Image by: FASHIONSNAP
クリエイションの枠にとらわれない作品を制作し続ける国内外の若手マルチアーティストにフィーチャーする連載「テルミアバウッチュ!(Tell me about you!/あなたのことを教えて!)」。第4回は「ロエベ(LOEWE)」の2023年メンズ春夏コレクションで発表された草の生えた靴で注目を集めたパウラ・ウラルギ・エスカローナをピックアップ。ショートインタビューから彼女のクリエイションを紹介します。
パウラ・ウラルギ・エスカローナを紐解く6つの質問
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名前:パウラ・ウラルギ・エスカローナ(Paula Ulargui Escalona)
拠点:スペイン
「人間の皮膚と自然を再び結びつけること」を目的に種子、新芽、作物、生物を用いたファッションアイテムを制作。アイテムを通して、持続可能なファッション業界を作るためのニーズや意識を高めることを目指している。
公式インスタグラム
ロエベとの協業
ーロエベの2023年春夏コレクションで一躍話題を集めましたが、どのように開発を進めていきましたか?
ロエベのために開発したアイテムは、大学の最終学年の時に始めたリサーチが基になっており、コラボアイテムを作るために様々な種類の種を試しました。コンセプトは「ファブリックを育て、ファブリックの中でも自然を育てること」。そうすることで、服を通して人々は自然と再会し、持続可能なファッションについてより深く話すきっかけになると考えました。
ー中でも、発芽したスニーカーはインパクトがありました。
20日間で4足作りました。とにかく靴への植え付けが大変で……(笑)。衣服の場合は平らな場所で育てることができますが、靴の場合は重力に逆らって発芽する必要があるので、徹底的な手入れが必要だったんです。
草の生えたファッションアイテムで表現したいこと
ーパウラさんの肩書きはファッションデザイナーですが、手掛けるアイテムは布や生地だけではなく、草や種などの自然物と衣服を結びつけていることが特徴的です。一般的に想像されるファッションデザイナーとは違ったアプローチでアイテムを発表されていますが、今の作風に辿り着いたきっかけは?
きっかけは、大学でファッションの勉強をしようと決断した時でした。ファッションの生産背景を知れば知るほど、自分の考えとファッション業界との繋がりを感じられなかったんです。
ー「自分の考え」とは具体的に?
私は超持続可能で、ライフサイクルの中で循環できるような新しい素材を研究することが好きです。そして、自分の表現を通して多くのメッセージを伝えることができると信じています。であれば、デザイナーという枠に囚われすぎる事もなく、アーティスティックな視点から何かを訴えかけられるんじゃないか、と。
そんな風に考えているうちに、ファッション業界全体の意識も持続可能な成長に向けたニーズが高まりましたし、その機運は私が考える理想的な表現を試す後押しをされたようにも感じました。そんな業界の変革も相まって、今では業界の一員になれたように感じています。
ークリエイションの根幹は、ファッションにおける持続的可能な状態の探求?
そうですね。一方で、サステナブルなテキスタイル開発者としての側面もあります。実際に、いま自分のスタジオでは、布の上で植物を成長させる技術を開発し、改良するための試験を行っています
ー最後に、今後チャレンジしたいことを教えてください。
私の特徴は「アートとファブリック研究」という業界において必要とされている2つのツールの両立を考えていることで、現在も業界で応用できるように経験を積んでいる最中です。なので今後は、アートとファブリック研究をよりミックスさせていきたいと思っています。客観的に自分を見たときに、優しいワーカホリックだと思っていて、これからも仕事を楽しみつつ、いつも同時にすべてのことに真摯に取り組んでいければいいですね。
1991年生まれ。国内外のファッションデザイナー、フォトグラファー、アーティストなどを幅広い分野で特集・取材。これまでの寄稿媒体に、FASHIONSNAP.COM、GINZA、HOMMEgirls、i-D JAPAN、SPUR、STUDIO VOICE、SSENSE、TOKION、VOGUE JAPANなどがある。2019年3月にはアダチプレス出版による書籍『“複雑なタイトルをここに” 』の共同翻訳・編集を行う。2022年にはDISEL ART GALLERYの展示キュレーションを担当。同年「Gucci Bamboo 1947」にて日本人アーティストniko itoをコーディネーションする。
(企画・編集:古堅明日香)
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