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ファレル・ウィリアムスの押さえておくべき功績【連載:いまさら聞けないあのアーティストについて】

G I R Lのアー写

ファレル・ウィリアムスのアルバム「G I R L」

Image by: SonyMusic

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ファレル・ウィリアムスの押さえておくべき功績【連載:いまさら聞けないあのアーティストについて】

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 全く異なるジャンルでありながら、古くから蜜月関係にあるファッションと音楽。ここ十数年でその結び付きはさらに強くなり、今やファッションメディアでなにがしのアーティスト名を見ない日は無いと言ってもいいほどである。だがアーティスト名は目にするものの、彼/彼女らがファッションシーンへと参画した経緯や与える影響力、そして何よりも楽曲に馴染みが薄く、有耶無耶の知識のまま名前だけを認知している人も少なくないだろう。

 そこで本連載【いまさら聞けないあのアーティストについて】では、毎回1組のアーティストをピックアップし、押さえておくべき音楽キャリアとファッションシーンでの実績を振り返り、最後に独断と偏見で「まずは聴いておくべき10曲」を紹介。第2回は、実業家としてさまざまな顔を持ち、"世界一のヒットメーカー"と称されるファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)についてをお届けする。(文:Internet BoyFriends)

■いまさら聞けないあのアーティストについて:連載ページ

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戦友チャド・ヒューゴと師匠テディー・ライリーとの出会い

 ファレルは1973年4月5日、アメリカ南東部にあるバージニア州バージニアビーチで便利屋を営む父と教師の母の間に長男として生まれた。彼は、音や数字に色が付いて見える"共感覚"の持ち主ということもあり、幼い頃から自然と音楽に馴れ親しみ成長。特に、毎週末通った教会で聴く賛美歌と、偶然にも同じ協会に通い、のちにラッパーのティンバランド(Timbaland)として活躍する2つ年上の少年との出会いは、現在まで続くアーティスト活動に大きな影響を与えているそうだ。というのもファレルとティンバランドは10代半ば、音楽好きが高じて4人組ヒップホップグループS.B.I.を結成。目立った功績は残せず解散したのだが、この時ティンバランドと共に参加していたのが、チャド・ヒューゴ(Chad Hugo)という人物である。ファレルとチャドは、中学1年生の時にバンドキャンプで出会い、お互いが"変わり者"だったことから意気投合。S.B.I.解散後にR&Bグループのザ・ネプチューンズ(The Neptunes)を結成し、高校でライブを行うなど活動していた。すると、この高校のすぐ近くにマイケル・ジャクソン(Michael Jackson)の作品なども手掛けていた大御所プロデューサーのテディー・ライリー(Teddy Riley)がスタジオをオープンし、ザ・ネプチューンズの活動が彼の目に留まり、2人はプロデューサーとしてのいろはを学ぶことに。ここから、ファレルのプロデューサーとしてのキャリアが花開く。

30歳にして全米No.1プロデューサーの地位を確立

 ザ・ネプチューンズはテディーとの出会いを機に、R&Bグループからファレルとチャドのプロデューサー・ユニットにシフトチェンジ。弟子入りした2人は、お蔵入り作品を生み出しながらもめきめきと上達し、次第に自分たちのサウンドを形成。そして、パフ・ダディ(Puff Daddy)が参加したメイス(Ma$e)の「Lookin' at Me」(1997年)と、ノリ(N.O.R.E.)の「Superthug」(1998年)が相次いで高評価を受け、プロデューサー・ユニットとしての地位を築くことに成功した。その後、ザ・ネプチューンズが生み出す斬新なサウンドは多くのアーティストを魅了。ジェイ・Z(Jay-Z)やスヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)といったUSのトップラッパーのみならず、ポップソングのマエストロとしてブリトニー・スピアーズ(Britney Spears)やマライア・キャリー(Mariah Carey)、ジャスティン・ティンバーレイク(Justin Timberlake)、TLC、宇多田ヒカルらの楽曲も手掛ける千両役者ぶりを見せた。この結果、"2003年8月に全米のラジオ局で流れた音楽の43%および全英の20%は、ザ・ネプチューンズが手掛けた作品"という信じられない逸話を残し、翌年にはグラミー賞で最優秀プロデューサー賞を受賞。30歳にして名実ともに全米No.1プロデューサーとしての地位を確固たるものとした。

 時を同じくして、2人はザ・ネプチューンズとして他者の楽曲を手掛ける一方、自らの楽曲を発表するため共通の友人であるシェイ・ヘイリー(Shay Haley)を加えたヒップホップ・グループN.E.R.Dを1999年に結成。さらに、ファレルはボーカルとしての才能がフィーチャーされるようになったことでソロ活動も目立ち始め(チャドが表立つのを嫌った節も大きい)、2006年に1stアルバム「In My Mind」をリリースした。当然、ヒットを連発していたファレルだけにチャートを賑わすかと思いきや、プロデュース作品ほどのインパクトを残すことができず、ファレル自身も「今では聴けたものじゃない」と振り返っている。実際、ファレルは同作以降ソロ活動が向いていないと判断したのかプロデュースとフィーチャリングに専念し、2014年の「G I R L」までソロアルバムをリリースしなかった。しかし、一部で「In My Mind」はカルト的人気を誇り、タイラー・ザ・クリエイター(Tyler, The Creator)は同作をきっかけに音楽活動をスタートしたことを何度も公言している。むしろ、現在第一線で活躍するラッパーやR&Bアーティストの中で、ファレルおよびザ・ネプチューンズの影響を受けていないアーティストはほぼ存在しないと言い切っていいかもしれない。

 なお、ファレルが手掛ける作品の特徴の1つとして、"4カウント・スタート"が多いことで知られている。これは文字通り、本編が始まる前のイントロを"なんらかの4カウント"でスタートしていることを意味するのだが、文字で説明するより一度"4カウント・スタート"をまとめた下記の動画を再生した方が早いだろう。ジェイ・Zとの「Frontin」やスヌープ・ドッグの「Drop It Like It's Hot」、ケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)の「Alright」などがこれに該当し、たった"4カウント"で楽曲の世界観に引き込むファレルの常套&上等テクニックとなっている。

"あのデカい帽子"でファッションアイコン化

 プロデューサーとして2000年代の音楽史に大きすぎる足跡を残したファレルだったが、2013年頃から先述の「G I R L」のリリースを見据えて再びシンガーとしての顔を見せるようになり、必然的にメディア露出が増加。もともと類稀なるファッションセンスで知られていたため、次第にアイコンとしても支持を集めるようになった。これを決定付けたのが、"あのデカい帽子"に象徴されるハットスタイルだ。相当気に入っていたのか、それとも意図的に狙っていたのかは彼のみぞ知るところだが、2014年に公開した「Happy」「Come Get It Bae」「Gust of Wind」のいずれのミュージックビデオでもハットを被っており、中でも"あのデカい帽子"こと「ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)」のマウンテンハットは公私で着用率が高く、未だにイメージが強い方は多いはずだ。

 そして、このファレルのファッションアイコンとしての影響力をいち早く感じ取ったのが、「アディダス(adidas)」である。2014年に両者は協業をスタートさせると、2015年に発売された50色の「スタンスミス(STAN SMITH)」からなるコレクション「スーパーカラー(Supercolor)」をはじめ、現在に至るまで数十回以上もコラボアイテムを発表。とりわけ、2017年に500足限定で用意された「シャネル(CHANEL)」とのトリプルコラボ「NMD Hu」は、定価の10倍以上となる150万円近い価格で取り引きされる熱狂を生み出した。ちなみに、「アディダス」とアーティストの関係といえば、カニエ・ウェスト(Kanye West)ことイェ(Ye)の「イージー(YEEZY)」が真っ先に頭に浮かぶかもしれないが、売上的な観点ではファレルの方が「アディダス」に貢献しているという。

 またファレルを語る上で、NIGO®の存在は欠かせない。2人は、ニューヨークにあるジュエラー「ジェイコブ(Jacob & Co.)」でよく買い物をしていたそうで、同ストアの創立者ジェイコブ・アラボ(Jacob Arabov)がファレルに「日本にクールな奴がいるから会った方がいい」とNIGO®を紹介。その後、ファレルが日本でレコーディングスタジオを探している際にNIGO®が自身のスタジオに招待したことをキッカケに交流がスタートしたそうだ。これ以来ファレルは人間性も含めてNIGO®を慕っており、音楽、ファッション、フード、アートなど多岐にわたってコラボ。つい先日、NIGO®がリリースした約17年ぶりとなるニューアルバム「I Know NIGO」にも参加している。

あらゆる分野で手腕を発揮する"世界一のヒットメーカー"としての存在

 アイコンとして華々しくファッションシーンに参画したファレルは、ここでもプロデューサーという自身の強みをビジネスマンとして遺憾なく発揮。デニムブランド「ジースター ロゥ(G-Star RAW)」の共同オーナーになったことをはじめ(2016年)、ブランド「ビリオネア・ボーイズ・クラブ(BILLIONAIRE BOYS CLUB)」と「アイスクリーム(ICE CREAM)」を手掛け、「コム デ ギャルソン(COMME des GARCONS)」と香水を開発し、「シャネル」とコラボコレクションを展開するなど、わずか数年の間に驚くべき手腕を振るって見せた。さらに、この勢いは音楽とファッションだけにとどまらず、盟友NIGO®と日本酒ブランド「サケストームカウボーイ(SAKE STORM COWBOY)」を立ち上げ、スキンケアブランド「ヒューマンレース(Humanrace)」をスタートし、アメリカ・マイアミにホテル「ザ・グッドタイムホテル(The Goodtime Hotel)」をオープン。今後も唯一無二の存在として領域を広げた活躍を見せるであろうファレルは、はたしてどんなプロジェクトで我々を楽しませてくれるのか。

 もちろん本業は依然として絶好調で、イェと共にプロデュースしたプシャ・T(Pusha T)の新作アルバム「It’s Almost Dry」が4月22日にリリースされたばかり。「まずは聴いておくべき10曲」と共にチェックしてみてはいかがだろうか。

Image by: SonyMusic

まずは聴いておくべき10曲

1曲目:Frontin'
ザ・ネプチューンズ名義のコンピレーション・アルバム「The Neptunes Present... Clones」(2003年)収録曲で、ジェイ・Zとのコラボ楽曲。プロデューサーとしてのイメージが強かったファレルの初のソロ作品で、シンガーとしての実力を知らしめたエポックメイキングな1曲。

2曲目:Drop It Like It's Hot
スヌープ・ドッグの7thアルバム「R&G」(2004年)収録曲かつリードシングルで、アルバム全体をザ・ネプチューンズがプロデュース。デビューから10年近く経っていたスヌープに初の全米1位をもたらした記念すべき楽曲であり、"4カウント・スタート"の代表曲でもある。

3曲目:Hollaback Girl
グウェン・ステファニーのデビューアルバム「Love. Angel. Music. Baby.」(2004年)収録曲で、全米1位も獲得した人気曲。このヒットをきっかけに2人は親交を深め、2ndアルバムでも協業したほか、とあるTV番組ではレギュラーとして共演した。

4曲目:That Girl
ファレル・ウィリアムスの1stアルバム「In My Mind」(2006年)収録曲で、スヌープ・ドッグとのコラボ楽曲。当時15歳のタイラー・ザ・クリエイターに衝撃を与え、彼がヒップホップ集団オッド・フューチャー(Odd Future)を結成するきっかけになった1曲でもある。

5曲目:Anti Matter
N.E.R.D名義の3rdアルバム「Seeing Sounds」(2008年)収録曲で、耳に残るノイジーなギターフレーズを特徴とし、彼らが2018年の「フジロック・フェスティバル」に出演した際は同曲からパフォーマンスがスタートした。

6曲目:Sweet Life
フランク・オーシャンのデビューアルバム「Channel Orange」(2012年)収録曲で、フランクの才能に惚れたファレルが自らプロデュースを申し入れたことで誕生し、お家芸の"4カウント・スタート"が取り入れられている。

7曲目:Get Lucky
ダフト・パンクの4thアルバム「Random Access Memories」(2013年)収録曲で、世界32ヶ国でトップ10入りを記録したヒットソング。同曲をきっかけに、ファレルはダフト・パンク所属の音楽レーベル「コロムビア」へと移籍し、8年ぶりのソロアルバム「G I R L」をリリースする運びとなった。

8曲目:Freedom
アルバム未収録曲で、2015年に「アップル・ミュージック」のCMタイアップ楽曲としてリリース。ゴスペル色の強いパワフルな楽曲で、メッセージ性の強いミュージックビデオは必見。

9曲目:Feels
カルヴィン・ハリスの5thアルバム「Funk Wav Bounces: Vol. 1」(2017年)収録曲で、ファレル・ウィリアムスと共にケイティ・ペリーとビッグ・ショーンも参加。2010年代に巻き起こったEDMブームの絶対王者ハリスと2000年代の覇者ファレルという、ジャンルの壁を越えた2大プロデューサーの共作。

10曲目:Lemon
N.E.R.D名義の5thアルバム「No_One Ever Really Dies」(2017年)収録曲で、リアーナとのコラボ曲。曲中でしきりに繰り返される「Wait, wait a minute」は、米政治家の故アーレン・スペクターの発言をサンプリングしたもの。

■いまさら聞けないあのアーティストについて:連載ページ

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Internet BoyFriends

東京とロンドンを拠点に活動するエディターやライター、スタイリスト、フォトグラファー、グラフィックデザイナーが所属。

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