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ミウッチャ・プラダとラフ・シモンズは対談で何を語ったのか?学生の質問に回答

「プラダ」2021年秋冬メンズコレクション

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Image by: PRADA

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ミウッチャ・プラダとラフ・シモンズは対談で何を語ったのか?学生の質問に回答

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 「プラダ(PRADA)」が2021年1月、デジタル配信形式で2021年秋冬メンズコレクションを発表した。ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)とラフ・シモンズ(Raf Simons)による初のメンズコレクションとあり注目を集めたランウェイ映像に続いたのは、ミウッチャとラフによる約30分間にわたる対談だ。SNSアカウントを持たずインタビューにも頻繁に応えない2人に質問を投げかける機会を得たのは、ニューヨーク、東京、ミラノ、ソウルなど様々な場所でファッションを学んでいる学生たち。2人が今考えていることから、コレクションタイトル「POSSIBLE FEELINGS」に込められた思い、ファッションの定義についてまで、学生のピュアな質問によって、2人の心の中が引き出されたインタビューとなった。全編英語で配信されたインタビュー映像から、一部Q&Aを抜粋した和訳版をお届けする。

― 協働する中で意見が合わなかった場合、どのように解決していますか?(セントラル・セント・マーチンズでファッションジャーナリズムを学んでいるロージーさんの質問)

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ミウッチャ:実は、意見が合わないことはそんなに多くありません。ただ、どちらかが納得できない場合は、それはやらないことにしています。根本的ではないことに関して議論することはそんなにないだろうなというのは、協働が決まった最初からわかっていました。

ラフ:同意見です。アイデアについて議論や対話をしながら進めています。意見が合わないことがあったら、それは一旦置いておいて次のことに取り掛かります。意見がマッチすることは他にたくさんあるので。

ミウッチャ:それか、片方が確信している場合もありますよね。例えば、私はこれまでの人生、ピンストライプが嫌いでしたが、今回のコレクションはピンストライプで溢れています(笑)。自分の考えを変えるきっかけや可能性があるのは良いことだと思っています。議論したり、考えを柔軟に変えられる人でありたいと思い決めたのです。自分にない考えを相手が提案してくれて、新しい視点を持てるのは、協働における素晴らしい点だと感じています。私達に関しては、誰かに強制されてコラボレートしているわけでもないので、どれもやっていて楽しいことなのです。

― なぜプラダにとって空間デザインは服と並びとても重要なのでしょうか?(ハーバード大学デザイン大学院の学生 セレステさんからの質問)

ラフ:今世界が置かれている状況を鑑みても、"環境"というアイデアはとても強いものになっていると思います。それはあなたの家だったり、人と会う場所、訪れる場所、公共の場、プライベートな場所だったり...。想像もできなかった状況に立ち会っていると思います。以前は、当たり前に行きたい場所に移動できる自由がありましたから。ファッションと社会の関係性について私達は常に話し合ってきましたが、今回の出来事はそれにとても大きな影響を及ぼしました。様々な対話を経た結果、私達は今回のコレクションに関してはナラティブで建築的なコンテクストを与えるのではなく、よりフィーリングに寄り添ったものにすべきだと考えるようになりました。

ミウッチャ:私達デザイナーは、「人々の生活/人生」に興味があるものです。それにおいて服はほんの一部で、環境はより大きく重要なものですよね。人の生活にそれほど大きな影響を与えるもの(環境)がファッションにとって興味深い題材であるのは自然なことです。ファッションは、人の生活に関するものですから。今回のコレクションに関しては、空間デザインが、私達の感情やアイデアを表現するツールになってくれました。アウトサイドでもインサイドでもないような抽象的な空間で、触覚やセンシュアリティに紐付いたマテリアルを使ったセット。これらによって、コレクションで伝えたいことがより明確になるのです。

― 不安が増す今の社会において、ファッションデザインはこれからより控えめになっていきますか? それとも大胆になっていくのでしょうか?(北京の清華大学で建築を学んでいるシンイさんからの質問)

ミウッチャ:ファッションに限らず、服全体の話になると思います。服は、あなたの個性や、あなたが見せたい側面、または隠したいものを定義したり表現する上で役立つものです。それは権力だったり、セクシュアリティ、反抗心...…と様々で、いかなる考え方のバリエーションも微妙なニュアンスをも表現することができるのです。危機的な今の状況において、これまでとは違う服が欲しくなるかもしれません。しかし、私に関しては違います。個人的には、服を着ることに対しての姿勢に変化はありません。快適さという気休めよりも、自分が何を考えているかのほうが大切だからです。

ラフ:私達ファッションデザイナーは、どんな時代においても、人間に対して服が持つ意味を、様々な側面から伝えたいと思っています。このコレクションの中では、服の持つ触覚や文字通りフィジカルな感覚について語っています。コンフォート、プロテクション、美しさといった側面について考えつつ、コレクションでは、色の並置や、柔らかさと硬さの並置を通して、リアリティ、そして世界中の人々が隔離された状況で感じたかもしれないフィーリング(possible feelings)を表現しています。

― 「ファッション」は、継続的で数え切れない「アイデンティティの創造」を目撃するパフォーマンスという表現に置き換えられますか? (ミラノ サンラファエル大学で哲学を学んでいる シルヴィアさんからの質問)

ラフ:私たち2人は強くそう信じていると思います。それこそが(ファッションの)定義だと思います。

ミウッチャ:自分の考えやパーソナリティ、変化、その他色々なことを表現できるということこそが、ファッションの本質だと思っています。

学生:ファッションというのは、人間が持つ様々な側面を、オープンなダイアログで表現する機会だと思います。未来を予期するものと過去の記憶、アートと日常...など異なる要素が融合し、ジャケットやパンツ、シューズという形になって現れている。

ミウッチャ:あなたはファッションを教えるべきですね。「ファッション」の完璧な定義だと思います。

ラフ:その瞬間にあなたが持っているフィーリングや考え、というのもぜひ(定義に)加えたいです。ファッションというのは常に、「その時何が起こっているのか」ということに関連しているからです。今回のランウェイを撮影する前に、コレクションをどのように見せるか、モデルがどのようなウォーキングをするのか、私達はそれぞれ理解やイメージを持っていましたが、実際の撮影では全く計画していなかったことも起こりました。それこそが私がファッションで愛する部分です。これはあなたの質問に関連することだと思います。何が言いたいのかというと、私達は常に全てをコントロールしたいとは思っていないのです。クリエイティブな部分でのコントロールをしているだけで、同時に、いかに計画していなかったことが起こるのか、というのが面白さでもあると思います。今回のショーは、まさにそのケースだったのです。モデルがダンスするシーンがありますが、あれはとても自発的なものでした。前もって準備されたものではなく、撮影中にあの空間にいて、モデルの男の子たちのワクワクしている感じやハッピーな感じを、私も感じたのです。それは様々なものから切り離された、「フィジカルな感情」のようなものかもしれません。一人が唐突にダンスを始めたことで、当初計画していたものからディスコネクトしたものへと変換できる、それこそがファッションの美しさなのでは、と思ったのです。そしてそれが世間に公開された時、オーディエンスによって再びコネクトするのです。

学生:そういう意味で、「自分が何者か」を理解する上でファッションは有効なツールということですよね。

ミウッチャ:それができたら素晴らしいことだと思います。例えば、あなたが新しい服を着ることで、自分が想像してもいなかったパーソナリティになれることもあります。私にとって、服のゲームは、素晴らしいゲームなのです。そして私自身も人生でプレーし、活かしているものです。周りに対して自分をどのように表現したいのかということだけではなく、ファッションは自分自身に対する見方を変えたり、自分でも気が付かなかった「自分」の顔を気づかせる力のあるものなのです。

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