考えて。キャラクターのバックグラウンドからスタイリングを構築しています。
ースタイリストは「逆光」と同じメンバーですか?
はい。「逆光」のスタイリングを手掛けた古着屋「Foyer」の高橋達之真くんにお願いをしました。「ディガウェル(DIGAWEL)」や「クードス(kudos)」など東京ブランドの衣装が登場するので、ファッション視点から作品を楽しむことも出来ると思います。
あらゆるクリエイターを巻き込む「FOL」始動
ー映画制作および配給を行う「FOL」を立ち上げたそうですね。
映画制作、配給に留まらず、映画を軸に純粋に楽しいと思えるようなことを色々と仕掛けていこうと考えています。名前は「Fruits of Life」の頭文字から取っていて、映画っていう大きな幹からさまざまなカルチャーを実らせていきたいという思いを込めました。ファッション、アート、音楽など様々なカルチャーが垣根を越えて発展していくコミュニティを目指しています。
ー将来的には法人化する予定ですか?
はい。メンバーは僕と渡辺あやさん、スタイリストの高橋達之真くん、カメラマンの須藤しぐまさん、「逆光」で宣伝に携わった永長優樹くんの5人が中心となりやっていこうと考えています。商業的な観点に囚われ過ぎず、純粋に自分たちが撮りたいと思える映画を持続的に作り続けられる環境、そして作り手にしっかりとお金が行き届くシステムを整えていく。あらゆる表現に関わる人が「FOL」に来て、学んで帰っていく、そんな場所にもしたいと思っています。
ー映画を中心とした多角的な展開ですね。クリエイターの育成も視野に入れていますか?
自分が作品を作るだけではなく、若い表現者の背中を押してあげることも同時にやっていきたいと思っています。育成と言うとおこがましいんですが、純粋にクリエイター同士力を貸しあって、盛り上げていきたいんです。とにかく熱量の向け方がわからなくて行き詰まっていたら、僕らに会いに来てほしい。僕が会わせたい人もいっぱいいるし、伝えられることもきっとあると思うので。
ー今後も俳優と監督を両立させていく?
実はもともと、「blue rondo」を撮ったら俳優をやめようと思っていたんですよね。3年間練習をしてきた、涙を流すシーンがあって。そのシーンをやり切ることができたら役者をすんなり辞めていたと思うんですが、上手く演じることが出来なかったので納得できるまでは続けるつもりです。
ー俳優として、映画監督としてそれぞれの今後の目標について教えてください。
俳優としては、英語圏で1年位仕事をしてみたいです。演出など海外の現場の技術を持ち帰って、自分が映画を撮る際に活かせたら良いなと。監督としてはやりたいことがめちゃくちゃあって、例えばNetflixで映画を制作するとか、スターを起用した作品を制作するとか。やりたいことが多過ぎて一つには絞れないんですが、俳優と監督共通して言えるのは、もっと自分が深い部分で興奮できるような表現を突き詰めたいと思っています。
聞き手:長岡史織
衣装提供:Foyer
スタイリング:高橋達之真(Foyer)
■映画「逆光」:公式サイト
■Foyer:公式サイト
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